3話:死闘の果てに俺は目覚める!

僕は只々足が縺れそうになるがただ走った。


走りながら僕が思っていたのは、ただ悔しくてしかたなかった。


何で僕には力がないんだ!と。


そう思うと全てが憎くて仕方ないとしか思えなくなる。


力ある者も、力無き者、そして無能たる自分自身も。




この時の僕の瞳は全てに拒絶された事で濁っていた。頬には怒りと悔しさよって眼から流れた血涙の跡が掠れて残っている。


全力でがむしゃらに走った為今まで掻いたことのない位の汗を僕は掻いており、その汗で、猫みたいと言われた僕のくせっ毛も垂れている。




「はぁ…はぁ、はぁ……ここは、洞窟か…一先ずここに暖を取るか…」




無我夢中で走った先に辿り着いたのは2、3メートルくらいの穴が開いた洞窟だった。


乱れた息を整えながら上を向く。空は暗くなってきていたからもうじき夜になる。


野外でなんの装備もなく野宿するのは流石に危険かなと考えた僕は此処に入る事にした。




「くっ…洞窟だし、やっぱり暗いな…何か灯りになるモノ……そうだ、スマホがあるじゃないか。スマホの光で進もう」




僕はポケットのスマホを取り出し電源を入れる。画面の光を電灯代わりにしながら進む。


どんな存在なのか判らないけど魔物がこの洞窟内にいない事を願いながら手探りにして進む。




手探りでスマホの光を頼りにしながら洞窟内を進む事20分。


それなりの大きさの空間に出た。探索してみて此処より奥がないようなのでどうやらこの空間が最深部のようだった。


最深部の壁や天井には薄らと淡い光がいくつかあった。


僕はそれを確認した。




「なんだろ…光る宝石みたい、だなこれ…取り敢えずこれがあれば、スマホはいいかな」




僕は光源があるなら必要はないかなとスマホの電源を切るとポケットに仕舞う。


魔物と呼ばれる類に存在はなく周囲が一先ず安全ぽいと安堵し入口の方を前に僕は壁に腰を下ろす。


体育座りの様に抱きしめ顔を隠す。




「……これからどうしよう…」




これから。


そう考えるだけで僕はどうやったって死ぬしかないと頭に浮かぶ。


街は僕をこんな世界に勝手に召喚しておきながら『無能』として追放したあの忌々しい王国の王が邪魔して入れない。


なら他の、少なくともこの国が干渉しない国まで逃げる?


直ぐに無理だろうと言う考えに至る。僕はこの未開の世界において他の国や街がどこに、どの方角にあるかも知らない。それに今の僕には力がない。戦う力がない今の僕ではそこに辿り着くまでに今だ見たこともない魔物と呼ばれる存在に襲われ僕は殺される。


……そう考えるたびに涙が溢れてくる。


情けない事だが仕方ない。


以前から自分の『ケモノ』と言う両親が付けた名前による不遇の境遇からずっと一人だった。


誰も僕に優しくしてくれなかった。


誰も僕を必要としていないと分かってから、僕は1人で生きれる様になった。


誰にも必要とされないなら僕も誰も必要としない。


そう思う事でこの寂しさから目を背けてきた。




そうだ……


僕だって寂しかった。


1人で生きていける人間なんていない。


だって人と言う字は支えるように出来ているからだ。




くぅ…




「ハハっ…こんな状態でもお腹は空くんだよね……でも……」




目を凝らしてもあるのは鉱物のみ。こんな洞窟ばかりの所に人の食せる食べ物があるとは思えない。そもそも人間の食せる物がどれかと言う事も今の僕には判らない。


下手なものに手を出せば毒とかで死ぬかもしれない。




困った。一度気付くと空腹感が半端なく襲い掛かる。喉も乾いて来るし、本当に困った。


取り敢えず水くらい何とかしないと、と思い体を起こして僕は初めて気づいた。


入り口の方から物凄く嫌な、体が震える様な恐怖を感じたのだ。




「……まさ、か」




僕の頭に浮かんだのは1つ。


それはこの世界にいる、まだ見た事もない生物。


魔物ではないかと。




顔を入口の方に向ける。


先程まで分からなかった音が聞こえる。


重い足音。


動物の様な喉を鳴らす音。


そして動物ひととしての本能が告げていた。


これはヤバい奴だと。今すぐ逃げろと警告を告げているようだった。


けど僕は恐怖から動く事が出来ない。そもそも逃げるにしても逃げ場となる場所から得体の知れない存在が来るのだ。どうしようもなかった。


がくがくと体が震える。


特に足の震えが止まらない。




そして暗闇からそいつは現れ僕のいる空間内に侵入して来た。




「マジ、かよ…」




思わず震える様に零れる声。


今、僕の眼に映っているのは全長2メートルくらいの黄色い体毛をした鋭い牙を生やした虎の様な魔物せいぶつだった。その姿からまるでサーベルタイガーが頭に思い浮かんだ。


これが魔物…。


相手も僕を認識したのか鼻をクンクンと鳴らしている。


そしてそいつは僕にその眼で射貫いて来る。その眼には『これからお前を食う』と言っていると感じた。


実際問題その通りだと思った。


虎の魔物はグルルと喉を鳴らしつつ姿勢を低くしつつ少しずつ僕との間合いを詰めてくる。




僕に迫る死に恐怖が走り身体が震える。心臓がバクバク煩くなる。




(い、嫌だ…)




僕の頭に浮かぶのは『死』への拒絶だった。呼吸が煩い。




(嫌だ…嫌だ、死にたくない!?)




浮かぶのは『死にたくない』と言う純粋な【生】への執着。




(嫌だ…死にたくない…!こんな、訳も分からないトコにきて…理不尽に、無残に食い殺される?…嫌だ、嫌だ、嫌だ!…僕は…僕はァ!…まだ…死にたくなんてないんだァ!)






頭の中がグチャグチャに掻きまわる感覚で渦巻く。


その感覚を大きく占めるのは『死』への拒絶と『生』への渇望だった。




(…このまま…このまま何もできずにただ死ぬのは嫌だァ!…死ぬのは駄目…死ぬのが駄目なら…どうする?……そんなの簡単だ。……僕を――俺・を脅かす全ての存在を殺せばいい!!)




俺の中でその瞬間『何か』がその時壊れたのだろうな。自分の心がパリンと弾けた様に感じた。今まで自分の中にあった価値観全てが反転したように感じた。


そしてその心の内が激しい殺意で溢れてくる。そして純粋なまでに満たされていく。


そして心の奥底から体の全てを覆う様に『何か』が満たされ循環していく。






(…そうだ!…殺す…俺を馬鹿にした奴を殺す…俺を無碍にした奴を殺す…俺を無能として追放した奴を殺す…俺を見捨てた連中を殺す…そうだ……殺せばいい…どんな方法でもいい…俺はここで死なねぇ…死ぬのは敵…殺すのは俺で…死ぬのは…殺されるのは俺以外の連中全て!…死ぬ…殺す…食われる…食う…殺される…殺して、食う…それだけだァ!)






今の俺に考えられるのはただ一つ。


それはただ生き残り己の邪魔をする敵は全て殺すことだけだった。殺してでも生き残る。


俺は面前の殺す対象である魔物に目を向けつつ、頭では今から相手を殺すとめぐらしているのだが、どうやら身体はいまだに震えている状態だった。


俺は舌打ちしつつ自分の震える身体を黙らせる為に口の端を強めに噛む。噛み口から赤い血が流れる。口の中にも血の鉄の匂いが流れてくる。


鈍い痛み。けどその痛みのお陰か何とか少々震えはあるが、体が動けるようになった。


それでも未だ震えの残る体を叱責する。俺は虎の魔物に睨み、見逃さないようにと意識を向けながら壁伝いにズルズルと動く。


とにかく何か武器になりそうなものが必要だ。素手では分が悪すぎる。


武器の無い今の状態ではこの相手と戦い殺すなんて絶対無理だろう。


ジリッと足を動かすと靴にカツンとした感触がした。




「…なんだ、尖った石か…まあ、無いよりいいか」


「グゥルルッ!」


「!?…来るっ…!!」




虎の魔物が俺目掛けて飛び掛かってきた。その鋭い爪で俺を切り裂くつもりかと考えるのと同時に、俺は自分の思考による想定の動き比べて重く感じる体をなんとか素早く動かししゃがみ込むと足元の尖った岩を手にすると慌てて横に飛び虎の魔物の爪による飛び込みを何とか躱す。


勢い良く飛び掛かった虎の魔物は壁にぶつかる。




「ギャフン…」


「(間抜けだな…まあいい今の内に距離を取ろう…)」




壁にぶつかった衝撃で何だか涙声に聞こえた虎の魔物。


俺は今隙にと距離を取る。


ぶつかった衝撃から虎の魔物は顔を何度か振ると怒り心頭と言った顔で俺を睨む。ぶつかったのは俺のせいと言わんばかりである。




「いや、俺を睨むのは筋違いだろ…」


「グラアァアアァ!!」




俺の思わずのツッコミの言葉を理解したとは思わないが、虎の魔物は怒りの咆哮を上げ先程よりも睨んでくる。


俺は洞窟内が響く程の咆哮に眉を顰める。耳がジンジンするが手を当てる訳にはいかない。


相手に隙を与える場合じゃない。


相手は現段階では自分より強い存在なのだからと。




虎の魔物が俺に向かって飛び掛かる。ワンパターンな動作。まるでゲームの魔物が同じ行動をするかのようにだった。


同じ動作ならと、俺はまた横に不恰好だが跳び躱し、跳んだ勢いのまま距離を開ける。


また躱され苛立った様子の虎の魔物。




こう見えて俺の洞察眼は確かであると思っている。


家でも両親が動物好きという事で、家でも色んな動物を飼っていた。


犬、猫、ウサギ、インコ、etc


正直俺の家は小さい動物園だと思える状態なのだ。


そして、これらの動物の世話は何故か俺がしていた。


まあ理由は俺の方が両親より飼っていた動物達に慕われていたからだった。


動物の世話が俺のお小遣い稼ぎだったりした。




俺は目を凝らして相手を観察する。


何処の部分が動けば次にどう行動するのか。


ただそれを読むのに集中する。




「(…ワンパターンな動きしかしないから何とかなってるが、どうする…せめてこの重い体がもうちょっと動いてくれたいいのに)」




内心舌打ちしつつどうにか優れた観察眼によって相手の先を読み行動を回避する事は出来ている。


だが手詰まりと言った状態だった。


躱せても反撃できない。


それに……




「はぁ、はぁ…」




体力に限界が近付いていた。


集中力も徐々に落ちてきていた。




「(まずい、な……このままじゃ、体力が尽きちまう。動けなくなったら一貫の終わりだ。なら…次に勝負を決めるか)」




俺は覚悟を決める。


その手にある鋭い岩を右手で強く握る。


俺の狙いは一つ。相手の攻撃の際に、相手の攻撃を紙一重で躱すと同時に俺の手にあるこの岩で相手の首の急所に向けて放ち穿つことだ。


今の残り体力では満足に動けるのは次が最後だと理解している。


ならチャンスも次が最後だ。


失敗すれば俺は食い殺されるだろう。


だが、上手くいけば俺は生き敵を殺すことが出来る。


無能と言われた俺が他者を倒すことが出来ると証明することが出来る。


俺は無能ではない。


そう実感する事が出来る。




俺は今在る全ての集中力を目に集める。


敵の一瞬の動作の兆候。それを見逃さない。


敵も此方を警戒しつつ、今度こそ俺を仕留める為にと掛けて飛び掛る準備をしている。


勝負は一瞬。


そしてその一瞬が訪れた。




虎の魔物は咆哮と共に俺目掛けて飛び掛って来た。


狙いはその鋭い牙で噛み付くつもりなのだと予測した。


その俺の予想した通りに噛み付こうとする虎の魔物。


俺は躱し切ることは不可と瞬時に判断。




判断した俺は迷いなく左腕を犠牲にすることにした。


虎の魔物の鋭い牙を左の上腕で防ぐ。




「(グゥうゥ!!)」




左腕を敵の牙に貫かれる激痛に意識を持っていかれそうになるも、




「ぐっ、いいぜこの虎やろうっ、俺の左腕をくれてやる。そのっ、変わり、手前ぇの命を、貰うぜぇ!!」




俺は激痛を遮断する様に叫ぶと右手に握っていた鋭い先の岩を、今まさに噛み抜いた俺の左腕を噛み切ろうとする首目掛けて突き出す。


狙いは頚動脈。


本当なら両手で重みを加えればよかったが今回は仕方がない。


俺は全力で突き刺す。


皮膚の中で最も弱いであろう部分。1ミリの誤差もなく正確にその急所に突き込む。


そして……俺の突き出した岩は目の前の虎の魔物の頚動脈を貫いた。


貫かれた部分から多量の血が流れる。流れる血で俺も真っ赤になる。




「(魔物も血は赤いんだな…逃がすかよ!)」




貫かれ悶える虎の魔物。俺の反撃の一撃に敵の噛みつきが弱まった。


俺は顔にも飛んできた血を舐めながら、逃がさないとばかりに残りの力を右手に篭め両足で踏ん張る。




次第に虎の魔物は身体を硬直させビクンビクンと痙攣した。


そして虎の魔物は噛んでいた俺の左腕を離すとそのままドシンと倒れた。




俺は息を付くとその場に座り込む。そして貫かれた左腕の激痛を意図的に忘れさせながら右手で牙で貫かれた穴の開いた部分を押さえる。


押さえて血の流れを遅らせる為だ。


抑えていると若干傷が狭くなっている気がした。


出血も治まってきた。


不可思議な現象だが、今は分からないんだから後にする。


俺は膝を付きながら倒れている魔物に近づくと耳を傾ける。


生命動作があるか確認する為だ。


……


どうやら生き絶えたようだ。


俺はその事実に歓喜した。


だって生き残ったのだ。


散々無能と馬鹿にされた俺が少なくとも俺より強いはずの魔物を殺し仕留めたのだ。


自分で自分を褒めてやりたい、そんな気分だった。


まあ、だから浮れていたんだと思う。


それはしょうがないと言えたと思う。


だから、俺は気付けなかった。


気力も体力も消耗しほとんど動けないようなボロボロの状態だった。


だから……もう一体の同種の虎の魔物が近付いていたのに気付けなかった。




俺は重たい衝撃と共に仰向けに倒れる。


俺の目の前には先ほど俺が倒したばかりの虎モドキより一回り小さい虎モドキに抑えられていた。


前足で俺の肩を重く踏みしめられ体重を掛けられている故に動くことも出来ない。


元より疲労困憊の状態だったのだ。


もうどうすることも出来ない。そんな状態だった。




「(はぁ……こんな終わり、とはね……まあ、やれたんだし…悔いは、ない…)」




俺はやるならやれよ、と身体の力を抜き目を閉じる。


自分よりも強い相手を倒したことで意外にもこの瞬間的に満足してしまったのだ。


潔い最期を。


そんな風に(情けないな)と思いながらも自分の死を待つ。


爪で貫かれてか。噛み殺されるのか。


そんな己の死を、どの様に殺されるのか思い浮かべながら待っていた。


しかし……


いつまで経っても自分の死が来ない。どうした?と不思議に思いゆっくりと目を開ける。


開けたのだが……


どうしてだろう。


俺の目に映る目の前の虎の魔物は戦意や敵意なんてものが全く感じなかった。


むしろ何故だろうか。俺をまるで心配しているそんな風の表情を浮かべていたのだ。


一体どうしたのか分からない。


俺は目の前の虎の魔物に声をかける。魔物に人間の言葉が通じるのか分からないが、なんとなく俺の直感が告げていたのだ。


この子は理解してくれる気がすると。




「おい、お前は、俺を襲わないのか?俺は今全く動けない状態だ。殺るなら今だぞ?」


「ぐるる?…ぐるるゥ」


「あ?襲う気はないのか?…いまいち良く分からんが、取り合えず俺を殺す気がないなら重いから退いてくれ」




俺がそう言うと虎の魔物は俺の上から退くと俺の右には死に絶えた同胞が居るので、左に移るとちょこんと俺の傍に座る。


その姿がなんだか可愛いと思い、(何考えてるんだ俺)と苦笑しつつ上半身を起こす。そして立ち上がろうとするも流石に疲労が限界を超えていることもあり無理だった。


俺は現状の確認とちょこんと座る何故か敵意のない虎の魔物に視線を向ける。


これは一体どうしたんだろうか……


俺を先ほど襲ってきた奴は、完全に敵意丸出しだった。俺を殺す気満々だったはずだ。


だが目の前の同種の魔物にはまるでない。


最初の奴を殺して直ぐに現れた所を見ると仲間ではないのか?と思うのだが、仲間なら当然と仇を討ちに来ると思う。


俺はこいつに声をかける。




「なぁ、お前は俺が憎くないのか?こいつは仲間かなんかじゃないのか?」


「ぐるる」




首を振って違うと教えてくる。




「じゃあ、お前は何でこいつと一緒だったんだ?」


「ぐるっ」




前足でジェスチャーしながら俺に教えようとする。その姿にホッコリと笑みが浮かぶ。


なんだか人間味のある奴だと思った。




「……こう言う事でいいのか?…この洞窟の前で鉢合わせて偶然一緒に居ただけ。血の匂いに釣られて此処にやってきたという事でいいのか?」


「ぐるる」




顔を何度も縦に振る。どうやらそうらしい。


どうやらこの二匹は俺の流していた血の涙。その血の香りに引き寄せられたという事らしい。


貴重な情報だな。


魔物は人の血に引き寄せられる可能性が分かった。


同時にちょっと不味いと思う。ほかにも俺の血を嗅ぎ付けて此処に来る魔物が居る可能性が出来たからだ。


あと気になる事を聞く。




「……魔物って、人を見たら襲うものだと思っていたんだが、お前は違うのか?」


「ぐうるるがぉ」


「始めは襲うつもりだったのか?でも、俺に触れた途端襲う気がなくなったのか…」


「ぐる」




なるほど、最初はコイツも襲う気はあったようだ。


だけど俺に触れた瞬間。つまり俺の身体に接触した時にコイツに『何か』が起き襲う気が失せてしまったという事らしい。


うん。段々こいつの言っていることが分かるようになってきた。


俺はなんとなく右手でこの子を撫でようと思い手を伸ばそうとすると気付いた。


俺の右手の甲に妙な文様が浮かんでいるのに気付いたのだ。




「な、なんだ、これ?…確かこんなの最初の奴を倒した時にもなかったはずだけど…」




俺はもしかしてと思いスマホを取り出す。


とにかくとステータスを起動させる。どうやら壊れなかったようで一安心する。


そこにあった情報に呆気にとられる。




=====


Name:超陀こえたケモノ


Atk:60


Dfs:50


Spd:80


Mp:70


【Ability】


♢魔獣の王ビーストマスター・Level:EX


【Skill】


♢魔獣契約・Level:Ⅰ(自身に触れた【魔獣】に該当する魔物を3体まで自分の眷属化させることが出来る。…現在1体と契約中。)


♢魔獣調教・Level:Ⅰ(契約した眷属の魔獣の能力を一時的に上昇させることが出来る。Levelが上昇するほど効果が上がる。)


♢魔獣の血・Level:EX(魔獣限定で、魔獣の血肉を食らう事で体力回復、傷の治癒、身体機能向上を得ることが出来る。)


=====




なんか増えてる。


ステータスも最底辺らしかった10から上昇しているし、AbilityやSkillも増えていた。


魔獣の王ビーストマスター。俺の得たAbilityの名称らしい。能力自体は明記されていないのでどういうものかは分からない。まあ、王なんて付いている事から俺はある意味【魔獣】達の上位存在にでもなったって所だろうか。Levelが明記されているけどEXとなっている。たぶんこれ以上は上がらないという事だと思う。


次にSkillだな。これも3つ表記されていた。


一つ目。“魔獣契約”。


俺に、もしくは俺が触れた魔獣を自分の支配下に置くことが出来る技能のようだ。現在1体と契約中となっている。おそらくはこの子の事だと思う。


この子の頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らす。なんだかもっとしてと言っている気がする。


今のLevelはⅠで、合計3体まで眷属に出来るようだ。Levelが上がればもっと眷属化できる数が増える気がする。


なんとなく俺のAbilityである”魔獣の王ビーストマスター”はこのSkillによる眷属化を必ず成功させるものではないかと推察した。


二つ目。“魔獣調教”


こいつは俺の契約した魔獣の能力値を底上げできる物のようだ。これを合わせると強力な力を有する魔獣の軍団が作れたり出来そうな技能だな。どこまでと言うかどんな感じに上がるかは試してみないと分からないか。


三つ目。“魔獣の血”


これを見て俺は「なるほどそういう事か」と自分の左腕に目を向けつつ理解した。


このSkillは魔獣に該当するものの血肉を取り込むことで身体機能の向上と回復を行うことが出来るようになるみたいだ。


俺の負った左腕の傷が少し塞がり出血が止まったのは、俺がアイツの血を舐めて口にしたからだろう。


しかし魔獣の血肉を食らわないといけないのは難点だな。眷属を増やすか自身の強化を優先するか考えさせられるものだ。


けど、この力は俺が手傷を負っても眷属の血肉を食らうだけで強化と回復が出来るのだ。


便利とも言えるな。




(取り敢えず戦力増強用と、食用兼能力向上用に狩るかな……ククッ、獣だし美味いといいなあ、フフフッ♪)


「ぐるっ!?」




思わず悪い笑みを浮かべていたようで、頭を撫でていたこの子はビクッと振るえた。


大丈夫。お前は初めての眷属だしな。


手を付ける気は今のところはない。




なんだかうずうずしてくる。


試しみたいと言う欲求が沸いてくる。


そんな俺の欲求に答えるかのように突如洞窟内の地面が揺れる。


この子はそれに察知したのか威嚇の体勢に移る。




「ふふっ、どうやら早速得た力を試す相手が着てくれたようだ。さて、俺は動けないから…えっと名前がないのは呼ぶのに不憫だしな。これからはお前の事はファングと呼ぶぜ」


「ぐるるる!」




ファングは『任せろ』と名づけられた事も含めて喜びの篭った声で鳴く。




そして揺れていた地面からまるで巨大な蟻のような魔物が現れた。






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