第58話 ふたりのお祝い。



 今日は9月10日で俺の誕生日。


 この歳になってするのも恥ずかしいが俺と8月31日に誕生日を迎えていたコウさんに対して誕生日会を開くことになっていた。


 まあ、そういうこともありコウさんの誕生日当日はふたりで過ごせたわけで。


 一応平日ということもあり、俺は学校から家族とコウさんは仕事から帰宅後準備をして始める形になっている。場所はコウさんのお宅で。なぜかと言うと如月さんと菊池さんも招待させてもらったからだ。まあ誕生日会という形であるがいつもお世話になっているおふたりには参加してもらいたい、そして今日という日を見てもらっておきたいという思いもあって。




 俺が自宅に帰宅すると俺の母さんが先に帰ってきて準備をしていた。コウさん宅へ持っていく料理をいくらか作ってくれていたようだ。


「ただいま、母さん」


「ああ、おかえり。それとまだ始まってないけど……創、誕生日おめでとう。もう18歳。ちょっとだけ大人の仲間入りね。20歳まではお酒やタバコは先だけど」


 と料理をタッパに詰めて笑いながら俺にそう言ってくれた。


「ああ、ありがとう。というか普段うちの家ってイベント事は適当だよな。ケーキがあるくらい? だからちょっと違和感があるんだよなあ」


 と俺が照れながら言うと


「そうねぇ。うちってクリスマスやら誕生日やらとりあえずケーキ買っとけばいいみたいなところあったわね。それって私のせいかしらね? 」


 と大雑把な性格と自覚はしているんだろう母さんはそう言った。


「今回はお客様も来るし、幸さんも居るし……だからね。それに……創、頑張りなさいよ? まあ幸さんだから大丈夫とは思うけど……」


 とちょっと不安そうにそう告げる母さん。


「まあ頑張るよ。ちゃんと見てて」


 と俺は母さんに胸を張ってお願いするのだった。




 通常だとコウさんは俺の帰宅に合わせるように帰ってくるのだけれど今日は如月さんと菊池さんを連れてくる役目があるのでまだ返ってきていない。「先に帰っちゃ駄目なの? 」と駄々をこねていたコウさんだけど「今日招待させてもらったのはこっちなんだからちゃんと連れてきて」と俺が言い聞かせると諦めてなんとか一緒に来ることを了承してくれた。




 さて、コウさん宅の鍵は俺ももらっていたので俺が鍵を開け母さんも用意のため一緒についてきた。なお、ケーキや宅配を頼んだ料理は全部母さん任せ。お客様も呼んだわけだし俺達で用意しようとしたのだが「主賓が用意しなくていいのよ、ほんと馬鹿ね」と母さんに窘められすべてを任せることにしていたのだった。


 母さんはちょっと席を外しどこかに連絡を入れていた。もしかすると注文しているものの宅配を頼んでいるのかもなんて思いながら俺はソファに座っていた。


 普通なら誕生日の祝いの行事というだけなはず。けれど俺はとても緊張していた。大事なことがあるからと。


 そんな緊張が抜けないまま俺はみんなが揃うのを今か今かと待っていた。

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