お嬢様春ですよ!ーもうすぐ二年生ですよお嬢様ー

 三学期が始まる、相馬と摩耶はいつも通りに登校する。

「本当に年末はすみませんでした」

「別にいいよ、あと二年後の話だから別に今から深く考える必要はないだろ」

「ですが…」

 相馬は気持ちを切り替え今は考えることにしてなかったが摩耶は気にしていた、そんな摩耶を見兼ね話題を変える。

「それより奈々を知らないか?」

 三学期が始まり奈々はまだ帰ってきてないことを伝える。

「あっ、奈々ちゃんからメールがありました」

 摩耶がスマフォを取り出して奈々から送られたメールを見せる。

「一度帰る、アメリカに?」

 頷く摩耶。メールの文面には一度帰るの一言だけだった。

「アイツ、急にどうしたんだ?」

「実は前に奈々ちゃんお嬢様を辞めたと言っていました」

「辞めた?それって家出したとか?」

「いえそれだけでは辞めるとは言いません、辞めるということは家族との縁を切るということです」

「大丈夫じゃないだろそれ、戻ると言ってもどうすんだ?縁を戻すのか?」

 首を横に振る摩耶。

「縁を戻すことはほぼ不可能です。見限られそしてそのまま戻ると言うのは私達では恥となるのでその恥は名を汚すので戻る事は不可能です」

 摩耶の父親がどれほど摩耶を大切にしてる理由が分かった。

「なんで縁を切ったんだアイツは…」

「奈々ちゃんには二つ上のお兄様がいます、現在は跡継ぎのお仕事などに徹しています、奈々ちゃんはお兄様のお手伝いが主な仕事になるのですが悲しい事に結婚、お付き合いは許されないのです」

「はぁ?なにそれ、じゃあ兄貴の方は?」

「すでに婚約者、お付き合いしてる方はいます」

「めちゃくちゃ過ぎないか?摩耶達の界隈」

「決まり事なので致し方ないです。それが私達の運命なので」

「じゃあ奈々はなぜ戻ったんだ?俺達にあんな言い方してもどうせ態度デカく居座ると思っていたのに」

「分かりません、本当に奈々ちゃんが心配です」

 心配そうな摩耶、相馬は奈々が心配な一方で摩耶がいつまでも暗い顔するのが嫌だった。

「とりあえず奈々にメールを送って帰ってきたら理由を聞こう、確かに今は心配だけど俺達が今すぐにアメリカに行くことは出来ないだろ」

「そうですけど…」

「今摩耶が暗い顔したらクラスまで暗くなる、奈々が居ない今摩耶が暗い状態でクラス行ったら大変だぞ、暗いクラスは嫌だろ」

「はい、嫌です…」

 嫌という摩耶だがそれでも暗いままだった。

「あー全く本当に摩耶は世話が大変だな、ほら笑顔作れ」

 相馬は摩耶の頬をつまんで上に無理やりあげる。

「痛いです!」

「笑顔作るまでずっとやる」

「わ、分かりました。つくります」

 手を離す相馬、摩耶は渋々言いつつも笑顔を作る。

「これでいいですか?」

「作り笑顔だけどまぁいい、悩む時は俺がいるから一緒に悩めばいい、今は笑顔だ。まずは奈々が帰ってこないことに話が進まない」

「帰ってこなかったら?」

「帰ってくる、アイツは絶対に」

「相馬さんがそう言うなら信じます、奈々ちゃんは必ず帰ってくるって」

 先程まで暗い雰囲気だった二人は気持ちを切り替え奈々を待つことにした。摩耶にとって奈々は大切な友達、それは当然相馬も知っているが相馬自身も奈々には助けられたことがあり今では友達と思っていた。奈々は二人にとって必要不可欠な存在となっていた。

「ま、帰ってこなかったら迎えに行くか」

「家はアメリカですけどね」

「細かいことはいいんだよ、縁を切ったのなら家に来りゃいい。もしくは摩耶の家に入ればいい話だ」

「凄い事言いますね」

「どうせ摩耶はそうしないと泣くだろ」

「泣きません」

 頬を膨らませ怒る摩耶だが不思議に笑い出す。

「どうした?」

「やっぱり相馬さんは凄いなって思っただけです」

「凄くねぇよ、誰だって普通にこれくらいは言うよ摩耶が知らないだけだ」

 友達なら当然の事を言っただけの相馬。

「でもやっぱり凄いです」

「はぁ、普通…と摩耶に何度言っても無駄か。まぁでも笑ってくれたからいいか」

 今はそれだけで十分と思った相馬は一安心した。

 そのあと相馬と摩耶は環に奈々の事を話して奈々は風邪で休みとされた。

 摩耶はクラスメイト達にお嬢様とバレてもいつもと変わらず接して、相馬は男子達から恨まれ羨ましがられと様々だったがクラスはたった一年で仲が深まり三学期が始まる事となった。

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