お嬢様メリークリスマスです!ー雪が降るといいですねお嬢様ー
冬休みに入ると相馬は一人で大都市にある近づくクリスマスに飾られた雑貨店に来ていた。
「う〜ん…」
悩む相馬、摩耶にあげるプレゼントを選んでいた。
「奈々と一緒に来ればよかったか?」
相馬が雑貨店に来た理由、それはクリスマスプレゼントととして何かあげるといい。と奈々から説教混じりに言われて来ていた。
「確かにプレゼントはいいかもしれないけど摩耶はお嬢様だから何をプレゼントしたら喜ぶんだ?」
雑貨店にはインテリアグッズから小物、ファッション、生活用品に至るまで様々な物があり一人店内をぐるぐる回りながら考えていた。
お嬢様である摩耶に対して一体何をプレゼントしたらいいのか全く検討もつかない相馬。
悩んだ末、スマフォを取り奈々に電話をした。
「もしもし、奈々。悪いんだがプレゼントは何を選べばいい?」
「…………………」
しばしの無言。
「おーい、奈々聞こえてる?」
「……………自分で考えろこのヴォケ。ブツッ」
呆れたような声で一方的切られる。
「何か悪いこと言ったかな?」
不思議に思う相馬、一切異性との交際がなかった相馬、当然女心というものを露知らずことある事に奈々からアドバイスをもらっていた。
そんな所にずっと店内を回っていたのを見兼ねた女性店員が相馬に声をかける。
「何かお探しですか?お客様」
「あっ、いやちょっとプレゼントを選んでいまして…」
女性店員が来たことにビックリする相馬だがあまり女嫌いを表に出さないように平常心を装う。
「プレゼントはご両親ですか?それとも彼女さんですか?」
「え〜と、彼女さん…ですね」
恥ずかしそうに答える相馬だが女性店員は慣れたように笑顔で返事をしたあと小物の方へと案内する。
「彼女さんにプレゼントするならこちらの小物がいいと思いますよ」
「小物…う〜ん」
目の前に置かれている小物は沢山ありすぎて更に悩み唸る。
「彼女さんに限らず、女性には実用的かつオシャレと可愛さがあるといいですよ」
女性店員は親切にアドバイスをする。
「実用的…オシャレに可愛さ……」
アドバイス通りに小物に目を配るがなかなかピンと来るものはない。
「ちなみに差し支えなければ彼女さんの特徴はありますか?」
「特徴?そうだな、可愛いに綺麗それと頭がいい。あとは世間知らず?」
相馬は天井を見て摩耶の特徴を思い出して指折り確認して最初の可愛いと綺麗までは笑顔で聞いて相槌をしていた女性店員、しかし最後の特徴で少し疑問符が浮かび苦笑いする。
「あの…すみません、世間知らずとは?」
「ん?ああ、なんか最初の頃普通に見たら分かる危ない車に簡単に乗ったりと本当に外の世界を知らないというかよく分からない奴です」
「はぁ……」
よく分からない奴と聞いて本当にそれは彼女なのかと疑問になり始める女性店員。
「まあそれでも俺は守りたいと決めて傍にいたら付き合ったという感じですかね?」
「そ、そうなんですね」
反応しずらい女性店員、それでもなんとか一通り小物を端から説明してそそくさと相馬から離れていった。
「せっかく説明してもらったのに分からねぇ」
説明してもらったが更に何を選べばいいか分からなくなる。
「お嬢様に合いそうな物は〜…、ポーチ?使うかな?ハンカチ?う〜ん微妙!ペンケース?いる?メモ帳?お嬢様とは?……」
一人で考えて一人で突っ込むという謎の行動に相馬にアドバイスをした女性店員はレジから見ていて奇妙に見えた。
「アクセサリー系統がいいと言っていたな、けど高いと思ったけどお嬢様だとアクセサリーとなると品質的な問題も出そうだな」
お嬢様である摩耶ならアクセサリーなら沢山持っていると予想してさらにはその価値を比べられそうと思い止めた。
「ん?これは…」
目が止まったのは猫柄の可愛い財布だった。
「確か…摩耶持っていたよな」
初めて会った時にバスのお金を払う際に摩耶が出そうとした猫柄の可愛い財布とは裏腹に万札の束を出したのを思い出した。
「あの〜、すみません」
「はい!」
女性店員を呼び猫柄の財布を聞いた。
「ああこれですね、これは矢上お嬢様がご両親とご来店なさった時に購入されたものです。確か摩耶お嬢様が中学卒業の時でしたかね、お嬢様は可愛いと絶賛されていました」
ほとんど館に過ごしていたと思われていた摩耶だがここに来て初めて摩耶が顔を出したことを知る。それを楽しそうに話す女性店員に相馬は聞いた。
「その猫柄と似た小物ってありますか?」
「ありますよ!このハンカチです!」
ハンカチを持ってきて広げると端に財布と同じ猫柄のプリントがされているのを見つける。
「これ買います」
「ありがとうございます!」
先程までハンカチは微妙と思っていた相馬だが不思議とこの猫柄のハンカチを見た時に何かを感じすぐに買う。
「こちら綺麗に包装しときますね。彼女さん喜ぶと思いますよ」
「どうしてですか?」
「お客様が最初に悩んでいた表情からこのハンカチを見た時に表情が劇的に変わったので何かしらの縁があると思い購入したと思うので彼女さんは喜ぶことは間違いないと思います」
包装しながら相馬に話す女性店員、相馬は根拠はあるんですか?と不意に聞いてしまう。
「ありますよ、伊達にお客様を見ていませんから。終わりました」
しっかりと包装されてプレゼント用にリボンも丁寧に付けてもらい紙袋に入れて渡される。
「リボンは特別製にしました。私からのプレゼントです。彼女さん大切にしてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
笑顔で渡された紙袋をしっかりと受け取る相馬はバスに乗り無事に家に帰った。
「ただいま」
リビングに入る相馬、いつも通り雑誌を読みながらお菓子を食べている環。
「おかえり、外寒かった?」
「大分寒くなった」
「うわ〜、嫌だ嫌だ。それよりその紙袋は?」
相馬が持っていた紙袋を指さす。
「ああ、摩耶へのプレゼント」
環は相馬と摩耶が付き合ったことを知っている、環はニヤける。
「へぇ〜、摩耶ちゃんにねぇ…」
「その顔なんだよ」
「いや何でもないよ〜」
「なんだよ…」
雑誌に視線を戻す環、するとソファーに横になってテレビを見ている奈々がいた。
「あ、お前なんで電話切った?」
怒って奈々に近づく相馬だが無視する奈々。
「え?相馬、奈々ちゃんにプレゼントの相談したの?」
急に環が驚いたように聞いた。
「あ、うんそうだけど…」
「はぁ…バカだね…」
「え?なんで?」
環の方を振り返ると次は奈々が口を開く。
「バーーーカ!死ねアホ!ボケカス!」
ボロくそ言いソファーに置いてあるクッションで何度も叩いたあとにリビングから出ていき相馬の部屋に行ってしまった。
「……え?」
「相馬、あんたあとで絶対に必ず奈々ちゃんに何か買ってあげなさいよ」
ため息混じりに怒った様子の環。
「まあ環が言うなら分かった」
一体自分が何をしたのか分からない相馬だが後日買うことにした。
そしてクリスマス当日、学校前に集合したクラスメイト達。
「よし、それじゃあ行きますか」
環が号令してバスに乗るクラスメイト達。
「じゃあ、あとは指定したバス停で降りて真っ直ぐ歩くと私と相馬と奈々ちゃんが立ってるからよろしくっ!」
誠人に任せて先に環の車で摩耶の家に向かう相馬と奈々。
「なんとか摩耶から電話もらって親の許可は得たらしい。これも奈々が思い切って体育祭でお嬢様であると公言したからこそだな」
相馬は助手席から振り返って奈々を褒めるが奈々はまだ怒っていた様子だった。
「あ〜、なんかごめん」
「死ねアホ、このクズ」
謝る相馬だが火に油を注いでしまったのか更に怒る奈々。環に理由を聞いても首を横に振るだけだった。
数分後、摩耶の家の前にある門に着くとすでに摩耶が外で待っていた。
「こんにちは環先生、相馬さん、奈々ちゃん」
丁寧にお辞儀する摩耶。
「こんにちは摩耶ちゃん、本当に大丈夫?」
「はい、説得するまで二日かかってしまいましたがなんとか承諾もらいました」
「摩耶は大丈夫なのか?」
「大丈夫です、ただまだ相馬さんの事はあまり…」
「だよね…」
苦笑いする摩耶に納得する相馬、ふと摩耶は奈々が不機嫌なことに気づく。
「ところで奈々ちゃん機嫌が悪いのですか?」
「大丈夫よ、私はこのクズ男にイライラしてるだけだから」
「痛い痛い…」
うしろから相馬の背中を蹴りまくる奈々。
「そうですか…相馬さんもし嫌でしたらちゃんと言ってくださいね」
「いやなんか俺が悪いらしいから大丈夫」
「そうなんですね…」
心配そうな摩耶をよそに奈々はずっと蹴り続ける。そして道路の向こう側からクラスメイト達が見え手を振る環と摩耶。
「ああ、良かった合ってた」
誠人がホッとしてクラスメイトの人数を数え全員居ることを確認する。
「んで、摩耶ちゃんの家は?」
「ここです」
摩耶は門の奥にある館を指し示す。しかしクラスメイト達は首を傾げる。
「ん?いやここはあの矢上の家だろ」
「いえ、ここが私の家です」
混乱し始めるクラスメイト達。目の前にあるのはあの有名な矢上家であることは知っているがそれを突然我が家と言われて納得するのには時間がかかるため摩耶は門を開け中に招いた。
「え?本当に」
「ガチなの?」
「いやいやなわけあるかよ」
半信半疑のクラスメイト達、そして館の中に招き入れたあと大広間に移動するとそこにはすでに料理が並んでいた。
「環先生のクラスメイト達かな」
「あらみんな可愛い子達ね」
摩耶の両親が快く歓迎する。
「私の両親です」
「……………」
空いた口が塞がらないクラスメイト達、そしてやっと理解した。
「摩耶ちゃんはお嬢様なの?」
「恥ずかしいですがそうです」
「奈々ちゃんと同じで?」
「はい」
黙り込み数秒立つ。
「すげぇ!マジ?」
「やば、奈々ちゃんと同じ?」
驚きの声が上がる。
「この部屋の中でしたら自由にしてください」
摩耶がそう言うとクラスメイト達はそれぞれ自由な時間を過ごし始めた。
当然、クラスメイト達に囲まれる摩耶、それを見ていた相馬と環は摩耶の両親に呼ばれ大広間から出る。
「摩耶から聞きました。奈々ちゃんがお嬢様と公言したらしいですな」
「そ、そうなんですよ〜」
威圧するように父親が環に聞くと環は他人事のように答える。
「まあ摩耶のお願いなら聞くしかなかったですけど問題は起きませんのよね?」
「ええ、はいまあ…。大丈夫です相馬がお守りするようなので、あはは…」
たとえ姉だとしても教師とは思えない生徒に責任を擦り付けられた相馬。
「環、お前っ!」
「そういえば一緒にいるという条件があったな、本当に守れているのか?この男は?」
「一応機嫌は治ったけどまだ心配だわ」
「お父様!お母様!」
詰め寄ってくる摩耶の両親を止めたのは摩耶だった。
「摩耶、どうした?」
「あらクラスメイト達とお話しなくてもいいの?」
「お父様、お母様聞いてください」
「なんだ?」
「何かしら?」
「私と相馬はお付き合いすることになりました」
「ん?えっ!?」
「んまぁ!?」
突然の告白に驚く摩耶の両親、当然相馬も急な切り出しに驚くさすがにこれは怒られると思い覚悟した。
「……摩耶、いいのか?」
「本当にいいのかい?」
しかし、意外な事に落ち着いた雰囲気で摩耶と話し始める。
「はい、私が決めたことです!たとえお父様とお母様に反対されようとも相馬さんと付き合います」
「……分かった。相馬と言ったかな?」
「はい」
「君はそれでいいのか?」
先程までの威圧感はなく諭すように聞く摩耶の父親に少し戸惑いながらも答える。
「…はい、付き合います」
それを聞いた摩耶の両親は二人で頷き大広間に戻って行った。
「摩耶…、あれはどういう意味だ?」
摩耶に両親が激変した理由を聞こうとした。
「環先生、相馬さんと二人で話してもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
環は間髪入れずに了承して大広間に戻っていく。
「相馬さんちょっといいですか?」
「ああ…」
摩耶に連れられて二階の摩耶の部屋に招かれた。
「広いな、さすがはお嬢様というところだな」
部屋は広く可愛く装飾されて端にはクレーンゲームで取った猫のぬいぐるみが椅子に座らせてあった。
「おお、飾ってるんだなこの猫」
猫のぬいぐるみを触る相馬。
「はい、初めて取ってもらった物ですから」
「まだ一年経ってないけど懐かしいな、しかし二人で話したいってなんだ?」
相馬は聞くと摩耶は申し訳なさそうな表情をして話し始める。
「はい、実はもっと早く言うべきだったのですが私自身恥ずかしい話、興奮といいますか嬉しという感情に流されてお話するのを忘れていました」
「忘れていた?」
「私がこの学校生活が終わると同時に跡継ぎをしなくてはなりません」
「そうかそれは大変だな……ん?」
段々と気づき始める相馬。
「跡継ぎとなりますとほとんどが外部との接触を断ち切りほとんどが仕事のみとなります」
「外部?それってクラスメイトや俺か?」
頷く摩耶に相馬は悪い予感がする。
「はい、ですので今お付き合いしてるのは三年生までしか出来ないのです」
「それ本当なのか?」
「事実です」
「マジか、じゃあ結婚とかは?」
「それはお父様とお母様が決めた相手となります」
頭を悩ませる相馬はふと疑問が浮かんだ。
「そこまで決まってるのか…いや待てじゃあさっきの父と母が改まった理由は?」
それを聞かれたことに困ったのか口を噤む。
「それは……その人と結婚する道だからです」
「じゃあなんで摩耶は悲しそうなんだ?」
「私は相馬さんと別れなければならないからです」
「なんで?」
「相馬さんの人生を奪ってしまうからです」
「………」
苦しそうな声で話す摩耶に何も言えない相馬。
「私は前に奈々ちゃんから付き合うとは何かを聞きました。そしてあの時に告白された事を思い出してとても嬉しかったです。けど相馬さんの人生を奪う訳にはいきません」
「摩耶…」
「相馬さん、三年生になったら別れましょう」
それを聞いた相馬は大きくため息を吐く。
「はぁ……なんだよそれ、摩耶も奈々に聞いていたのかよ」
「え?」
「実は俺も聞いたら怒られちゃった。そのあとは自分で調べたんだがやっと分かった。俺は摩耶が好きだから守りたいと思ってずっと傍にいたんだ。それは摩耶の両親が出した条件と一致してるかもしれないが守りたいから付き合ってほしい。だから告白したのかもしれないな」
笑って相馬は優しく言うと摩耶は突然泣き始める。
「ダメですよ…相馬さん、もしかしたら環先生と離れてしまうかもしれませんよ…」
「アイツと離れるのはいいかもな、けど俺は摩耶とは離れたくない。摩耶といた方が面白い」
「そんなこと……」
「ああもう、ほらプレゼントをあげるから泣き止め」
ずっと手に持っていた紙袋を摩耶に渡す、摩耶は中に入っていたリボンが付いた小さな箱を取り出す。
「これなんですか?」
「開けてみれば分かる」
そう言われ包装を取り中を見ると猫柄のプリントされたハンカチだった。
「これ……」
「たまたまなのか縁なのか分からないけど摩耶が中学卒業した時に寄った雑貨店で買ってきた」
「うぅ……なんでそこまでするんですか…、私好きになっちゃいます」
「構わない、俺は好きだから今度はずっと摩耶にくっついて歩くかもよ」
相馬には今の気持ちがはっきりと分かり、好きという感情が出る。摩耶はさらに泣き相馬に抱きつく。
「うおっ!びっくり…」
女嫌いは消えたのかもう震えることのない手足、女嫌いは単なる気持ちの問題だったのか相馬は考えるが今はそんなことはどうでもいいと思った。
「私は相馬さんとずっと一緒がいいです」
「俺もだ」
優しく頭を撫でる相馬は泣き止むまでいた。
そして泣き止んだ摩耶は深呼吸する。
「また、よろしくお願いしますね相馬さん」
「気持ちの切り替えが早いこと、ああ。こちらこそよろしく」
笑い合う二人、こうしてたった一年の短い内に一つのカップルが誕生した。
その後、大広間に戻ると摩耶と相馬は摩耶の両親に正式に付き合うことを伝えた後環にも詳しい事を伝えた。
「ーーんで、ちゃんと付き合うことになったの?」
大広間の外で摩耶が廊下を歩いていると奈々が現れた。
「うん!奈々ちゃんのお陰だよ」
「私は何もしてないけどね、さてとあと二年間はゆっくり過ごせそうだよ」
背伸びして大広間に戻ろうとする奈々。
「奈々ちゃんは見つけないの?」
「ん〜?私は別にお嬢様辞めたから」
「え?」
「そろそろ摩耶のご両親にも報告来ると思うよ、私は今はアイツの家に住んでるけど摩耶の所には来れなくなる」
「ど、どうしてそれを…」
「早く言わなかったのか?そりゃ私は摩耶に心配をかけたくなかったからだよ」
「私…私が何か出来ることは?」
「ああ大丈夫大丈夫、いつまでも摩耶に助けてもらう訳には行かないでしょ、ねっ」
笑顔でウインクして大広間に戻っていく奈々。摩耶は一人でどうすればいいのか考えるのだった。
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