お嬢様不機嫌みたいです?ークソお嬢様が乗り込んできたー

 そんなこんなで約一週間が経つ、今だに摩耶の悩みの種は解決に至ってない。

「ーー何かないの?」

「話そうとしても避けられるんだ……というか、なんで俺の部屋に?」

 奈々は相馬の部屋に何の抵抗もなくそして自分の部屋の様にお構い無しに部屋の中を物色しながら相馬と話す。

「しょうがないでしょ、大都市でホテルを借りるよりどこかに泊まらせてもらった方がいいの」

「お前、計画もなしに来たのか?てか、いつまでいるの?」

「卒業までよ、パパとママには既に承認済み、そして環先生にも許可は貰った」

「はぁ…、なら摩耶の家に行けよ。あそこなら広いし部屋もあるだろ」

 幼馴染でどちらもお嬢様であるならば圧倒的に摩耶の館に行った方が住む分には問題なかい。

「い、嫌よ」

 しかし、奈々は断る。

「なんで?」

「だって…その…、恥ずかしいじゃん…」

 照れた顔して理由を語る、相馬は呆れる。

「は?恥ずかしい?どいうこと?」

「その〜……私、摩耶と二人だけになると話しずらくなっちゃうの、周りに人がいれば気にせず話せるけど二人だけになるとちょっとね…」

 相馬に対して高圧的な態度だが摩耶と二人っきりになると恥ずかしさでまともに話せない。あまりにも意外な理由に大笑いする相馬。

「めちゃくちゃ笑える、もしかしてあれか?子供のときのっ!!」

 思いっきり顔面にパンチが飛んでくる。

「死ねっ!!」

 相馬の顔は真っ赤になり鼻から血が流れ落ちる。テッシュで鼻血を拭き鼻に詰める。

「本当にお前女か?めちゃくちゃ痛てぇ…」

 するとまたパンチが飛んでくるが次はギリギリ避けた。

「避けるなっ!!」

「避けるわっ!本当に危ねぇ、そんなに子供の時の話は嫌なのか?」

「当たり前よ、その話は一生しないで次は殺す」

 恥ずかしさと怒りで次は何をするか分からない奈々を見て子供の話はしないようにすると宣言する相馬。

「んで、どうする?俺は避けられる、お前は話せない。いっその事二人で行くか?」

「あんた本当にヴァカね、二人で摩耶の所に行けば摩耶からしたら怖い極まりないでしょ、例え友達同士であっても嫌でしょ。ましてやそれこそ更に悪化しかねないでしょ」

「あーそうか…」

「ま、あとは晩御飯のあとにしましょ」

「……ん?マジでここに居座る気か?」

 相馬はてっきり冗談だと思っていたが奈々は不思議そうな顔をしていた。

「言ったでしょ、卒業までここに住むって。環先生は『全然いいわよ!むしろ住んで!』と言ってたわよ」

「あの野郎…、けど今日は環帰り遅いんだよな、また俺が作らないといけないのか」

「あら、あんた料理出来るの?」

「当たり前だ、環と二人で住んでるから環が帰らない時は俺が作ってる」

 相馬と環は姉と弟でありながら二人でこの家に住んでいた。しかし当然疑問に思う事が一つあった奈々は聞いた。

「両親は?」

 奈々は聞くと相馬は俯く。

「あー、それには聞かないでくれ」

 どうして、と聞こうとしたが奈々はあえて聞かなかった。

「ふぅん、じゃあ今日は私が料理を作る」

「はぁ?話の流れおかしくない?」

「まあいいから、台所は?」

「分かった、こっちだ」

 相馬は台所まで案内するついでに家の中を軽く案内した、そして台所に着くと奈々は台所周りを確認して冷蔵庫の中を確認したのち頷き玄関に置いたままのキャリーケースをリビングまで持ってきたあと中を開けて中から中ぐらいの黒いケースを取り出し台所に置く。

「これは?」

「私物」

「見りゃあ分かる、中は?」

「ふふん、あんたはどうせ普通に料理するだけでしょ、けど私は違う」

 ケースを開けるとそこに数本の包丁に何十種類の調味料などがあった。

「すっげぇな、てかこれ飛行機大丈夫だったのか?」

「普通は手荷物はダメ、預け入れ荷物には大丈夫だけど私はお嬢様よ」

「あー、さいですか…」

 自家用ジェットだと察する。

「さて、料理するから邪魔どいて」

「はいはい…」

 相馬は台所から離れてリビングでソファーに座りテレビを見て待つことにした。

 待つこと約一時間、出来上がった料理はステーキだった。

「ステーキ?家には大層な肉は無かったと思うけど…」

 台所で包丁を研ぎ綺麗に後片付けする奈々に聞いた。

「冷蔵庫にあった肉を使っただけ、人数は二人前、私とあんたの分。環先生には夜中に帰ってきても大丈夫なように体にいいものを作った」

「あんな一時間で?」

「私の料理は超一流、いえ宇宙一と言っても過言ではないわ」

 片付けが終わりケースに包丁をしまい、台所の端に置く。

「凄い自信だな…」

「食べてから文句を言いなさい、食べる前から文句を言うのは邪道極まりない」

 逆に不安になる相馬だったが奈々に促されて一口食べる。

「………お、美味しい」

 美味し過ぎて全身から力が抜けるようだった。

「ふふん、凄いでしょ!」

 ドヤ顔で腕を組む奈々。

「お前凄いな、正直お嬢様みたいな人達は全部使用人とかに任せるものだと思っていたけどやっぱ違う人は違うんだな」

 食べながら話していた相馬の言葉に奈々は刺さり先程までの元気の良さから一変して暗くなる。

「ん?どうした」

「なんだろうやっぱ他の人も同じ考えなのかな?」

 自分の分の料理を見つめ奈々は暗い顔をする。

「???」

 突然何を言い出したのか分からない相馬は首を傾げる。

「ごめん、これは環先生が食べるようだったら食べちゃってもいいわよ。お風呂借りるね」

 奈々はキャリーケースの中から寝間着を持ちお風呂場へと向かった。

「なんだアイツ…」

 不思議に思った相馬だがちょうど玄関から帰ってくる環。

「うへ〜、疲れだ〜」

「環、奈々が料理を作ってくれた。食べるか?」

 奈々が作った料理を指さすと環は驚く。

「え!?凄い!ステーキ?」

「らしい、今は風呂に入ってる」

「うわ〜、凄いね〜。相馬とは違って…」

 すぐに座って食べ始める環。

「おいおい俺もそれなりに美味しいだろ」

「ん〜、美味しい〜」

「聞いてねぇし…」

 美味しい物を食べてめちゃくちゃ幸せそうな顔をする環には相馬の声は届いてなかった。

 食べ終わり食器を洗う相馬と環。

「ねぇ、奈々ちゃん遅くない?」

「そういえば」

 意外と長い時間お風呂に入ってると思われる奈々、環は心配になり相馬に食器洗いを任せてお風呂場に向かう。

「きゃーーー!」

 環の悲鳴が聞こえる。相馬は急いでお風呂場に向かうと奈々が湯船に浸かりながら気絶していた。

「そそそ相馬、急いで応急処置!」

「おう……環一人で出来る?」

 環は奈々を湯船から出そうとして相馬に手伝うように言い相馬は近づこうとしたが気づく、目の前にいるのが同年代の女の子が裸でいることと女嫌いであるため近づくことが難しいということに。

「馬鹿っ!人が倒れてるのよ」

「で、でも…」

「教師権限よ!助けなさい!」

「変な事に教師権限使うなよ、分かったよ」

 人の命となると人が変わるように全力になる環に相馬はできる限り奈々の体を見ないように目線を逸らしながらそして助けてるのは男だと必死に想像しながら湯船から出して横に寝かせる。

「環、あとは頼んだ」

「あっ!ちょっと…」

 脱衣場から奈々の寝間着とタオルを素早く置きお風呂場から逃げ去るようにリビングに戻った。

「はぁはぁ、し、死ぬかと思った…」

 理性と女嫌いの二つを耐え抜いた相馬の心臓は爆発寸前だった。

「とりあえず落ち着こう」

 深呼吸したあと冷蔵庫から飲み物を出して飲み落ち着く。

「相馬〜、ちょっと来て〜奈々ちゃんを運んで〜」

 環が呼ぶ声が聴こえて着替えさせたか相馬は聞くと大丈夫と環は言い相馬は再びお風呂場に向かい女嫌いを我慢して奈々をリビングに運びソファーに寝かせタオルを濡らしておでこに乗せる。

「だ、大丈夫かな?」

 先程まで必死だった環は人が変わったようにオロオロする。

「おそらく大丈夫、運んだ時に息はあった」

「本当に」

「まぁな、とりあえず俺は先にお風呂入ってくる。環は奈々をみとけ」

「うん、分かった」

 相馬はお風呂に入りゆっくりと休んだ後お風呂から出るとまだ奈々は寝ていた。

「じゃあ次は相馬が見てて」

「分かった」

 入れ替わるように次は環がお風呂に入りに行き相馬は奈々を見つつテレビを観る。

「ーー環先生は?」

 すると奈々が起きたかのように相馬に声をかけた。

「うおっ!びっくりした〜、いつ起きた?」

 相馬は驚く奈々はゆっくりと起き上がる。

「…今さっき…」

「そうか、体調は?」

「ん、まぁまぁ…」

「その〜…裸は見てないか安心しろ」

 一応言う必要はない事を言う相馬、何か言われると思ったが意外と何も言わず予想とは違った事を言い始めた奈々。

「女嫌い…なんだ…」

「知ってるのか?」

 クラスメイトしか知らない情報、それを知っている奈々を不思議に思った。

「一応意識はあった、その時にあんたが私を触るのに抵抗があったこと、運んだ時に震えがあったこと。まあ触るのに抵抗があったのは女嫌いの他に女の子の体を見ることに抵抗があったが大きいかな?」

「全部知ってたんじゃねぇか…」

「まぁね、でもあんたって意外と女嫌いなくせに普通に接するんだね」

「…人命に関わることなら当たり前だよ、女嫌いは少しぐらいは我慢するさ」

 女嫌いなのは確かだが絶対的な嫌いではなく出来れば近づきたくないというものは相馬自身分かっている。

「…摩耶にも同じこと出来る?」

 ふと奈々がそんな事を聞くと、相馬は特に考えることも無く言う。

「そんなの当たり前だ」

 それを聞いた奈々は「そう…」とだけ言い立ち上がる。

「まだ立たない方がいいぞ」

「もう大丈夫、寝る。相馬のベッドもらう、お休み〜」

 いつもの調子に戻ったのか笑みを浮かべリビングから出ていく。

「おやす…て、おい!俺のベッド!!」

「私はお嬢様よ、別にいいじゃない」

 颯爽と相馬の部屋に向かう奈々。

「マジか!お前そこでお嬢様を使うとかせけぇ!!」

 急いで追いかけたが既にベッドを占領されていた。

 結局、環を入れ話し合い奈々は「私ベッドじゃないと寝れません!」と猫を被り環は「相馬ならソファーで寝ても大丈夫」と一方的に決まり相馬の部屋は完全に奈々の部屋となった。

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