お嬢様夏休みを満喫します!ーお嬢様?大丈夫ですか?ー
レストランでお昼を食べた後ショッピングモール内を歩く。
「どこ行きますか?」
摩耶は相馬と奈々に聞く。
「摩耶が行きたいところでいいよ」
急にアメリカに連れてこられて行きたい場所なんてすぐには決められないのは当たり前でましてやアメリカに来ること自体が初めての相馬にとっては摩耶と奈々に任せるしかなかった。
「じゃあ、あんたはここで待ってて。私と摩耶は洋服を見てくる」
「えっ?ちょっと…」
奈々は摩耶の腕を掴み近くの洋服屋に入っていった。
「いってら〜」
手を振り見送る相馬。
「相馬さんも一緒に〜」
「俺はいいよ、だって…」
女性の洋服専門だから相馬は一緒に行くことを断る、奈々が一緒にいるから大丈夫だと思いそのまま見送った。
「はぁ〜…、もう疲れた」
午前中だけで色々な事がありすぎて疲労が襲い近くのベンチに腰を下ろす。
「全く常識知らずのお嬢様に高飛車なクソお嬢様と高低差がありすぎるだろ…」
性格が相容れない存在である摩耶と奈々、それがなぜ今でも友達でいるのか不思議で仕方なかった。
「ま、あのクソお嬢は日本にいないことが唯一の救いだな。常識知らずのお嬢だけで手一杯だわ」
スマフォを取り出し暇つぶしにSNSを眺めていたらいつの間にか居眠りしてしまった。
「ーー…てるの?」
「ーー…寝てますよ」
摩耶と奈々の聞こえたがまだ意識はハッキリとしなかったが起きようとする。
「……奈々ちゃん、それは…」
「……いいの、こいつにはこれがお似合い、よっ!」
バチンと相馬のおでこに痛みが走り先程までまだ意識がハッキリとしてなかったのが吹き飛び完全に目が覚める。
超がつくほど痛いデコピンを食らった相馬はおでこを押えて起きる。
「ーーいっ……だぁ!!お前〜」
赤く腫れ上がるおでこに摩耶と奈々は笑い出す。
「ふふ、相馬さん。おでこ…」
「あはは、いいザマね」
お腹を押えて大笑いする二人に相馬はスマフォを内カメラに変えておでこを見たら指の跡がくっきりと残る赤い跡があった。
「めちゃくちゃ痛てぇ〜…、銃に撃たれたような痛みだぞこれ…」
ヒリヒリと痛むおでこをさする。
「寝てるあんたが悪いのよ、ヴァ〜カ」
「その下唇噛みながら言うの止めろ、てかお前その力ヤバくね?どんな指圧してるの?」
女性のデコピンとは思えない程の威力、デコピン選手権があれば間違いなく優勝するほどの威力に驚く。
「もう一度やる?」
「やらねぇよ!!穴が空くわ!!」
奈々と相馬のやり取りに大笑いする摩耶だがふと何かに気づき笑いを止めたがそれに気づかずにいつまでもふざけ合う相馬と奈々だった。
そして一段落して再び歩き始める。
「二人共仲良くなって良かったです」
「え?」「何が?」
摩耶が言うと相馬と奈々は驚く。
「だって二人共仲良さそうに話していたから…」
相馬と奈々は顔を見合わせたあと摩耶を見る。
「「それはない」」
同時に答えた。
「やっぱり仲良くなったね」
笑顔の摩耶だが相馬と奈々は睨み合う。
「摩耶、こんな男はほっといて行こ」
また摩耶の腕を掴み相馬から離れるように早歩きで離れていく奈々。
「待って奈々ちゃん」
しかし、踏ん張って止める摩耶。
「なに?」
「腕を引っ張るのは嫌じゃないけどやっぱ手を繋ご」
摩耶が言うと奈々は先程までの高飛車な態度が一変して物凄く苦悶の表情を浮かべる。
「昔みたいに一緒にどうかな?」
「ば、馬鹿!摩耶今それは…」
急に昔の事を話そうとする摩耶に慌てて止める奈々だが恥ずかしいのか頬が赤くなる。
いい事を聞いたと思った相馬は先程のデコピンの仕返しと思い茶化し始める。
「へぇ〜、奈々ちゃんって昔は摩耶と手を繋いで歩いていたんだ〜」
「ち、ちげぇよ。これは摩耶がいつもそう言ってくるから…」
必死に否定するがここで摩耶の空気を読まないスキルが発動する。
「違うよ〜、奈々ちゃんが寂しいって言っていたから私がいつも奈々ちゃんの隣にいたの」
「ーーーーーーッ!!!」
完全にクリティカルに入ったのか奈々の顔は真っ赤になる。
「ほう、摩耶。その話を詳しく」
調子に乗った相馬は更に摩耶から聞く、摩耶は出し惜しみなく答えようとする。
「例えばね〜、奈々ちゃんがー…」
口を塞ぐ奈々。
「分かった、分かったから手を繋ぐよ、繋がせてください」
もはや立場が逆転したかのように奈々が摩耶に対して敬語になった。
そして摩耶と奈々は手を繋ぎ歩く。相馬は摩耶の横を歩き奈々と距離を置いていた。
「……コロスコロスコロスコロスコロスコロス」
ブツブツと呟きながら奈々は相馬を睨みつけていたために相馬は離れていた。
「もう奈々ちゃん、そんな事を言っちゃダメだよ」
摩耶が母親みたいに奈々を叱るとピタリと止まったがそれでも相馬を睨みつけていた。
「わ、悪かった俺だって反省してるよ……ふっ…」
謝る相馬、しかし摩耶が言っていた奈々が摩耶に縋り付く様子を思い出すと小さく笑ってしまう。
「絶対に覚えておけよ…」
そう言い残し睨むのを止める。
「やり過ぎたな…」
少し後悔したがその分面白いことも聞けたと思った相馬だったが仕返しがいつくるか同時に恐怖となった。
そんな事もあり午後は過ぎていった、ホテルに帰り食事をしたのち自室に戻る。
「ハード過ぎる一日だった…」
ベッドに横になりリラックスする。
「まあ、あと二三日で帰れる」
食事中で聞いた話では用事も済み帰るだけとなったため今はゆっくりと満喫してから帰る予定だと摩耶の両親と奈々の両親が話しているのが聞こえていた。
「さて、環にもメールを送ったからシャワーを浴びてくるか」
相馬はシャワーを浴び着替えてあとは寝るだけだったがまだ少し時間に余裕があったためSNSを見ているとドアをノックする音が聞こえる。
「ん〜、誰だ…あ、やべっ、奈々か?」
急いで覗き穴から廊下を覗くとそこには寝間着姿の摩耶が立っていた。
「摩耶、どうした?」
「すみません、今大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど……奈々はいるのか?」
相馬は廊下に顔を出して周囲を警戒する。
「私だけです」
「なら良かった、話はここで大丈夫か?」
さすがに部屋に入れるのは色んな意味で不味いと思った相馬は廊下で話を聞こうとした。
「はい、だいじょ…くしゅん」
摩耶はクシャミをする、摩耶の髪はまだ濡れていて顔もほのかに赤くシャワーを浴びたあとだと気づく、いくら真夏に近づいてるとはいえシャワーを浴びた後、髪を乾かさずに外を出歩けば寒気がするのは当然だった。
「あ、悪い気づかなかった。摩耶が大丈夫なら中入るか?」
「しゅみません…」
鼻を軽く啜りながら部屋の中に入る。
「ほら、タオル」
「ありがとうございます」
浴室からタオルを持ってきて摩耶に渡すと摩耶はお礼を言い髪を拭き始める。
「んで、どうして部屋に来た?それに髪も拭かずに」
急ぎの用事と思った相馬だが急ぎにしては意外と落ち着いている感じだったため違う用事だと思い部屋に来た理由を聞く。
「はい、ちょっとシャワーを浴びていたら、ふと思ったんです」
髪を拭く手を止め摩耶はどこか悩んだ表情をしていた。
「なにを?」
「大した事ではないのですが、私と奈々ちゃんが友達なのは言いましたよね」
「うん、昔からの幼馴染だろ。あの様子を見りゃあ誰だって分かる」
普通に罵倒する言葉を言いつつも絶対に摩耶に対しては言わずに昔の話をしようとした時に恥ずかしがる様子を見れば誰だって仲がいいことが分かる。
「はい、今日は二人の仲を深めるためにお出かけをしました」
「違った意味で深まったけどな」
一笑する相馬だが笑わない摩耶。
「どうした?」
「いえ…、二人の仲が少し羨ましいと思ってしまったんです」
「羨ましい?どこが?」
相馬にとっては相馬と奈々は犬猿の仲と言っていいほど仲が悪くなっていたがまだ殴り合うほどではない、そんな関係が羨ましいと言う摩耶に疑問を抱く。
「……なんですかね、分からないです」
「なんだそれ」
首を傾げる相馬、本人がその理由が分からなければ他の人は最も分からない。
するとドアを叩く音が聞こえる。
「おい、開けろ」
廊下から奈々の声が聞こえた。
「やっべ、どうしよ」
慌てる相馬だが摩耶は咄嗟に腕を掴む。
「ごめんなさい、出ないでください」
「え?」
思い詰めた顔をしている摩耶、普通なら奈々を中に呼んで楽しそうに喋るだろうと思っていた相馬だったが意外な事に摩耶は止めた。
「ま、摩耶?」
「ごめんなさい…お願いします……」
「でも……」
段々とドアを叩く音が大きくなる、それに伴い摩耶が腕を掴む力が強くなる。
「そ〜う〜ま〜く〜ん。居るんでしょ、こうなったらマスタキーを使うわよ」
「ほわっ!?アイツなんてものを…てか早く出ないと」
「……」
ふと掴む力が弱まると相馬は急いでドアを開けに行こうとした。
「あ、ダメっ!」
摩耶は咄嗟に相馬にしがみつく、しかしはずみでバランスを崩す相馬はそのまま前のめりに倒れた。
「な〜に、やってんのよ。そう…ま……」
ちょうど奈々がドアを開けるとそこにはうつ伏せ状態の相馬に摩耶が上に乗っている状態だった。
「な、何やってるのあんた達……」
驚き引きつった顔で見下ろす奈々。
「いや奈々これには訳が…」
相馬は説明しようとしたが奈々は相馬を見ていたのではなく摩耶を見ていた。
「摩耶、なんで上がはだけてるの…」
「は、はぁ!?摩耶?」
振り返ってはいけないが反射的に振り返りそうになる相馬。
「振り返らないで!」
「お、おう…」
止める摩耶。
「…ごめんなさい」
摩耶はそのまま走り去って部屋から出ていった。
静まり返る空気。相馬と奈々だけになり凄い気まづい雰囲気となった。
「あ、あの〜。奈々さん、これには深い訳が…」
「何をやったの?あんた?」
「いやその摩耶が部屋に来て…」
「連れ込んだの?」
「違う違う、摩耶が来た時に髪が濡れていたから」
勘違いを正そうと必死に弁解しようとした。
「はぁ?女の子が髪を乾かさないで部屋を出るわけないじゃない」
相馬は何も言い返せないがそれでも弁解する。
「だから摩耶が部屋に来て、今日の事を話したんだよ」
しかし言葉を端折り過ぎたのか奈々の勘違いはさらに増す。
「今日?まさか私の話?」
「違って」
「もういい!この変態男!馬鹿、死ね!一生死ね」
ドアを思いっきり閉めてそのまま廊下を走り去っていく足音が聞こえた。
「何なんだよ一体……」
時間にしてたった数十分の出来事、少ない時間の中で理解が追いつかないほど物事が進み過ぎて相馬は混乱したがどうすることも出来ないまま夜は過ぎていった。
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