1-63.63話「死闘ゴーディアン」

 今回が山崎晴哉の『闘士ゴーディアン』で最後の脚本になる。最後に任されたのは、自分が総統に成り上がらせたバラスの幕引きである。それでは見ていこう。


63話 「死闘ゴーディアン」 1980年12月14日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :渡部英雄

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 ダイゴ暗殺に失敗したマドクターは、マドック3将軍に総攻撃を命じたが惨敗。おまけにサイマドック(32話準拠)がプロテッサーのボムドリル(ボムドリュー)で倒される。その戦闘を見守っていたサクシダーは、ゴーディアンが分離する瞬間に一瞬の隙が出来ることに気づく。

 報告を受けた毒魔大帝統は、サントーレを遠巻きにして神経戦に持ち込み、イクストロンエネルギーを燃料として動く闘獣士ドッグマンの開発をエリアスに急がせる。ドッグマンの操作室は内部から開けられないようにするよう命じた大帝統は、ゴーディアンに勝ったときのみ開けるよう示唆した。勝利か、さもなくば死か。退路を断つ覚悟で戦わせようというのだ。

 パイロット候補を連れてきたバラスに、大帝統は「マドクターの中でもっとも優秀な軍人は誰か? バラスであろう」と問いかけ、認めるバラスに「ならばお前が乗れ」と命ずる。見守るサクシダーとエリアスはほくそ笑むのを押さえることが出来なかった。

 ダイゴと一騎打ちをするよう命じられドッグマンに乗り込んだバラスは、操縦席に座ると同時に手足を拘束される。もはや逃げ場はないと悟ったバラスは覚悟の出撃をする。何も知らないマドクター兵たちが歓呼の声で見送る。

 サントーレでは、神経戦の影響が徐々に出始めていた。長引く戦闘で、医薬品や食糧の不足が目立ってきたのだ。そこにドッグマンが現れた。バラス総統は名乗りをあげ、ダイゴを名指しで一騎打ちを迫る。飛び出そうとするダイゴをバリーが止めた。ゴーディアンの本分はビッグカタストロフから人類を守ることだというのだ。花巻博士もドッグマンはイクストロンを使用していると看破し、出撃に反対する。バリーたちはゴーディアンが負けることで人類の希望が失われることを恐れていた。それでも納得できないダイゴにバリーは「俺を撃ってから行け」と立ちはだかる。ダイゴは渋々あきらめた。

 食堂でやけ食いして憂さを晴らそうとしたダイゴとダルフだが、食料は配給制になっていた。文句を言いに長官室に来たダイゴは、竜馬が説得した最後のタウン、ニューブリデンタウンが物資を持って合流するという知らせを聞く。しかし、サクシダー率いる部隊の雪崩攻撃によって避難民たちは全滅、物資も失われてしまう。

 既にサントーレの人々は限界に追い込まれていた。ピーチィやサオリの懇願に加え、ジェロニモに「インディアンでは、決闘を申し込まれて受けないような男は一番の恥知らずだ。ダイゴを恥知らずにしていいのか」と言われ、ついにバリーもダイゴの出撃を許可する。クリントに留守番を命じ、ダイゴはゴーディアンで出撃した。

 ゴーディアン対ドッグマンの戦いは、ドッグマンが押し気味に進める。フットミサイルやデュークスクリューなど、ゴーディアンの武器もドッグマンはコピーしていたのだ。ついにゴーディアンが分離すると、ドッグマンも胴体を開き、二台のロボットを分離させる。二体はガービンとデリンガーに抱きつき自爆する。ドッグマン本体はプロテッサーに掴みかかり、首を締め上げる。苦しむダイゴの意識が遠のく。

 気がつくと、ダイゴは花園に立っていた。母ナオミがゲンのビデオで見た顔で花を摘んでいる。「俺生きたよ、力一杯戦ったんだ」と駆け寄るダイゴを母は「来てはいけません。あなたにはまだしなくてはならないことが」と追い返す。

 意識を取り戻したダイゴは、プロテッサーでドッグマンを持ち上げて投げつけ、再嵌入したガービンの白光剣で倒す。

 総統の死にマドクターは退却し、サントーレの人々の歓喜の声がゴーディアンを包んだ。


解 説


 これが実質最後の闘獣士戦となる。

 マドクターの総攻撃、戦車の足が動いていないのが残念。リソースが割けなかったのだろうか。

 今回のサイマドックの声はたてかべ和也だと思われる。止めはプロテッサーのボムドリル。レアな使用例だ。それを見て退くトウマドックの声優は伊武雅之だろうか。

 見守るサクシダーの「そろそろゴーディアンが分離する時期だ」の台詞、そこはかとなくおかしい。

 バラスの乗った闘獣士は『スーパーロボットマテリアル』、『アニメージュ』1981年11月号付録「スタジオぬえのデザイン・ノート」では「ドッグマン」と表記されているのでたぶんこれが正式名称なのだろう。『アニメージュ』等のあらすじには「ドグマン」と書かれているので、シナリオでは表記が違った可能性がある。一方、本編の台詞では「ドクマン」に聞こえる。毒魔大帝統の忠犬だったバラスの棺桶としては「ドッグマン」の方がふさわしいと思う。

 Bパート冒頭の食堂シーン、ほんわかムードのBGMからの落差がひどい。ダイゴが注文するメニューが「カツカレーにハンバーグにラーメンの大盛り」と見事に日本の食堂メニューだ。食堂のウェイトレスやコックはこの回のみのキャラ。

 ニューブリデンタウンの避難民壊滅、山崎晴哉でなければ少しは助かったのだろうか。食糧不足でミルクを取り合う母親など、今回も辛いシーンが多い。個人的には、バラスに見張られているので市民救出に行けないダイゴのジレンマをもっと入れて欲しかった。

 対ドッグマン戦、BGMとして『闘士ゴーディアン』が久々に使われ場を盛り上げる。

 ゴーディアン分離の隙を狙うというのは内部を露出しているところに攻撃するのかと思っていたのでドッグマンの攻撃方法は意外だった。ただし分離した二体は爆弾としての使用なのは、ダイゴのように三体を独立して動かせないバラスの限界だったのだろう。少なくともバラスは自分を見限った毒魔大帝統への恨み言は言わず、武人として殉じた。


今回の名言


「バラスという男が他にいるか?」(毒魔大帝統)


「竜馬か……また、お前の世話になるぜ」(ダイゴ)


こぼれ話


 タイトル「死闘ゴーディアン」は「闘士ゴーディアン」のもじりだろうが、このセンス、嫌いではない。


 『冒険王』1981年1月号掲載の桜多吾作コミカライズ第15話は「死闘ゴーディアン」がベース。但し、アノー号はまだサントーレに到着していない時系列。

 バラスが乗るドッグマンにあたる闘獣士は、デザインが間に合わなかったのか桜多吾作オリジナルのデザインである。三体分離するのは同じ。「チェンジする時にショックを与えるとしばらくは動けなくなる」のがゴーディアンの弱点だというのも桜多吾作オリジナルの設定。攻撃されて苦しむダイゴが「イクストロン・エネルギーのパルスが逆流する」と叫ぶが、本編でも説明されていない「パルス・ストーム」の解説だと思われる。

 闘獣士に締め付けられるプロテッサーだが、ダイゴは「どんなことがあっても生きのびて未来を見てやるんだ」と叫ぶと逆上がりの要領で闘獣士の頭部にキックし、頭部を破壊する。

 だが戦闘の間に、アノー号移動用のブースターが破壊されてしまった。ガービンに再嵌入したゴーディアンは、フットミサイルをアノー号足下の雪山に命中させ、雪崩でサントーレまでアノー号を押し流す。

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