1-35.35話「孤塁サントーレ」

 『アニメージュ』vol.24(1980年6月号)の放送予定欄では今回の背景を「時代設定としては、強大国による世界のコントロール支配が崩壊し、群小タウンの割拠のころ、となっていますので、ゴーディアンの作品世界の視点がもうひとつ大きくひろがったといえるでしょう」と山本優が解説している。後の回でも説明があるが、冷戦時代から突如文明崩壊した世界がゴーディアンの舞台なのだ。

 個人的に今回は『闘士ゴーディアン』の中でも代表回の一つだと思っている。それでは見ていこう。


35話「孤塁サントーレ」 1980年6月1日


 脚本     :松崎健一

 演出     :康村正一

 作画監督   :小野順三


あらすじ


 サンドタウンでタウン会議が開かれることが決まり、サントーレではロビンソン市長の代理としてアンノンジーが出席することになった。ダイゴも行きたがるがバリーに有事に備えて待機するよう命じられる。しかし、この情報はマドクター側にも伝わっていた。バラスはサクシダーに作戦を命じる。

 アンノンジーに同行したバリーたちは、ウイングタウンの代表団がマドクターに襲われているところに出くわす。マドクターは逃げていき、辛くも助かったウイングタウン市長と花巻(チビヒゲ)博士はバリーたちと合流する。サントーレで襲撃の映像を見たダイゴは、サオリたちの制止を振り切ってゴーディアンで出撃する。

 会議場のサンドホールは、かつて大滝博士がマドクターに襲われた場所だった。バリーたちは先回りしてゴーディアンが来ていたのに驚く。アンノンジーはダイゴが大滝博士の息子だと花巻博士に紹介する。

 議長のビーチタウン代表が到着するのを見たダイゴは、ジェット旅客機が垂直降下をしたのを見て怪しむ。タラップを降りてきたのはサクシダー。実はサントーレとウイングタウン代表以外は、全員マドクターの配下にすり替わっていたのだ。

 いよいよ会議が始まった。二階席で見守るバリーとダイゴ。しかし、各タウン代表はサントーレへの協力を渋り、マドクターがただのコンピューター崇拝者だと言う意見に同調する。ダイゴの抗議も議長のサクシダーに遮られて聞き入れられない。怪しんだバリーはビーチタウン機の来たルートを調べるようにダイゴに命ずる。プロテッサーで出撃したダイゴは、本物のビーチタウン機の残骸を見つける。

 一方会議場では、サクシダーがイクストロン=プロジェクトXの秘密をサントーレが隠しているとアンノンジーを責め立てていた。花巻博士は大滝博士の死去以後、研究は進展していないと意見するが、サクシダーはゴーディアンの存在を盾にする。評決を取ろうとした時、ビーチタウン機の残骸を持ったプロテッサーが乗り込んできた。偽装が見破られたサクシダーは部下に命じて会議場にマシンガンを乱射させる。流れ弾に当たったウイングタウン市長は死亡した。

 サクシダーが乗ってきたジェット旅客機はコウモリ型闘獣士の偽装だった。サクシダーは闘獣士を残すと「命があったらまた会おう」と言い残しヘリで脱出する。闘獣士のビームをデューク・スクリューで跳ね返すゴーディアン。闘獣士は空へ逃げ出すが、ゴーディアンは闘獣士をアバランチアタック、必殺白光剣で倒す。

 会議は終わったがバリーは浮かぬ顔だ。サントーレの心証が今回の事件で悪化したことで、協力を得にくくなると考えていたのだ。そこに花巻博士が駆け寄ってきた。自分もサントーレに行き科学者として協力したいというのだ。花巻博士はゴーディアンのそばで立ちすくむダイゴを心配そうに見つめていた。

 『世界の各タウンから見放され、サントーレに完全に孤立した人々は、これから先、世界征服を企てるマドクターの魔の手から、どのように逃れられるか。そして、それに立ち向かうダイゴの運命は。』(伊武雅之)


解 説


 今回からOPとEDが一部変更。OPラストカットのデリンガーの顔がタツノコプロの「ロ」から覗くのがずらされたり、EDのゴーディアン三体が超合金準拠に直されたりしている。

 議長の顔に見覚えがあるが思い出せないダイゴ。サクシダーとダイゴは31話で対面しているのだが、ダイゴの記憶にはあまり残ってなかったようだ。

 会議場のモブに鉄人28号などのお遊びキャラが。

 この回で名前が出た他のタウンは、ギャランタウン、ミーンタウン、ダウンタウン。

 プロテッサーがガラスを破って突入してきた箇所、恐らく大滝博士が襲われた際にマドクター兵が突入してきた場所と同じ。奇妙な縁を感じる。

 今回の闘獣士は名前の資料なし。必殺白光剣のバンクが28話以来使われるがあまりにインパクト強すぎで、スパロボに出たら地対地攻撃で採用されそうな勢い。

 サクシダーの策士ぶり、プロテッサーの活躍、作画がいいなど、今回はゴーディアンの中でもかなり上位の出来だと思う。戦いには勝ったがマドクターの策略に敗れるというゴーディアンのシビアな戦いがこの一話で十分伝わってくる。

 花巻博士(この名前が出るのは36話。漢字はDVDの設定資料より)のテロップは「チビヒケ博士 緒方堅一」正しくはチビヒゲ博士。緒方賢一は同時期に出ている他作品でも改名はしていないので、純粋に誤植だと思われる。

 タウン会議では破れたサントーレだが、この花巻博士を迎えたことはサントーレ隊、ひいては人類の勝利のために重要であったことが徐々に分かっていく。


今回の名言


 「どうです皆さん。我々にはエネルギーの秘密を雀の涙ほども教えようとしない利己的なタウンを、我が身を危険にさらしてまで助ける謂われがありましょうや」(サクシダー)

 「敵ながらあっぱれと言ってやろう。だが、プロジェクトXの事に関しては何と申し開きするつもりだ。ン、できまい。フハハハハ」(サクシダー)


 「だが、勝ったのは奴らだ」(バリー)


こぼれ話


 今回のラストシーン、会議場の夕景をバックに立つゴーディアンとダイゴのカットは、『ジ・アニメ』Vol.12(1980年11月号)の特集に使われている。

 2012年に開催された『タツノコプロテン』にてこのセル画が展示され、目録にも掲載されたが、なぜかセルが背景とずれた形で展示されてしまった。ゴーディアンの照り返しが明らかにずれているので分かる。

 その後、2017年に東武百貨店で行われた『タツノコプロ 55 周年 GO!GO!記念展』でこのセル画を使ったP10キャラファインボードが発売されたが、セルのずれがそのまま商品化されてしまった。私は購入したが非常に残念である。張り付きなら仕方ないが、次に展示の機会があったら是非とも正しい位置に直して欲しい。

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