1-33.33話「決死の大脱走」

 「果たして成功するかどうかは、オンエアーまで内緒にしておいた方がよさそうですね」と『アニメージュ』vol.24(80年6月号)の放送予定欄で焦らす山本優。だが脚本はゲスト全滅の前歴のある山崎晴哉である。それでは見ていこう。


33話「決死の大脱走」 1980年5月18日


 脚本     :山崎晴哉

 演出     :石川康夫(テロップでは石川信夫と誤記)

『アニメージュ』vol.24(80年6月号)では岡崎邦彦

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 ヴィクトールタウン北の捕虜収容所にパラシュートで降下するダイゴ。ロイド将軍率いる隊はヴィクトールタウン決戦の際に援護に駆けつけたが、到着時にはタウンは陥落しており捕虜になっていた。ロイドの友人であるアンノンジーは、戦略家として知られる彼を是非とも脱走させ、サントーレに迎え入れるために一番信用するダイゴを使者として潜入させたのだ。アンノンジー直筆の手紙でダイゴを信用したロイドは、部下たちと共に脱出のための地下道を掘り進めていることを明かす。

 捕虜たちが昼間の強制徴用に出ている間、ダイゴは地下道を必死に掘り進めた。夜間は捕虜たちも協力し、地下道は少しずつ広がっていった。

 しかし監視のマドクター隊員が、パラシュートの残骸を見つけて誰かが潜入したことに気づく。怪しんだパトロール兵は宿舎に踏み込み、危うく掘り出した土を入れる袋を見つけられそうになる。パトロール兵の目をそらすために暴れたディランは見せしめに磔にされてしまう。まだ安全な距離まで掘り進んでいなかったが、これ以上待てないとロイドは脱走を決意する。

 その夜ダイゴたちは、救出したディランと共に脱獄に成功する。しかし、収容所の周囲の地面には脱獄防止のための高圧電流が這わせてあった。脱獄に気づいたマドクター兵の攻撃によって、捕虜たちは続々と倒れる。ミッキーは体に巻き付けた手榴弾ごと特攻し、生き残ったディランたちも負傷したロイドをダイゴに任せて足止めに回り、全滅する。サントーレ近くでようやくバリーたちと合流したダイゴだが、背負われたロイド将軍は息を引き取っていた。ダイゴは「みんな死んじまった!みんな死んじまった!みんな死んじまった!」とやるせない怒りを荒野にぶつけるしかなく、その後襲ってきたマドクターの一つ目マドクスをゴーディアンで叩き斬った。


解 説


 今回はマドクターの幹部陣も毒魔大帝統も出てこない珍しい回。

 冒頭でダルフがダイゴを運ぶジャイニホバーを運転している。ダルフはこれ以降も運転手としての出番が増え、空挺部隊の小隊長ポジションも務めることになる。

 ヴィクトールタウンの捕虜収容所、南は市民、北はメカコン隊員や重要人物を収容していることが今回の説明で分かる。

 アンノンジーのロイドへの手紙はシナリオの文面をきちんと英語で書いているようだ。アンノンジーのスペルが「Annonge」であることも分かる。

 同室のロイドの部下は、ビフテキ好きなミッキー、十字架を首から提げたディラン神父、アルコール嫌いのマイルズ。

 ダイゴを5日間かかる潜入作戦に向かわせて、その間にマドクターがサントーレに攻めてきたらどうするのか、という話だが、まあその点は無視しておこう。もっと早く救援が来ていれば捕虜たちも助かったも知れないが、予定より一日早く脱走したのでサントーレ側の動きが遅れたと思われる。

 「壮烈・第7連隊」といい「激斗・プロフェッショナル」といい山崎晴哉は全滅大好きという印象がますます強まるが、全滅するキャラクターの描写をしっかり行っているからこそ視聴者の印象に残るわけで、これは褒めるべきだろう。

 ダイゴ、怒りのあまりガービンのままで「必殺赤光剣」と叫ぶが、使っているのは白光剣。

 今回のマドクター戦闘獣は「スーパーロボットマテリアル」にも名前なし。その形状から闘獣士っぽくない気がする。シナリオには名前があったのだろうか。


今回の名言 


 「ダイゴ、ビフテキちゃんによろしくな。俺はもう会えそうにないからよ」(リッキー)


こぼれ話


 今回の話の元ネタは映画『大脱走』だが、安原義人は後年テレビ東京で『大脱走』の主人公の吹替をしている。


 今回アニメージュで演出として名前が出た岡崎邦彦は、モノクロ時代からのベテラン。タツノコ作品では『いなかっぺ大将』『けろっこデメタン』『樫の木モック』に関わっている。そして『闘士ゴーディアン』後半のチーフ・ディレクターを落合正宗から引き継ぐことになる。その準備として演出に関わったというのは十分考えられる。

 なお、『アニメージュ』vol.24(80年6月号)の放送予定欄では33話以降36話まで作画監督欄にスタジオ名が直接書いてあるという特異な表記になっている。『ジ・アニメ』では空欄。


 『ジ・アニメ』Vol.7(1980年6月号)ではカラー特集が4ページ組まれている。前半2ページは30話から40話にかけてのあらすじ紹介、後半2ページは岡崎邦彦、宮田知行、山本優のスタッフ座談会という内容になっている。今回から順を追って紹介していこう。

 新チーフ・ディレクターとして自己紹介する岡崎邦彦。34話あたりからチェックに入り、シナリオの段階から全部見ていけるのは36話くらいだと説明している。「僕個人としてはメルヘン的なものの方が好き」だが、仕事としてはフリーになってからロボットものの仕事が多いとのこと。

 就任の抱負としては「素材は面白いと思う」が、時間変更で低年齢の視聴者が増えると考え、「SF西部劇的な味はちゃんと守って行きながら、この独特の素材を、もっとキメ細かく、分かり易く描いて行きたい」と語っている。それを聞いた山本優が「僕だけしか知らないところが多いから(笑)」と釈明しているのがシリーズ構成の視点らしい。

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