1-32.32話「吼(ほ)えろクリント」

 『アニメージュ』vol.24(1980年6月号)の放送予定欄で山本優は今回を「意外にクリントのファンも多いようなので、戦いのシーンだけでなく、彼(?)の頭のいいところもご披露。楽しんで見てもらえると思います」と紹介している。

 今回はゴーディアン後半を支える演出家の一人、渡部英雄のデビュー回でもある。それでは見ていこう。


32話「吼(ほ)えろクリント」 1980年5月11日


 脚本     :山本優

 演出     :渡部英雄

 作画監督   :村中博美


あらすじ


 ヴィクトールタウンはマドクターの手によって着々と要塞化しつつあった。毒魔大帝統は「サントーレの総攻撃は軽はずみにすべきではない。太陽のすかしの謎を探り出さぬ限りむやみに潰すわけには行かぬ」と幹部たちと四将軍に訓示する。エリアスはクリントとゴーディアンの間に特殊な感情波があることに気づき、クリントを囮にしてゴーディアンをおびき出す作戦を立てる。

 その頃サントーレでは、演説するバリーに見とれるサオリをダイゴがからかっていた。そこに女性が駆け込んできた。息子のアキラが行方不明になったというのだ。しかもアキラはまだ赤ん坊。ダイゴたちは早速捜索に出る。

 ダイゴとクリントは、近くの池に放置されているアキラを見つける。アキラはクリントと戯れて大喜び。そこに謎のメカウルフの一団が襲いかかるが、クリントの敵ではない。だが、クリントは逃げるメカウルフを追ってヴィクトールタウンの方へ行ってしまった。ダイゴの制止も聞き入れない。実はメカウルフの目にはエリアスによって好戦的な行動を刺激する超音波が仕組まれていたのだ。

 ダイゴは仲間の制止を振り切り、クリントを取り戻しにゴーディアンでタウンに向かう。バリーはこれが罠かもしれないと思いつつも、陸艇部隊での援護を命ずる。

 ヴィクトールタウンに入ったクリントはバラスの作った箱状の罠に繋がれ、電流を流される。気を失ったクリントはマドクター本部の地下へ閉じ込められた。

 ヴィクトールタウンに到着したバリーたちは、メカコン本部がマドクターに占拠されているのを見て歯噛みする。これではうかつに手が出せない。一方ゴーディアンは、偽のクリントで油断させられ、やはりバラスの作った罠に閉じ込められる。電撃をかけられて気を失ったゴーディアンは十字架に貼り付けにされ、ビーム砲の集中攻撃を受ける。ゴーディアンの体が徐々に溶け出し苦しむのを見て、エリアスは闘獣士シェフラーで止めを刺そうとする。「クリントーッ!」と叫ぶダイゴ。

 ダイゴのピンチを察知し、何とか地下から脱出しようと暴れるクリント。その体当たりで地下の扉の配線が露出し、クリントは配線を断線させて見事脱出する。クリントはそのまま基地を破壊してビーム砲を止め、外に飛び出してシェフラーの利き腕を切り落とす大活躍。シェフラーはクリントを襲おうとするが、ゴーディアンは十字架から脱出し、止めの白光剣でシェフラーは倒される。クリントとの固い絆を確かめるダイゴだった。

「クリント、死ぬも生きるも、お前と一緒だぜ!」


解 説


 冒頭、伊武雅之のナレーションに合わせて東西南北のマドック四将軍が映るが、今回は東-金髪長髪、西-短髪巻き毛、南-禿頭長髪、北-丸顔短髪という順番。前回とは南しか合っていない。やはりこれが正解なのだろうか。と思いながら見ていたらついに絶対的な判別ポイントを発見。前回は見えなかった服のホルスターが東西南北に付いているのだ。というわけで、私の文章では以後32話を基準に紹介したい。

 毒魔大帝統の「サントーレ攻略は長期戦と心得よ」という台詞、4クールに延びた結果だと思うとメタ的なものも感じる。

 エリアスが水晶玉のスクリーンに映し出すのは10話のサリュー戦。

 サオリとバリーの関係が着々と進む。どうやらサオリにも青春の楽しみが来たようだ。サオリをからかうダイゴを見て目を細めて笑うように見えるクリントもいい感じ。

 アキラの捜索、二股の道でダイゴとクリントが分かれるシーンがあるのだが、結局何事もなく合流。あれは何だったのか。

 『ジ・アニメ』Vol.12(1980年11月号)に掲載された「サントーレ一帯地形図」によると、サントーレの西と北に湖があり、北西にジャングルがある。今回出てきた湖がどちらかは分からないが、形状から西の湖に見える。


こぼれ話


 偽クリントが背中から発射する銛ミサイル、ポピーが発売した「超合金クリント」では背中からミサイルが出るギミックが仕掛けられていた。


 闘獣士「シェフラー」という名前は「シェリフ」と「シェフ」のダブルミーニングだろうか。それならば得物が牛刀のような剣なのも納得である。


 この回はKKベストセラーズ『語れ!タツノコ』の「俺の好きなタツノコアニメ総選挙」に『闘士ゴーディアン』から唯一ランクインしている。全体で見ても、ゴーディアンがトップクラスの窮地に陥った話だと思う。


 当時グリーン・ボックス所属だった渡部英雄はこれが演出デビュー作。ゴーディアンの製作を最前線で支えることとなる。後年は世良邦男名義でも活躍。現在は大学講師等でアニメ製作を後進に指導している。


 『冒険王』80年6月号掲載のコミカライズ第8話は桜多吾作のオリジナル。本編のピーチィの幼なじみポール、ダイゴの正体ばれ、イクストロンの発見からモチーフを得ているように見える。

 ピーチィの幼なじみの青年、ナルモがヴィクトールシティ(初期設定の表記)へやってきた。実はバリーからの依頼で、ダイゴがゴーディアンではないかと調査しに来たのだ。西部方面の野戦司令官として活躍し、兄のように慕っていたナルモにピーチィはメロメロ。ふてくされるダイゴを慰めようとするロゼを見て、ダルフは「スペアがいたのか」と突っ込む。

 マドクターの襲撃でサントーレに戻ったダイゴは、待ち伏せていたナルモに出会う。ついに正体がばれたのだと悟ったダイゴだが、かまわず出撃する。だが、エリアスは対ゴーディアン用の新兵器、半生命体金属のエネルギーを吸い取るロープ状生命体を放つ。ゴーディアンの危機を救ったのは、ナルモたちの空への攻撃だった。攻撃で雨が降り出し、ショートした生命体を引きちぎるゴーディアン。ナルモはダイゴに単独行動では勝利できない戦いもあることを身をもって教えたのだ。

 ナルモはバリーたちにダイゴの身辺警備と軽率な行動の監視、そしてダイゴに「ピーチィをたいせつにしろよ」と言い残して去っていった。

 ピーチィがワンピース姿など、ヒロインらしく描かれている。

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