1-29.29話「十字架を背負った少女」

 『アニメージュ』vol.23(80年5月号)の放送予定欄で山本優は「章題をつければこの期間は『サントーレの人々』ということになるでしょうね」と書いている。これから数回にわたってこれまでのゲストキャラとダイゴの触れ合いが綴られていく。

 それではシナリオを参考に見ていこう。


29話「十字架を背負った少女」 1980年4月20日


 脚本     :曽田博久

 演出     :小浦英年

 作画監督   :松井栄


あらすじ


 アンノンジーはメカコン隊員たちを前に新しく「サントーレ隊」を発足させると宣言した。隊長をバリーに任命し、自分は引退するというのだ。市民たちも部屋割りを決められ、それぞれの部署に配属が決まっていった。

 その一角でもめ事が起きている。割って入ったダイゴは驚いた。元青シャツ党員のアニタが、相部屋の女性に責められていたのだ。弟が青シャツ党の反乱に参加して死亡したという女性は、ダイゴの仲裁に耳も貸さない。部屋割りを決めたサオリも落ち込むが、バリーに「あなたの役目はここにいる人たちが安らかに過ごせる砦を作ることではないでしょうか」と励まされる。

 居場所のないアニタを心配したダイゴは、ドブロフの医療室、調理室など様々な部署に当たってみるが、市民の反感は根強く断られてしまう。そんな二人を物陰からそっと見守っているポールの姿があった。

 その時、ピーチィーが悲報を持ってやってきた。生き残りの隊員から、ダルフとキャシーの乗ったホバーが吹き飛ばされるのを見たと聞いたのだ。ダルフのために相部屋のベットを空けて待っていたダイゴは呆然。その隙に、アニタは一人で武器庫に入り、電子ライフルを持ち出してどこかへ向かおうとする。たまらずポールはアニタを引き留めるがアニタの決意は固く、ポールは手投げ弾をアニタに渡して送り出すしかなかった。

 アニタがサントーレを抜け出し、ヴィクトールタウン方面に向かったと知ったバリーは、ダイゴに捜索に行くよう命じる。だが、ポールはアニタをこのまま行かせて欲しいと懇願する。かつてマドクターのスパイだったポールは、アニタと同じくタウンの人々に対して罪の十字架を背負っていた。ポールの訴えは見守る市民たちに沈黙をもたらす。そこでバリーの言葉を思い出したサオリが「この砦はどんな罪深い心も孤独な魂も見捨てないことを身をもって示すべきだと思います」と発言し、我が意を得たダイゴはゴーディアンで飛び出していった。

 一方マドクターは、タウンを要塞化し、北のホクマドック、東のドンマドック、南のナンマドック、西のサイマドックの四将軍に入口を守らせていた。タウンに近づいたアニタは、監視兵に足を撃たれてしまうが、気力を振り絞って砂漠の下の穴から地下通路に入り込む。

 地下通路を進むアニタの前に、突然マドクター兵に追われるダルフとキャシーが現れた。二人はホバーが吹き飛ばされた時に、近くにあった地下通路の穴に落ちたのだ。アニタはこの通路が青シャツ党の作った物だと説明し、二人に逃げるよう急かすが、負傷したアニタを見捨てておけない二人は、ポールの渡した手投げ弾を爆発させてマドクター兵を倒し、アニタを連れて脱出する。

 地下の爆発で毒魔殿を傷つけられたことに怒った大帝統は、三体一組の闘獣士サンジューシンを出動させる。地下通路を抜け出した三人はマドクター兵に囲まれるが、間一髪ゴーディアンが到着。ゴーディアンからダイゴの声がするのにダルフは驚く。ゴーディアンはサンジューシン相手にグレイシアクラッシュをお見舞いするが、相手も同じ技で対抗。ダイゴは空からプロテッサーのゴーディアンボムでサンジューシンを攻撃した後、結局仕切り直して必殺連動剣で倒す。

 サントーレに戻ったアニタは、相部屋の少女の輸血で回復し和解する。メカコンの女子部隊に無事配属も決まった。今回の事件でサントーレの結束は益々深まったのだ。


解 説


 シナリオのタイトルは「十字架を背負う女」。

 『アニメージュ』vol.23(80年5月号)では、この話の作画監督と演出は「未定」。27話を担当したばかりの二人に結局お鉢が回ってきた訳だ。前回よりは作画は安定している。

 バリーのサオリへの台詞、シナリオでは「あなたの務めはそんな人たちを優しく包み込む砦をつくることではないのでしょうか」と少し違っている。

 アニタに爆弾を渡すポール、シナリオでは前回の出撃時の残りだという説明があったがカット。この後、皆に語りかけるポールのシーン、シナリオでは「死ななければ逃げられないどうしようもない苦しみってもんだってあるんじゃないか」と、アニタが特攻しようとするのにシンパシーを感じている内容になっている。本編でこの下りがカットされているのは演出の判断だろうか。

 今回四将軍の顔と名前が紹介されるが、東のドンマドックの顔、前シナリオでは「西の将軍」となっていた人物。早くも混乱が生じている。今回の紹介では北のホクマドックは金髪長髪、東のドンマドックは短髪巻き毛、南のナンマドックは禿頭長髪、西のサイマドックは丸顔短髪。シナリオでは容姿の描写はない。

 アニタの足のケガ、本編ではマドクターの監視兵に撃たれたが、シナリオでは毒蛇にかまれていて、監視兵は毒蛇を撃っている。

 サンジューシン戦、グレイシアクラッシュが三体縦につながってスピンしたり、飛んでるガービンにデリンガーが跨がり、デリンガーの肩にプロテッサーが座るという見たこともない光景が続々。但し全部シナリオにあるシーンである。サンジューシンの武器はシナリオでは長槍。本編ではトゲ付き棍棒になっている。

 今回の必殺連動剣、本編ではデリンガーが緑光剣、プロテッサーが白光剣を持っているが、シナリオではいつも通り。その後の仕切り直し連動剣でも、本編ではデリンガーが緑光剣、プロテッサーが赤光剣を持って攻撃している。しかしデリンガーの攻撃シーンには以前の赤光剣のヒート化バンクを使用。倒した後のカットではプロテッサーとデリンガーが緑光剣を両方持っているあり得ない光景が。おそらくバンクと混じったせいだろう。

 本編ラスト、ナレーションでは「毒魔殿の一部を破壊した」と言っているが、本編では地下が崩れた描写しかないので分かりずらい。シナリオでは毒魔殿の外側の装飾像が壊れる描写があり、ナレーションも「毒魔殿の小さな飾りつけを爆破した」と具体的に述べている。

 今回ようやくダルフとキャシーが生還し、サントーレの陣容はひとまず固まる。


 今回の名言 


吹き付ける砂嵐までがアニタをいたぶる。(シナリオト書き)

廃墟の中にそびえる悪魔の象徴毒魔殿。(シナリオト書き)


「あったり前じゃい、わしゃ酔っ払っていても美人だけは殺したことがないんじゃい」(ドブロフ)

「私たちは同じ血の流れる姉妹なのね」(アニタ)輸血してくれた少女に。シナリオのみ


こぼれ話


 マドクターの東西南北四将軍(私は「4マドック」と呼んでいた)は、これまでキャラ設定が公式に出ているのを見たことがない。本編では何度も名前を間違われたり、キャラの取り違えが起こったりというぞんざいな扱いを受け、個性付けもほとんど行われていない。このあたりの掘り下げもあればもっと印象に残るキャラクターになったと思うので残念だ。

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