1-30.30話「プロジェクトXの秘密」

 『アニメージュ』vol.23(80年5月号)の放送予定欄で山本優は今回を「いわゆるシリーズ全体を通じての争奪戦のかなめとなる謎の"プロジェクト"にマドクター側が一歩せまることになります」と紹介している。脚本はもちろん科学設定担当の松崎健一。

 それではシナリオを参考に見ていこう。


30話「プロジェクトXの秘密」 1980年4月27日


 脚本     :松崎健一

 演出     :紀 裕行(テロップでは「紀 行」と誤植)

『アニメージュ』vol.23(80年5月号)では「古川順康」

 作画監督   :田辺由憲


あらすじ


 サントーレではロゼが保育室で母を恋しがって泣く子供たちに手を焼いていた。チョコマも孤児たちにかつての自分を見て落ち込んでいる。市民の士気が落ち込んでいることを感じていたバリーとアンノンジーの所にレッド・ノーズがやってきた。「インディアンこういうとき戦いの踊りする」との提案に乗ったアンノンジーは、パーティーを企画して皆を盛り上げることにする。

 一方ヴィクトールタウンでは、エリアスがプロジェクトXの謎に迫るため当たりを付けた地点を掘削していたところ、ボーリング機が突如謎の光を掘り当てた。光はエネルギーとなって測定機器を暴発させる。次々と倒れる技術員たち。部下の体当たりで辛くも難を逃れたエリアスは、ついにプロジェクトXの謎につながる手がかりを得たと興奮する。

 その頃サントーレでも、地下の異変を京太郎が感じ取っていた。京太郎はマドクターの動きを阻むためサオリとダイゴを呼び出し、地下にあるのが「救出計画プロジェクトXになくてはならぬイクストロン」という物質だと説明する。以前地下で見た物質だと思い当たるダイゴ。一人で飛び出そうとするが、話を入口で聞いていたバリーが止める。ブラスター・バックの部隊で陽動をかけ、ダイゴを援護する作戦で行こうと提案し、ダイゴも従う。

 陽動作戦にはバックの他にロゼとチョコマも同行した。二人はパトロールのマドクター兵を引き留め、隙を突いて縛り上げたところをバックと部下がマドクター兵にすり替わって侵入する作戦だ。門の合い言葉も無事入手し潜入は成功した。時間を見計らってバリーたちの陽動部隊が出撃。ダイゴは出番が来るまでゴーディアンで待機である。突然タウン内で爆発が起こり、メカコンが奇襲してきたため、バラスは闘獣士ドリゲラン(シナリオより)を出撃。押されるバリーたちの所にゴーディアンが到着する。

 ゴーディアンはフットミサイルや鉄拳でドリゲランを攻撃するが効かず、肩口に噛みつかれる。取り出したデュークスクリューを持っていられず取り落とすゴーディアン。

 その間にバックたちはエリアスの作業する地下通路に突入し、エリアスの前に時限爆弾を投げると「ちょっとの振動でも爆発する」と脅す。驚いたエリアスは逃げだし、爆発で発掘現場は閉ざされた。

 ドリゲランに押されていたゴーディアンも、必死に取り落としたデュークスクリューを掴むとドリゲランの頭部を切断し、必殺白光剣で真っ二つにする。そこへ仕事を終えたバックたちが無事到着しゴーディアンを見上げる。作戦は見事成功したのだ。

 毒魔大帝統は逃げたエリアスを叱責するが、マドクター側はプロジェクトXの謎の手がかりを掴むことが出来た。吠える毒魔大帝統。

「見ておれよ、憎っくきゴーディアン!」

『ヴィクトールタウンの下で、イクストロンは光りうごめく。果たして、人類救出計画プロジェクトXとは一体何なのか。また、ダイゴたちはマドクターの侵略を本当に防げるのか。謎を含んで、イクストロンは不気味に光る。』(伊武雅之)


解 説


 前回の予告だと、サントーレに皆が来てから一週間しか経っていないとのこと。ちょっと時間経過が短すぎる気もするが。

 毒魔殿、エリアスが「あのタランドラが破壊される寸前に送ってきた映像」と言っているが、シナリオに抜粋している19話の回想シーンだと、タランドラとゴーディアンの戦闘は地下通路のさらに下部で行われ、20話冒頭の壁の切れ目から覗く謎の発光物質とゴーディアンが感応するシーンが入るはずだったことが分かる。本編では地上で戦うタランドラとゴーディアンの映像になっているので、非常に分かりづらい。19話のシナリオが手元にないので詳細は不明。

 シナリオはサントーレの孤児たちから始まっており、毒魔殿から始まる本編とはかなり構成が変わっている。孤児の女の子の名前は春香、泣き出す男の子はタケ。モデルがいるのか気になる。孤児たちを見てゲンじいさんをおもいだすダイゴのシーンがシナリオにあるが本編ではカット。シナリオでは「源じい」と書いてあるのが気になる。これまで見た脚本では全部「ゲン」表記だったのだが、日本人なのだろうか。

 レッド・ノーズ登場時の笑いをわかりやすくするために、本編では中国服を着せている。バリーが「アワワワワワ」とインディアンの雄叫びをしたり、パーティーのシーンで「キモサベ」と返すのはシナリオにはない。お茶目なバリーという珍しい姿が見られる。

 エリアスの部下の技術班について、(少しくらいは服装が違うんでしょう)と期待を込めて書いた松崎健一の願いもむなしく、本編ではいつものマドクター兵だった。彼らが体を張ってエリアスを庇うのには上司と部下以上の絆を感じる。

 ビーコンに呼ばれてパーティーを抜け出すダイゴ、パーティーを楽しむロゼとチョコマをあえて呼ばずにサオリと対話室へ向かうシーンがあるが本編ではカット。落ち込む二人を気遣うダイゴといういいシーンだったので使って欲しかった。シナリオではこの出ていくダイゴをバリーが見ており、対話室での待ち伏せシーンに繋がる。

 20話シナリオで山本優が使った「ファザコン」を松崎健一も踏襲。今回の父の声は恐らく北村弘一。例によって台詞が聞き取りにくい。「救出計画プロジェクトX」という台詞、シナリオでは「人類救出計画プロジェクトX」だった。

 CM前の出撃シーン、ヴィクトールタウンの遠景や手を挙げるバック、夕日に照らされるゴーディアンの顔はシナリオに指定がないので、絵コンテ以降の追加と思われる。雰囲気の盛り上げに一役買っていると思う。

 バリーたちの援護出撃シーン、シナリオでは「ちぇっ俺の出番はまだかよ」と待ちくたびれているダイゴだが、本編では「大げさだな、俺一人でいいのに」と余裕。この他にも今回の本編は門番通過後マッチでたばこに火をつけるバック等、シナリオより細かい演出を増やしているシーンが多い。

 闘獣士、本編で名前は出てこないが、シナリオでは「連射砲と厚い装甲で覆われたサイのような闘獣士、ドリゲラン」と表記。ドリゲランの吐く炎をゴーディアンが手で遮ってバリーを庇うシーンは本編のみ。

 ドリゲラン戦、本編ではフットミサイルだがシナリオではシャインシェルドで突進するドリゲランを受け止め頭に鉄拳、デューク・スクリュー後必殺白光剣という流れ。

 ラストのエリアスと毒魔大帝統の対話シーンはシナリオにはなし。その代わり、門番に爆弾を渡して帰るバックたちのシーンがカットされている(今回の名言参照)。

 ラストのナレーションでプロジェクトXが人類救出計画であることがさりげなく明かされる。「また、」以降の後半部分はシナリオにはないので、絵コンテ以降の追加と思われる。


 今回の名言


 「あーあ俺の出番、ここまでなんだよね」(ダイゴ)シナリオのみ。闘獣士戦を終えて。


 「日暮れてあたりはまっくろけ」(バック)シナリオのみ。門番に爆弾を手渡しながら。


こぼれ話


 今回の作画監督、田辺由憲はグリーンボックスに所属しており、金田伊功とも親しかったとのこと。作画にもその影響が感じられる。2013年逝去。後半の45話でも頭一つ抜けた作画で楽しませてくれる。ロゼに抱かれて泣き出したり乳を探したりする赤ちゃんが私のお気に入り。


 『ジ・アニメ』Vol.6(1980年5月号)では、落合正宗監督が放送予定欄で今回の裏話を語っている。多勢の人が一緒に動くために作画が大変で、特に踊りのシーンはしんどかったとのこと。

 また、『アニメージュ』vol.23(29話「十字架を背負った少女」参照)で山本優が語っているように、落合正宗も見所として「一定期間一定の空間に置かれることで、それぞれの人間性みたいなものが吹き出してくる」「彼らがどんな考え方で生きてきて、どう生きようとしているのか……ぜひご覧下さい」と人間模様へ注目するよう語っている。


 『ジ・アニメ』Vol.6(1980年5月号) 紙面ではモノクロ特集も4ページ組まれている。一部の内容は『アニメージュ』vol.23(80年5月号)と重複するが、今後の決意表明として山本優が語る内容は覚えておきたい。

 『「個人」から「地域社会」へ、そして「広域世界」へ、さらに「宇宙」へ、最後に「X」までとのぼりつめて作品テーマを明確に仕上げてみたいというのが、ゴーディアンを支えていく底流となります。どこまで描ききれるかは、ぼくたちスタッフ全体の力の総結果にかかってくるわけで、恥かしくならないように頑張ってみるつもりです』

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