1-22.22話「ビクトールタウンの反乱」

 『ジ・アニメ』Vol.6(1980年5月号)の特集記事で山本優は、「ジワジワと迫ってくるダイゴの仕組まれた運命が、のがれられないレール上を走り出すのが22話から始まる『Vタウン戦争』で、これを折り返し点に状況はシビアな度を強めていくことになります」と語っている。

 今回はシナリオ・録音台本共に手元にあるので比較しながら紹介したい。


22話「ビクトールタウンの反乱」 1980年3月2日


 脚本     :曽田博久

 演出     :古川順康

 作画監督   :杜福安


あらすじ


 パワーアップしたゴーディアンを前に引き下がってきたバルバダスたちを叱責するバラス。それを見た毒魔大帝統は黙示録205ページ第三章にある内乱作戦を指示する。

 折しもヴィクトールタウンでは、各地のタウンを壊滅させてきた「青シャツ党」が第13ブロックに潜入していた。首領ゲバリスタを倒すため、メカコンが送り込んでいたダルフとピーチィが通信の傍受に成功したが、党員のアニタに見つかってしまう。そこに二人を助けに来たダイゴが割って入った。アニタを人質に取られて党員たちは手出しが出来ない。

 ダイゴは現れたゲバリスタにアニタを楯に真相を話すよう迫る。実はアニタはゲバリスタの妹だった。ダイゴは本拠地に入るが、ゲバリスタは人質のアニタもろともダイゴを落とし穴に落とす。だがダイゴは咄嗟に電子ロープでゲバリスタを掴み、道連れにする。

 落とし穴の下は地下水道に続いていた。ダイゴはゲバリスタたちがヴィクトールタウン建設のために追い出され、両親を殺されたことを恨んで青シャツ党を組織したのだと知る。そこに突然、ドリルメカが現れた。衝撃で地下水道に落とされるダイゴ。メカから現れたのは武器商人シャイロックだった。

 地下水道から脱出したダイゴはサントーレに戻り、対話室で京太郎と長話をした後、また飛び出していった。

 戻ったタウンでは、ゲバリスタの先導による蜂起が始まっていた。報酬の金塊を取ろうと覆いを開けたシャイロックは、隠れていたクリントとダイゴに鉢合わせする。ダイゴはゲバリスタの両親が殺されたのはマドクターの仕業だと語り、シャイロックに電子ロープを浴びせる。マントの下から現れたのはマドクター兵だった。自分が騙されていたと知ったゲバリスタたちは愕然とする。しかし瀕死のシャイロックの一撃がゲバリスタを貫く。ゲバリスタはアニタにダイゴに付いていくよう言い残し、絶命する。

 そこにバルバダス率いる闘獣士マドクス第二号、サタンマウサーが現れた。ダイゴもゴーディアンで出撃する。サタンマウサーの吐く灰状の武器に苦しめられるが、水路に落ちたお陰で溶け、デリンガーの赤光剣セキコウケンでサタンマウサーの首をはねる。切り口から吹き出した灰が自分に降りかかったサタンマウサーは自爆するが、マドクターは第13地区の人々を人質に取り、占拠してしまった。ついにヴィクトールタウン内部へマドクターが足がかりを掴んだのだ。


解 説


 シナリオタイトルは「Vタウンの反乱」。録音台本タイトルは「ヴィクトールタウンの反乱」。

 毒魔黙示録の読み方、ずっと「もくじろく」だったのが「もくしろく」と正しく読まれるようになる。

 今回初めて本編でヴィクトールタウンの地区割りが示されるが、2区がなかったり、 複数ブロックのある区があったりと、非常に分かりづらい。シナリオでは「添付図参照」と書かれているが、その図は入手できなかった。

 シナリオでは盗聴にダイゴも参加する予定で、「探せど隊にはおらん。だいたいチョロチョロとどこへ!」とバリーに怒鳴られるダイゴのシーンがあったがカット。

 盗聴するダルフたち、シナリオでは変装しているが本編では制服のまま。また、アニタが30人殺したと言っているが、シナリオではこれがメカコンの潜入員だったと分かる台詞がある。この台詞がない本編では不自然。

 武器商人の名前はシナリオにはなく、録音台本でシャイロックと表記。声は恐らく増岡宏。

 ゲバリスタの声は若本規夫(当時は若本紀昭名義)らしいが、テロップにはなし。アニタの声は今回テロップにはないが小宮和枝。

 かつてないほど電子ロープが活躍する回。ダイゴのナイスガイっぷりも上昇中。

 本編では白猫やネズミが演出として使われているが、シナリオでの指示はないので、絵コンテ以降の追加と思われる。

 サントーレに一度戻ったダイゴはゴーディアンでヴィクトールタウンに戻っているが、本編では表記なし。対話室での対話も本編ではカットされているが、「今回の名言」に書いたとおり、かなり核心に迫ることを言っている。

 シナリオではゲバリスタはシャイロックがマドクターだと分かって必要悪で手を組んだと語っている。ゲバリスタを撃ったのは武器を運んでいたマドクター将校たち。

 サタンマウサーの武器はシナリオでは榴弾ミサイルだが、録音台本では灰。この灰を吹き付けられ、パルストーム(恐らく)で苦しむダイゴは本編のみ。サタンマウサーへの止めはシナリオではアバランチアタック。この時、ゴーディアンが倒れたところにビルの破片が雪崩れ落ち、21話の特訓を思い出すようになっていた。本編ではデリンガーの「必殺赤光しゃっこう剣」初披露。ただし、安原義人は「セキコウケン」と発音している。録音台本にルビがなかったせいだろう。ここでようやく剣の形状が超合金と同じになる。


今回の名言


「バラスよ、お前ほどの男でもプロジェクトXの手懸りを目の前にすると平静心を失すと見えるな」(毒魔大帝統)

「ヴィクトールタウンには、第二のパニックから地球を守る大切なものが隠してある。ダイゴ!命にかけてもヴィクトール・タウンを守ってくれ」(京太郎の声)シナリオのみ


こぼれ話


 反乱が起こったタウン、録音台本では「オチアイ・タウン」「サトウ・タウン」「ユイタウン」と記されている。「オチアイ」は落合正宗、「ユイ」は由井正俊が元ネタだと思うが、「サトウ」にも元ネタがあるのだろうか。スタッフには特殊効果の「佐藤武」くらいしかいない。


 「ゲバリスタ」とは、チェ・ゲバラの信奉者を主に指す言葉である。人名としてはふさわしくないと思われたのか、イタリアでの放送時には「マッシミリアーノ」となった。


 今回のシナリオの曽田博久は学生運動経験者、ゲバリスタの声が若本規夫だとしたら機動隊出身。どういう気持ちでこの話に関わっていたか想像すると興味深い。


 『冒険王』80年4月号巻頭では『新発売!』と銘打ち、「DX超合金ゴーディアン」「巨大ロボット工場ゴーディアン」「ミニ超合金ゴーディアン」の懸賞あり。「巨大ロボット工場ゴーディアン」とは、ジャンボマシンダーの発展系で、分解遊びができるというもの。ガービンのみだが、胸の部分にダイゴの消しゴムが入るスペースがある。「ミニ超合金ゴーディアン」は、同サイズのプロテッサー・デリンガー、ガービンの超合金である。


 この号掲載の桜多吾作コミカライズ6話は、「ビクトールタウンの反乱」を下敷きにした半オリジナル。ゲバリスタ・アニタの兄妹に代わり、「ゲバリスタのお京」という女ゲリラが登場する。お京は部下たちの正体がマドクターであり、自分は操られていたことに気づくと、部下を殺して立ち去る。

 『そしてその後、ゲバリスタのお京のうわさを聞いた者はいない……』

 コミカライズでは盗聴に潜入するのはダイゴとピーチィ。シナリオ通り変装して潜入している。ダイゴが合い言葉を聞かれ、「自由と正義の旗の下に」と答え、「メカコンの隊規だ」と見破られるシーンがある。この台詞はおそらくアニメ24話タイトルから。

 ゴーディアンが全く登場しない異色回。この後数回は、桜多吾作のオリジナルが続く。

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