1-14.14話「燃える巨星の謎」

 今回は1話からずっと背景に描かれていた大きな月の正体、そしてダイゴを取り巻く新たな秘密が判明する。シナリオはゴーディアンの科学設定担当、松崎健一。この後も定期的に入る解説回の始まりである。シナリオを参考に見ていこう。


14話「燃える巨星の謎」 1980年1月6日


 脚本     :松崎健一

 演出     :古川順康(エンドテロップでは「演出」の文字抜け)

 作画監督   :なかむら たかし


あらすじ


 マドクターはヴィクトールタウンの設計者、カドクラ(門倉)博士を生かして連れてこいとの毒魔大帝統の命により、カドクラ博士の家を襲う。しかし、カドクラの家には戦車のような砲塔が隠されており、必死に抵抗する。

 そのころ、ダルフとパトロールに出ていたダイゴは、胸のペンダントの信号をキャッチ、ホバーの修理をするという理由で離脱する。ダイゴがゴーディアンで駆けつけた時には家は壊されており、あたりにはマドクターホバーの残骸が。しかし、カドクラ博士は生き残っていた。ダイゴが大滝博士の子供だということが分かると、地下に隠してあったライブラリに案内する。そこでダイゴはかつてこの世界に起こった「大異変」と、復興後のヴィクトールタウンの建設、そしてダイゴに大滝博士が何かを施したことを知る。しかし父のコンピューターがダイゴに何も伝えてないことを知ると、カドクラも真実を話そうとしない。

 そこに鳥形マドピューター、デスバードに追いかけられるロゼが。ダイゴはゴーディアンでデスバードを迎え撃つ。「翼が弱点だ」というカドクラ博士の助言に従い、ゴーディアンはデスバードの翼を攻撃するが、足を嘴に挟まれ、鞭状の尻尾に肩を貫かれる。それでも尻尾を掴んで引き抜き、逆にデスバードに絡めて地面に突き刺す。その戦いの間に、マドクター隊員たちがライブラリに侵入、逃げようとしたカドクラは撃たれるが、自爆装置を起動させてライブラリごとマドクターたちを倒す。

 戦いに勝利したダイゴだが、自分の秘密に対する疑問はますます深まるばかり。ロゼの知らせで駆けつけたバリーは、ダイゴがいることに複雑な表情をするが、あえて何も言わなかった。ダイゴはロゼに「黙ってろ」と言うと、カドクラ博士の遺したパイプを握りしめた。


解 説


 シナリオ原題は「燃える巨星」。

 タイトルカットは本編のソコネス。

 カドクラ博士の声は恐らく増岡宏。パイプという小道具はシナリオにはなかった。回想の大滝博士の声は恐らく北村弘一。

 シナリオでは冒頭、ロゼとチョコマがマドクターの動きを追っているシーンがあるがカット。その後のダイゴの離脱理由は本編の方がスマート。シナリオでは「ちょっと用事で」とごまかしていた。

 本編ではマドピューターとの戦闘が終わった後に駆けつけるゴーディアンだが、シナリオではマドピューターとも戦闘している。

 シナリオではAパートはダイゴに銃を向けるカドクラ博士まで。

 本編ではライブラリから直接映像を送られるダイゴだが、シナリオでは普通にモニターを鑑賞している。その後、カドクラ博士に銃口を向けて真実を話すよう詰め寄るダイゴだが、シナリオでは「大滝博士と話してみる」というカドクラの申し出をダイゴも了解して友好的に話が進んでいた。

 今回はマドクターの前線に指揮官がおらず、兵士たちが指令を受けて戦闘するという珍しい回。デスバードの発進も誰が行ったのか不明。シナリオではバルバダスが司令船で来ていた。毒魔大帝統がカドクラ博士の居所を知ったのは黙示録に書いてあったのだろうか。

 鳥形マドピューター(シナリオより)、デスバードはシナリオにも本編にも名前なし。名前は「スーパーロボットマテリアル」から。戦闘もシナリオでは射出したデリンガーのヌンチャクを使うなどかなり違っている。なお、シナリオではデリンガーをデリンジャーと初期設定の表記で書いている。

 自爆装置のボタン、スペルが「DENGER」(正しくはDANGER)と盛大にミスっている。

 ラスト、カドクラ博士のパイプをクリントが拾いダイゴに渡すシーンは絵コンテ以降の追加だと思われるが、余韻の残るEDにしている。今回は序盤のホバーに曲乗りするダイゴや、銃をホルスターにしまおうとして落としてしまい足で蹴り上げてホルスターにしまうシーン等、細かい動きが絵コンテ以降に追加されており、ダイゴの魅力を高めている。

 この回はゴーディアンの背景設定である「大異変」の詳細が明かされる重要回。1980年代に超重力を持つ星ソコネスと惑星ウカペ及びスカルプ、小惑星群の襲来により地球は壊滅し、ウカペが地球引力に捕まって取り残されたことが説明される。なかむらたかしによって執拗に描かれる「大異変」の光景は終末ブームとも通じるものがある。このシーンは後半までバンクとして何度も使われ、視聴者にインパクトを残した。現在のダイゴの年齢を考えると、ゴーディアンの時代設定は2000年代初頭と思われる。

 また、大滝博士とカドクラ博士の会話には、プロジェクトXに関する重要なヒントが隠されている。ウカペを見つめる大滝博士の「第二の破局は乗り切れん。人類そのものが生まれ変わらねば」という台詞は、ダイゴと同じように人類がさらなる試練に備えて適応するための実験を大滝博士が考えていたことを示唆している。なお、シナリオではこの会話に続けてマドクターの襲撃が起こっており、「砦の建設も急がんとな!」と大滝博士が言っている。マドクターの存在やサントーレの構想も既にあったことが分かるシーンで、カットしたのはもったいない。


こぼれ話


 ソコネス・ウカペ・スカルプの名前には元ネタがあるのかと思って調べたが、よく分からなかった。スカルプは英語では「頭皮」だが、惑星の名前につけるものだろうか。

 ソコネスの解説、シナリオには「弱いX線を放つ縮潰星」と書かれているが、「縮潰星」とはジョー・ホールドマン「終わりなき戦い」というSFに出てくる翻訳で、ブラックホールのような超重力状態になっている星のことらしい。

 ちなみに、『アニメージュ』vol.23(80年5月号)内の脚本家インタビューで松崎健一は「嘘は嘘なりに辻褄があってなくっちゃね」「とにかく、あたりまえに終わりたくないと思っています。乞うご期待」と抱負を述べている。


 『アニメージュ』vol.20(80年2月号)のプロデューサー・インタビューでは、宮田知行が今年から新プロデューサーになったことを報告し、「シー調なダイゴが、周囲とのさまざまなかかわりにより、ハードになっていくかれの生きざまをあざやかに描きたいですね」と抱負を述べている。OP等に反映されるのはしばらく先の話である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る