今夜、夢で逢いましょう

隅田 天美

第1話 私は、その人を「先生」と呼ぶ

 私は教師という連中を信じてはいない。

 言葉上は「先生」と呼ぶが、内心では反吐が出る。

 ドラマの教師を理想として自分の価値観などを押し付ける現実と夢を区別できない馬鹿な大人だと思っている。

 ただ、一人(二人?)だけ、私が心から敬愛し信じられる教師がいる。

 私は、その名前すら知らない教師を「先生」と呼んでいる。


 夢の中で、私は学級委員長で学級会をしていた。

 だが、誰一人協力する者はいない。

 みんな好き勝手に話し、遊んでいた。

 私は何とか静かにするように注意するが、無視された。

 それどころか冷やかされる。

 馬鹿にされる。

 私は悲しくなった。

 涙がポロポロ出た。

 すると、横で見守っていた先生が椅子から立ち上がり、私を教壇から降りるように手でジェスチャーをした。

――ああ、また怒られる

 私は暗い気持ちになった。

 だが、その先生はいきなり黒板を叩いた。

 大きな打撃音が教室内に響いた。

 同時に教室が時が止まったように静かになった。

「てめぇら、黙って聞いてれば好き勝手なことばかり言いやがって‼ この子がどれだけ辛い思いをしているか分かるか⁉」

 先生の怒りは収まらない。

「全員立て‼ この子が気持ちが分かるものは座ってよし! 分からない奴らは全員ぶっ飛ばす!」

 それまで騒いでいた生徒たちはお互いに目配せをして青ざめていた。

 その言葉で何故か私は再び涙が溢れた。

――私の気持ちが分かってもらえる

 嬉しかった。

 同時にとても怖かった。

 身の置き場のない私に対して先生は再び、ジェスチャーで教室の端を顎で指した。

『そこに行け』という。

 教室の端には冠婚葬祭でもないのに黒のスーツを着た背の高い口をへの字に結んだ男性が立っていた。

「ついて来い」

 彼は教室を出た。


 その彼こそ、私が敬愛する「先生」だった。

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