真冬の朝の現実
タドコロフ・オマエノコトスキー
野獣と化した先輩
セミが幾多と訪れを呼ぶ夏。肌を焦がす程空は晴れているのに、彼の心は濁っていた。
この世界、どこか遠い場所に神様がいて、自分を見守っているのだとしたら。どうかこの、真夏の夜だけ、愚行を見逃して淫らな夢を見させて欲しい。
田所浩志は、太陽に暑く照らされる頭でそう考えていた。
男二人、昼間の坂道を下る。道中遠野と交わす、実にならない会話がの田所の心を清めた。この時間が永遠に続く。そんな幻想を田所は願わなかった。これからその幻想を自らの手で壊すからである。
「ここ」
田所が指で自身の家を指した。
「はぇ~、すっごい大きい」
遠野はその家の大きさに少し驚いた。こんなに広い家なら、地下室まであるかもしれない。呑気に冗談を頭の中で考えているうちに、遠野にとって部活の先輩に当たる田所は先に家の中に入っていた。
「入って、どうぞ」
「おじゃましまーす」
家の扉が閉じても、遠野は玄関
に立ち尽くしていた。田所の家の大きさに呆然としていたのか。それとも、彼の本能が悲惨な未来を予知し、家の中に入るのを戸惑ったのか。答えは彼の中だけである。
「いいよあがって」
「あっ・・・」
家に上がり、遠野はリビングに案内された。
「こっちも大きいっすね~」
二人はリビングの大きなソファーに座った。その瞬間、二人共肩の力が抜けたように安堵の表情を見せた。疲労がたまっていたからだろう。そして遠野から愚痴にも近い言葉が出た。
「今日は本当疲れましたよー」
「ねー今日練習きつかったねー」
「はい……」
「まぁ大会近いからね、しょうがないね」
「そぅですよね……」
二人の所属している水泳部の大会が迫ってきている。だが、緊張とプレッシャーに加え、増加した練習量。不満が出ない訳がないのだ。
「今日タイムはどう?伸びた?伸びない?……緊張すると力出ないからね」
「そうですよね……」
「ベスト出せるようにね」
「はい」
「頼むよ、うん」
「はい」
先輩としてのアドバイスか、それとも田所個人の気遣いか。遠野からすれば少々鬱陶しくも思えるようなものだったが、無礼な返事はできない。最も、その答えはyesに限られていたが。
「まずウチさぁ、屋上、あんだけど…焼いてかない?」
田所先輩の家には、屋上まであるのか。焼くってことは、多分体に日焼けをつけるってことだろう。それ、脱ぐってことだよな……服を。水泳部とはいえパンツのみになることには抵抗がある。しかもここ、住宅街じゃあないか?
遠野の脳裏に一瞬であらゆる思考が飛び交ったが、先輩の誘いである。断る道はない。
「はぇ~、ああ、いいっすね~」
「人間」に属さない自然の生物とは、常に季節を告げる存在と化しているのだ。セミが夏を告げ、その夏の終わりをつくつくぼうしが告げる。生物はそうして今、夏の全盛期であると言わんばかりに激しい主張をしている。
ミイイイインミンミンミンミンッッッッ!!!!ミイイイイイインッッ!!(迫真)
「見られないすかね…?」
「大丈夫でしょ。まっ多少はね?」
「暑いっすねー」
「暑いねー。オイル塗ろっか?」
「ああ…」
「塗ってやるわ」
田所先輩の言葉にYESとしか答えられないのは、自分が典型的な日本人気質を持っているからか、NOと断れる勇気を持っていないからか。
遠野は自分の体を田所に触られる中で考えた。それとも。
「硬くなってんぜ。溜まってんなぁ、おい」
「そんなことないっすよ…」
脳と体は一心同体である筈だ。ならば、何故僕の体は脳と真反対の反応を起こしているのだろう。
遠野の思いをいざ知らず、田所は陰部を重点的になでている。それに反応し、パンツから遠野の陰部がはみ出てた。それを野獣の眼光が如く、田所が見つめている。
「先輩だめっすよ…」
「どんぐらいやってないの?」
「2ヶ月くらい…」
「2ヶ月…大分溜まってんじゃんそれじゃあ」
遠野の体にオイルを塗り終わり、田所は自身の体にオイルを塗るよう遠野に言った。遠野も先程の報復をするかのように、田所の陰部を中心になで始める。田所はご満悦だ。
「あんまり上手いから気持ちよくなってきたな」
田所も自分の陰部をさわり始めた。
「勃ってきちゃったよ…」
「これ以上やると気持ちよくなっちゃう。もういいよ。ヤバイヤバイ」
それからしばらく体を焼いた。二人とも直前の出来事を思い返し、言葉を交わさない気まずい雰囲気になった。
「喉渇いた…喉渇かない?」
「あー、喉渇きましたね」
「何か飲み物持ってくる。ちょっと待ってて」
「はい」
屋上からリビングへ戻る中、田所が考えずとも感じたのは、緊張と罪悪感が入り交じった、彼の思考と思わしき物だった。
暑さや寒さ、雨風の自然現象から身を守るため。住民の持ち物を収納するため。一家団欒の中心の場所とするため。それらが、「家」の本来の役目だろう。その常識を、自分は今から破る。犯罪の行われた場とするのだ。
しかしその思考は抑止力として働く事はなく、涼風のように流れていった。
夏の証明で騒がしい外とは一転した、静寂の家の中、響くのは田所、彼の心拍音と「用意」の音だけだ。コップを置く音、アイスティーを注ぐ音、その中に「粉」を入れる音。サーッ!
田所は再び遠野と日の前に姿を表した。
「おまたせ!アイスティーしかなかったけどいいかな?」
「あっ!はいはい、いただきまーす」
「どうぞー」
遠野は躊躇なくアイスティーを飲んだ。横目でその姿をしたり顔で見ていた田所は、手探りで遠野の状態を調べる貯めに話続けた。
「焼けたかな?ちょっと……これもうわかんねぇな。お前どう?」
遠野は無言でパンツを上げて見せた。
「すっげえ白くなってる。はっきりわかんだね」
白くなっている部分を指でなぞった。
「この辺がセクシー……エロいッ!」
ふと空を見上げると、先程までの良い天気が嘘であったかのように曇っていた。雨が降るにしても降らないにしても、体を焼くという目的だった為に、やがいに居る必要はなくなったのた。
「曇ってきたな、そろそろ中入るか」
そう言って立ち上がる田所に続き、遠野も立ち上がろうとした。だが、何故か足に力が入らない。夢の世界に居る時のようだとも表現できる。後々の事を考えると、その表現が如何に的確であるかわかるだう。
なんとか立ち上がったが、すぐに倒れこんだが、田所はそれを見据えていたかのように、遠野の体を支えた。
「おっ大丈夫か?大丈夫か?」
「大丈夫です…」
田所の腕の中、安らかな顔ながらも、悲劇的な眠りに陥った。次に目が覚める時は何時なのかわからない。これから、淫夢が始まるからだ。
屋上とは真逆の、日の入り口が遮断された地下室で、遠野は手を縛られて眠っていた。
「ハァ…ハァ…チュパ!チュッ!」
「先輩!?何してんすか!?やめてくださいよ、ほんとに!?」
「暴れんな!暴れんなよ…!」
「田所さん!?ちょっと、まずいですよ!?」
「いいだろ遠野!」
「やめてください・・・」
「な、な、暴れんなって!」
「ちょっ!っと!?」
「な、何してんすか!?ちょっとホントに!?う、うもう」
「遠野、気持ちいいか?気持ちいいだろ?」
「う、うん…」
「お前のことが好きだったんだよ!」
「ん!」
「いいのか~?これ吸ってみな…オォ~、気持ちいい…もっと舌使ってくれよ…気持ちいいよぉ…自分で動かしてぇ…アーそれいいよぉ…気持ちいいかぁ?」
「キモチイイ…」
「気持ちいいかァ?」
「ン、キモチイイ、キモチイイ…」
「気持ちぃぃ…気持ちいいよぉ…」
「気持ちいいよぉ…」
「アン、アン、アーンン(世界の遠野)」
「気持ちいいだろォ、気持ちよくなってきた…遠野!」
「アン!アン!アン!アン…!」
パチッ!一際大きくて汚い音が響いた。
「ああ、気持ちいい…。いいよぉ…ハァ、ハァ…アアッー、アッ、ンアッー、ンッ・・・ォゥ、ォウ、 オォン!アォン! ハァ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ…アアッー!ハァハァ、イキスギィ!イクゥ、イクイクゥ」
「ンアッー!」
とても人間とは思えないあえぎ声だ。まるで野獣の咆哮である。この時、野獣と化した先輩は、人生で一番うんこのように汚く、それでいて輝きを一等星のように放っていた。
「ウン、ウン、
ウン、ウン、フン、ウン、ウン、ウン、ウンッ!ウンッ!ウンッ!ンッ!…」
「イキそ…」
「いいよ、来いよ!胸にかけて!胸に!」
「アッー、胸にかけて、アッー!」
顔にかけた。
「ファッ!?」
二人は幸せなキスをして終了
真冬の朝の現実 タドコロフ・オマエノコトスキー @tadokoro810
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