第234話 白河家のなわとび大作戦
「なずなちゃん、私なわとびを始めてみようと思うわ」
「え……」
休みの朝。
お母さんは私の部屋にやってきて突然そう言った。
どうやらいろんな運動を継続しているらしい。
とても健康的でよいと思う。
しかしだ。
なぜそれを私に伝えに来たのだろうか。
まあ、そんなの決まっているのだが。
「なずなちゃんも一緒にどう?」
「う~ん、別に特別なわとびをやりたい気分ではないかな」
「ひとりでやるの、ちょっと恥ずかしいのよね」
「微妙にわからなくもないけど」
なぜかなわとびってやらなくなるよね。
公園のブランコとかと一緒に卒業しちゃう感じ。
「まあ、そもそもなわとび持ってないけどね」
という根本的にできない理由をのべる。
しかし、そんなことお母さんだってわかりきっている事だ。
「はい、なわとび」
「……」
ですよね~。
出てきますよね~。
「ねえ、いいでしょ~」
「うむむ……」
そうかわいらしくお願いされると、私としても断りづらい。
別に絶対嫌と言うわけでもないし。
私は目の前に迫っているお母さんの胸をチラチラ見ながら、仕方ないなぁという感じを出しながら承諾する。
「行きますか」
「ありがと~!」
ふぅ。
まったくかわいいが過ぎるなこの人は。
とりあえず河川敷の公園へと移動する私たち。
当然柑奈ちゃんも連れてきた。
「なんで私まで」
「まあまあ。家族一緒の方が楽しいよ」
「いつも一緒じゃん」
「まあまあ。私の予想通りなら、きっと来てよかったって思うよ」
「本当かなぁ」
ふふふ、まあ見てなって。
それにしてもひさしぶりだなぁ。
「なわとびなんて小学生以来かな~」
「私は授業でやるから」
「さすが現役女子小学生」
「変な言い方しないで。捕まるよ」
「なんで!?」
こんなことで捕まってたまりますか。
さてさて、どれくらいまだできるだろうか。
まずは軽く二重跳び。
これはまあ、余裕だね。
私もお母さんも柑奈ちゃんも普通に跳んでいる。
そして私の予想通り。
お母さんの胸もバインバインと弾む。
絶景だ。
バインバイン。
そして柑奈ちゃんは。
「……」
うん、まあ、そうだよね。
再びお母さんを見る。
バインバイン。
「……」
柑奈ちゃんから無言の圧を感じる。
言いたいことはわかるような気がしないこともない。
だがしかし。
今は楽しんでほしいものだ。
この弾むメロンをね。
「うがぁああああ!!」
「ちょっと、柑奈ちゃん!?」
突然柑奈ちゃんが私の方へ突っ込んでくる。
そして私の胸を鷲掴みした。
とりあえず速攻で引きはがす。
まったく、危ないことをするものだ。
仕返しに柑奈ちゃんの胸を鷲掴みしておこう。
って、あれ?
掴めないぞ?
仕方ない、撫でておくか。
「姉さん、何してるの?」
「君が私にしたことと同じこと」
「私は撫でてない」
「柑奈ちゃんには鷲掴みできるものがなかったんだ……」
「うがああああ!!」
「落ち着いて柑奈ちゃん!」
きっといつか大きくなるよ。
私は反対だけどね。
それにしても、意外とやってみると楽しいものだ。
バインバインを抜きにしても、やってみて良かったかもしれない。
いったいどこまで私はできるのだろうか。
ツバメ返し。
はやぶさ。
三重跳び
おや、意外とできるぞ!
体力とはまた別のものだと思ってたけど、案外できるものだ。
「え、姉さん、普通にすごいね」
「そうかな、えへへ」
現役でなわとびしている柑奈ちゃんに言われるとなんか嬉しいかも。
「よ~し、たくさん跳んじゃうぞ~」
調子づいた私は二重跳び耐久を始める。
そしてお母さんも同じく二重跳び耐久へ。
運動としては一番バランスがいいんだよね、これ。
そんなわけでしばらくの間、家族3人でなわとびを楽しむ。
たまにはこんな日があってもいいよね。
と、そこに見慣れた方がやってくる。
「ちょっとよろしいですか?」
「はい?」
見ると、いつの間にかめぐりさんが近くに立っていた。
「どうかしましたか?」
「それが、このあたりでストリップショーをしている人たちがいると通報がありまして」
「ストリップショー? こんな時間からこんなところでですか?」
「そうなんですよ。そんなわけないんですけどね」
「変な話ですね。私たちここでなわとびしてましたけど、そんな人たち見かけませんでしたよ?」
「そうですか。ありがとうございます」
まったく、誰がそんな通報をするのやら。
駆り出されるめぐりさんたちのことも考えて欲しいものである。
「そうだ、めぐりさんも私のなわとび技、見ていってくださいよ」
「なわとびなんてなつかしいですね。ぜひ見せてください」
そして私は二重跳びを始め、そこからいろんな技を披露する。
「……」
お母さんも再び二重跳び耐久へ戻る。
バインバイン。
「……」
さすがにちょっと息が切れてきたかも。
「はあはあ……」
「逮捕だ~!!」
「なんで!?」
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