第233話 ミニスカ小路ちゃん

 街中をぶらぶらと歩く私。

 ぼーっとしながらお散歩していると、何もないのにちょっと楽しい気分になったりする。


 これがお日様の効果だったりするのだろうか。

 やはり人間は太陽の下で生きる方が良いのかもしれない。


 そんなことを考えながら歩いていると、私は何かの気配を察知した。

 この感じはまさか……。

 気配のする方へ走ると思った通り。


 そこには小路ちゃんがいた。

 しかもミニスカート姿という、いつも和服の小路ちゃんにしては珍しい服装。


 またお母さんあたりに着せられているのだろうか。

 素敵な光景である。


「小路ちゃ~ん!」

「ひゃっ」


 私は小路ちゃんに気付いてもらおうと、大きく手を振りながら声をかける。

 すると私に気付いた小路ちゃんは、めちゃくちゃ驚いた様子で悲鳴をあげた。


 そして逃走。

 え、なんで?


 そんなにその姿を見られたくなかったのだろうか。

 とりあえず追いかけよう。


 今の小路ちゃんをひとりにしちゃいけない。

 そんな気がする。


 ……なんてアニメみたいな言葉を頭に浮かべながら走った。


「って、速い!?」


 私がほぼ全力で走っているのにも関わらず、ほとんど距離が縮まらない。

 確かに小路ちゃんは足が速い。


 それにしたって、小学生と高校生だ。

 これはちょっと速すぎる。


 そういえば、人は命の危険があるとき、リミッターのようなものが外れると聞いたことがある。

 今私に捕まるのは、命の危険があるレベルだと脳が判断しているのか。


 くっ!

 これは絶対に捕まえてみせようじゃないか。


 と、その時だ。

 後ろからビビ―ッとホイッスルが聞こえた。


 なんだろうと思い、走りながら後ろを見る。

 すると、おまわりさんがこちらにむかって走ってきていた。


 私?

 私なのか?

 何かしたのか私。


 どうしよう。

 ここで止まって私じゃなかったら完全に小路ちゃんを見失ってしまう。


 かといって、私だったら無視していることに。

 ぐぐぐ……。


 もう一度様子を見るために振り返る。


「あっ」


 よく見ると、追いかけてきているのはめぐりさんだった。

 それなら何とかなるだろう。


 少しだけペースを落として近づく。


「めぐりさん、どうかしましたか? 私ですか?」

「そうですよ。今日も元気に女児を追いかけまわしていると通報が」

「その通報はいったいどこから」


 相変わらず私の情報は筒抜けか。

 もしかして衛星で監視されてるのかもと疑うレベル。


「この状況、まずいですかね?」

「とりあえず鬼ごっこしてたみたいですと伝えておきます」

「ありがとうございます」


 なんて頼もしいんだ、めぐりさん。

 それにしてもめぐりさんの体力もすごい。


 しゃべりながら私の走りについてきている。

 さすが鍛えてるだけあるよね。


 おまわりさんは大変だ。

 ……もしかして私の体力が落ちてるとかないよね?


 最近ちょっと食べ過ぎたりだらけたりしてたから心配だ。

 しばらくそのまま走っていると、ようやく小路ちゃんが失速し距離が縮む。


 そして小路ちゃんは公園へと逃げ込んだ。

 走るのを止めた小路ちゃんに追いつく私たち。


「小路ちゃん、そんな逃げなくても」

「だって、こんなに短いスカート、恥ずかしいです……」

「大丈夫。すごく似合ってるから」


 ちらちらパンツ見えてたのは言わないでおこう。

 遠くてあまり見えなかったし。


「でもどうしてそんな格好を? ミニスカの練習?」

「罰ゲームです……。ひまわりちゃんに負けて着せられました」

「な、なんだって!?」


 ナイス、ひまわりちゃん!


「小路ちゃん、慣れてしまえば罰ゲームじゃなくなるよ? 私の家においでよ」

「う……、嫌です……」

「そんな~」


 残念だ。

 私の部屋なら見放題だと思ったのに。


「そこをなんとか」

「い、嫌です……」


 くっ、これ以上は小路ちゃんを傷つけるかもしれない。

 仕方ない、諦めよう。


 と、その時。

 神風が吹いた。


「おっと」

「ひゃっ」


 私の目の前でめくれ上がるミニスカート。

 ばっちり小路ちゃんのおパンツが見えてしまった。


「最高だよ、小路ちゃん」

「いやああああ!!」


 小路ちゃんは悲鳴と共に、高速回し蹴りを入れてきた。


「ぐはっ」


 そして逃げ去っていってしまった。


「くっ、逃がしたか……」

「白河なずな、現行犯逮捕です」

「……うん?」

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