第221話 お散歩日和

「うむ、今日もいい天気だね」


 ポカポカとした過ごしやすい天気の日。

 だらだらとお布団の上でアニメを見ていたので、気分転換にお散歩にでも出かけよう。


 目的もなく、とりあえず外に出てみる。

 こういうのはまず動き出すことが大事なのだ。


 やる気というのは後からついてくるものだと聞いたことがある。

 とりあえず最初は河川敷へとむかおう。


 誰かいるだろうか。

 ……誰もいない。


 柑奈ちゃんたちはいったいどこで遊んでいるんだろう。

 いつメンで集まっているかどうかも知らないけど。

 まあ、今日はかわいい子に出会えたら良しな感じでお散歩しよう。


 河川敷の公園から川沿いの道へ進む。

 天気のいい日のこの道はとても景色が良い。

 近所にこんな場所があるなんて幸せなことだと思う。


 つい走り出したくなるけど、今日はのんびりすると決めたのでゆっくり歩くことにする。

 こうやって意識的にゆったりと行動することが大事なのだ。

 多分。


 しばらく川沿いを歩いた後、坂道を下って住宅街へ進む。

 この辺りには、お世話になっているいつもの公園がある。

 そう、かわいい女の子とのエンカウント率が高いあの公園だ。


 期待しながら公園の前にまでやってくる。

 しかし、公園には誰もいない。

 まあ、そのうちやってくるでしょう。


 私はベンチに座ってしばらくこの公園に居座ることにした。

 わざわざ外に出て読む電子書籍というのもなかなか乙なもの。


 家で読みかけだったマンガを2話ほど読むとしよう。

 その間にかわいい子がやってくれば良し。


 ……。

 ……。

 ……。


 ふむ。

 残念だが時間切れ。


 次はどこへ行こうか。

 十分気分転換にはなったし、近所の神社にでもお参りして帰ろうかな。


 そう思い公園を出る。

 わざとあまり通らない道を選びながら神社を目指す。


 すると、いつの間にできたのか、以前はなかったはずの場所にきれいな公園を見つけた。

 さっきまでの公園は何だったのかと思うほど、ちゃんと人もいる。


 もしかしたらここにみんな吸い込まれているのかもしれない。

 逆に人がいすぎて、妙な行動はとれないな。


 仕方ない。

 今日のところはかわいい子を遠目で見守るだけにしておこう。

 ベンチに座り、スマホで電子書籍を読む。


 ……フリをしながらカメラのズームを使って女の子たちを観察。

 カメラが異常に高性能なこのスマホのおかげで、ズームを感じさせない映像を楽しむことができる。


 技術の進歩に感謝するよ。

 う~ん、いいね!


 スカートのヒラヒラが最高だよ!

 あくまでも電子書籍を読んでますよという感じを出しながら、心の中で盛り上がる。


 そんな私の元に、ポンポンとボールが飛んできた。

 おっとこれはいけないな。

 誰か取りに来るぞ。


 私はとっさにスマホをしまい、ボールを拾う。


「え?」


 ボールを取りに来た女の子を見てびっくり。

 思わずボールを抱きしめて破裂させてしまうくらいの美少女がそこにいた。


 まさに天使だ。

 マイスイートエンジェル降臨。


 これはなんとしても仲良くならなければ。

 なにか、なにかないか。


 どうしてこんな時に言葉が出てこないんだ。

 そうだ、あれがあった!


「……甘いお菓子いらない?」


 ポケットから私の大好きなクッキーを取り出して渡そうとする。


「え、いらないです……」

「な、なにぃいいい!?」


 めちゃくちゃ気を遣われた感じで断られる。

 くううう、この子は和菓子派だったかあああああ!!

 残念ながら、今和菓子は持っていない。


 どうする。

 どうすればいいんだ私……。

 そうだ!


「みこさん! お饅頭ください!」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます!」


 なぜか当たり前のように現れるみこさんからお饅頭を受け取り、私は女の子に差し出す。


「どうぞ。私の気持ちです」

「え、いらないです……」

「な、なにぃいいい!?」


 敗北だ……。

 こんなにおいしいお菓子なのになぜ……。


 まあ、この公園に来たらまた会えるかもしれないし。

 いつかは仲良くなれるだろう。


 よし。

 しばらくここに通うとしよう。


 ぐふふ……。

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