第207話 衝撃の事実

 洞窟で謎の少女と出会い、気を失った私。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。


 目を覚ました私は、ビーチチェアで寝かされていた。

 あれ?

 もしかして夢でも見ていたのだろうか。


 そうなのかもしれない。

 だが、そんな思いは一瞬で消し去られた。


「姉さん、大丈夫!?」


 私が目を覚ましたことに気付いた柑奈ちゃんが私の顔を覗き込む。


「柑奈ちゃん、かわいいね……」

「今はそんなのいいから!」

「私……、どうなった?」


 もしかして洞窟の中まで探しに来てくれたのだろうか。


「姉さんとお姉様、ふたりで砂浜に倒れてたんだよ?」

「え、そうなの?」


「手を繋いでた」

「そこは今許して?」


 むしろ気を失っても珊瑚ちゃんの手を離さなかった自分を褒めてあげたい。


「……そうだ! 珊瑚ちゃんは無事?」

「うん、大丈夫だよ。さっき目を覚ましたところだけど」

「そっか。よかった」


 しかしいったいあれは何だったんだろうか。

 途中まではわかる。

 でも最後の光は現実にはありえない。


 意外と最新のARとかMRみたいな技術を使っているような場所だったのだろうか。

 ……なさそうだけどなぁ。


「それより何があったの?」

「う~ん、言っても信じてもらえないだろうけど……」


 まあ、柑奈ちゃんなら信じてもらえなかったとしても笑ったりはしないだろう。


「実はね……、かくかくしかじかで」

「……姉さん、ついに頭おかしくなったの?」

「うわ~ん」


 笑うんじゃなくぶっ刺してきたよこの子。

 悲しく嘘泣きをしていると、そこに噂の珊瑚ちゃんがやってきた。


 ちゃんと無事だったようだけど元気はない。

 まだ具合が悪いのだろうか。

 そう思ったけど違ったらしい。


「なずなさん、すみませんでした」

「え?」


「私が砂浜で足を取られて、こけた時になずなさんを巻き込んでしまって」

「あれ? そうなの?」


 え?

 あれれ?


 じゃあ私は洞窟の中に入ってたわけではなく、頭をぶつけたかなんかで気を失ってたってこと?

 洞窟のあれは本当に夢でも見てたってことになるのか。


 なるほど、それならあの不思議体験も理解できる。

 しかしリアルな夢だったなぁ。

 まったく現実と区別がつかなかった。


 いきなりだったとしても珊瑚ちゃんとぶつかったりしたら、直前の記憶くらいありそうなものだけどなぁ。

 みこさんみたいな半分ファンタジーな人もいるから現実だと思ったよね。


 でも確かに、私と珊瑚ちゃんの特徴が混ざった女の子なんて現実にいるわけないか。


「とりあえず気を取り直してバーベキューを楽しもうか」

「そうですね」


 私たちが移動すると、すでに準備は終わっていた。

 待たせてしまっただろうか。

 みんなには申し訳ないことをした。


「じゃあ始めようか」


 茜ちゃんがさっそくお肉を並べ始める。

 それに対抗するように彩香ちゃんが野菜を添えていく。


 後は焼くだけ状態だったのか、すぐに食べられるようになっていった。

 やはりバーベキューはこのにおいがたまらないよね。


「うん、おいしい」

「そうですね~」

「……」


 いつの間にかみこさんが合流している。

 みんな疑問に思ってないけど、もしかして最初からいたのか?


 そんなはずはないと思うんだけど……。

 まあ、今はお肉を食べるのに忙しいから後にしよう。




 バーベキューを堪能した私たちは、再び時間を持て余して適当に過ごしていた。

 よし、まずはみこさんに事情聴取しよう。


「みこさん来てたんですね」

「はい。ちょっと用事がありまして。偶然ですね」


 本当に偶然なのだろうか。


「こんなところに用事なんて、大変ですね」

「はい。こういうところの方が引き寄せがちなので」


「……引き寄せ?」

「あまりよくないものが」


「あまりよくないもの!?」


 なんだかとっても嫌な予感。


「なずなさん自身も引き寄せがちなんですよね」

「え……」


「なのでよくいろんなところで私たちって出会うんですね」

「え……」


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。私がちゃんとしておきますからね~」

「え……」


 もしかして知らない方が良かったことを知ってしまったかも……。

 忘れよう。

 うん、それがいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る