第201話 お鍋と穏やかな日常

 今日は鍋料理を作ろうと思う。

 鍋で失敗など、闇鍋みたいな食材に問題がある場合くらいだろう。


 なので今日はあえてチャレンジをしてみたいと思う。

 牛乳と白味噌を使ったお鍋料理に。


「姉さん、一体何をしようとしているの!?」


 普段は見ないようなものを用意している私に、柑奈ちゃんが驚いたように聞いてくる。


「大丈夫。これはちゃんとしたレシピの存在する伝統的なお鍋料理だから」

「それ本当なの?」

「本当だよ。ほら」


 私はスマホでレシピの存在を証明する。

 いくつもの食品メーカーのサイトにも載っているようなお鍋料理なのだよ。


 特徴と言ったら、やはりこの牛乳を使うところだろうか。

 白味噌に関しては、使わないレシピも存在した。

 なんだかシチューに近いものになりそうな気もする。


「これって作ったことあるの?」

「ないよ。でも大丈夫。私は白味噌の錬金術師と呼ばれた女」


「初耳なんだけど」

「白味噌が我が家においてあるのが何よりの証拠だよ」


「確かに…」

「柑奈ちゃんも知らずに食べてたんだよ?」


「そうだったのか〜」


 汁が白い鍋物なんていろいろあるしね。

 豆乳鍋とか。


 なかなかお鍋に牛乳というのは、お料理をしない人には驚くところなのかもしれない。


「なずなさんは白味噌使いなんですね」

「ふっふっふ、まあね」


「私、白味噌好きです。お雑煮とか」

「お、いいね〜。お正月になったら食べに来るといいよ。作ってあげる」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 いよ〜し、小路ちゃんとさり気なく来年の約束をしてしまったぞ。

 年初から一緒にいるとか、もはや家族。


 つまり私と小路ちゃんは結婚しているようなもの。

 ゲヘへへへ。


「姉さん、何考えてるの? ひどい顔だったよ」


 おっといけない。

 悪い癖だ。


 とにかく将来は約束されたのだ。

 あとはヘタをしないようにしないとね。


 さて、とりあえずお鍋の準備は済ませておいて、あとはしばらく遊ぼう。

 せっかくなのでリビングでパーティーゲームとかいいかもしれない。


 柑奈ちゃんのゲーム機もおいてあることだし。

 すごろく系ゲームならきっと盛り上がることだろう。

 間に挟まるミニゲームも楽しいしね。


 1日じゃ足りないくらいいっぱい遊べるゲームだ。

 そしてゲームは他にもたくさんある。


 よ〜し、遊ぶぞ〜!

 レッツパーリィ!


 ということでゲーム開始。


 ……。

 ……。

 ……。


 そして時間は流れ。


「ただいま〜」

「はっ」


 しまった、ゲームに熱中しすぎてお母さんが帰ってきてしまった。


「ごめん、すぐ晩御飯作るね」

「あら、遊んでたんでしょ? 今日は私が作るわ」


「でも鍋だよ?」

「あら、なおさら楽じゃない。準備も終わってるみたいだし」


「お母さん、鍋爆発するし……」

「え、何の話?」


「……ごめん、今ちょっと何かと混ざってた」


 何の記憶だろうか。

 お母さんが鍋を爆発させたことなどなかったはずだ。


 もしやこれは前世での記憶?

 くっ、まさか私にそんなラノベ展開が……。


「姉さん、それさっきゲームで見たやつ」

「え?」


「ミニゲームでお鍋爆発してた」

「なんと」


 あまりにもゲームに熱中しすぎて、まさか現実とごっちゃになるとは。

 私としたことが不覚……。


「それじゃあお母さん、よろしく」

「任せて。ゆっくりゲームで遊んでていいからね」

「ありがとう」


 ということで料理はお母さんにお任せし、私はゲームに戻る。


「ごめんね、お待たせ」

「今、姉さんの番だよ」


 お鍋が完成するまでにゴールできるだろうか。

 ちょうど微妙な感じではある。

 さっさと終わらせてしまった方がいいね。


 そんなわけでサクサクとゲームを進め、ついにクリア。

 順位は柑奈ちゃん、小路ちゃん、私という結果。

 負けはしたものの楽しい時間だった。


「お鍋、もうできたけど食べる?」

「ゲームもちょうど終わったし、食べよっか」


 タイミング良く晩御飯も完成し、私たちはお鍋を囲むことに。

 おいしいご飯を食べながら、楽しくおしゃべりをする。

 なんとも平和で穏やかな時間。


 何も事件が起きないのが逆に怖い。

 そう思ってしまうあたり、かなり変な毎日を過ごしているのだな、私。


 今日は最後まで平和だった。

 たまにはこんな日があってもいいじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る