第180話 地面に這いつくばるなずなさん
「フヒヒヒヒ」
ついにこの時がやってきた。
柑奈ちゃんとひまわりちゃんの3DCGを眺めながら、私は気持ちの悪い笑い声を出してしまった。
これは珊瑚ちゃんがくれたもので、専用のアプリで動かす。
しかもVR対応。
まるで現実世界のような映像だ。
目の前に柑奈ちゃんたちが本当にいるみたい。
さすが浜ノ宮家の技術だね。
これなら本人に嫌がられることなく、あんなことやこんなことができちゃうわけだ。
「フハハハハハ」
これが笑わずにいられるか。
まあ一応コントローラーで触ることもできるけど、流石に感触まではかんじることはできない。
あと現状では反応もない。
ほぼ見てるだけのアプリだ。
もっと開発が進めば、感触はともかく、何かしらの反応をしてくれるようにはなるだろう。
楽しみだなぁ~。
とりあえず今はこうやってスカートの中を覗いたりして楽しもう。
ただ、なんというか、アニメで見るVRと違って、私の動きはまわりから見えてしまうというのが困る。
ゴーグルとイヤホンのせいで自分の世界に入り込んでいるから、誰かがそばにいても気付けないんだよね。
「ふぅ、今日はこのあたりにしておきますか」
誰に言うわけでもなくそうつぶやいてゴーグルを外す。
そして目の前に現れる柑奈ちゃんの顔。
「うひゃっ!?」
「……」
なんかすごい冷たい視線だ。
もしかしてずっと見られてた?
恥ずかし~……。
「姉さん、それVRだよね」
「う、うん、そうだよ」
「何してたの? なんかすごい姿勢だったけど」
「いや~、ちょっと屈まないと見えないところがあったから」
「ふ~ん。なんか大変そうだね」
「そ、そうなんだよ~」
よかった~。
私にもやらせてとか言われたらまずかったよ。
セーフだね。
「ところで柑奈ちゃんはなぜここに?」
「え、あ、いや、なんでも……」
逆に今度は柑奈ちゃんの様子がおかしくなる。
ほう……。
もしかして私に言えないようなことをやらかそうとしていたのかな?
そしてドアを開けたら、変質者みたいなお姉ちゃんがいたわけだ。
そりゃ、ゴーグルつけて床に頭こすりつけてるお姉ちゃんがいたら心配するよね。
早く現実の体を動かさなくて済むVRを出してほしいなぁ。
「まあでも、ひまわりちゃんにこんなところ見られたくないよね~」
「え……」
「うん? どうしたの柑奈ちゃん?」
「……ひまわりちゃん、後ろにいる」
「え……」
恐る恐る振り返ると、私に後ろには顔を赤くしているひまわりちゃんがいた。
もしかしなくても全部見られてたのか。
はぁ……。
まあ、今さらだよね~。
ところでなんかひまわりちゃんの様子がおかしいけど大丈夫かな?
「はぁはぁ、地面に這いつくばるなずなさん素敵……」
「……」
ひまわりちゃん、なんか変な趣味でもあるのかな。
でも素敵って言われちゃった。
えへへ。
「それより柑奈ちゃん、ひまわりちゃんがなんで私の部屋にいるの?」
「遊びに来ただけだよ。声をかけても返事がなかったから入っちゃった」
「そっか、ごめんね。ドアを開けたらこんな格好しててびっくりしたよね」
「ああ、まあ、ドアは開いてたけどね」
「……」
うっそ~ん。
なんて迂闊なんだ私!
でもまあ今さらか。
「ひまわりちゃん」
「え、あ、はい」
「私のこと、嫌いにならないでね?」
ちょっとあざとく上目遣いをしてみる。
「ひゃわ~!! なるわけないです! 大好きです!」
「落ち着いてひまわりちゃん!」
暴走してしまった。
さすが上目遣い。
誰だ、これ思いついた人。
天才か。
ちょっと柑奈ちゃんにも試してみようかな。
「柑奈ちゃん」
「なに?」
「キタ~ン!」
私は柑奈ちゃんにも上目遣い攻撃を仕掛ける。
「うっ」
柑奈ちゃんが突然めまいを起こしたようによろける。
大丈夫だろうか。
と思ったら、急に目をクワっと開いて体勢を立て直す。
「姉さん!」
「は、はいっ!」
「何考えてるの? そういうの、絶対に他の人にはしちゃダメだからね!」
「わ、わかりました~」
なぜかわからないけど注意されてしまった。
「とりあえず動画撮るから、もう一回やって」
「え? まあいいけど」
動画撮るのか……。
改めてやるの、ちょっと恥ずかしいな。
「キタ~ン!」
「うぐっ、よし!」
柑奈ちゃんが何かのダメージを受けながら、動画を撮影。
「送信っと」
「え?」
ちょっと待って。
今どこに送ったの?
さっき撮った動画だよね?
嫌な予感しかしない。
そう思っていた時。
庭の方から何か変な音が聞こえたような気がした。
気になって庭まで見に行ってみる。
するとなぜかそこにはスマホを握った珊瑚ちゃんが倒れていた。
こんなところで何してるんだろうか、この方は……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます