第113話 金髪碧眼少女
今私は流れるプールに身を任せている。
この時期の普段がどれくらいなのかはわからないけど、今日はそんなに人が多くなくて快適だ。
おかげで私はひまわりちゃんを見失うことなく、そのお尻を追いかけ続けることができる。
いや、別に追いかけてるわけではないんだけどね。
ただ普通に泳いでいたら、私の前をずっとひまわりちゃんが泳いでいるだけだ。
本当だ、信じて欲しい。
そういえば紅葉さんはどこに行ったんだろうか。
紅葉さんの泳いでいる姿も拝んでおきたいものだ。
そう思ってぐるっとまわりを見てみると、なんとすぐ後ろに紅葉さんはいた。
もしかしなくても、拝まれていたのは私の方か。
「紅葉さん」
「何ですか~?」
「私のを見るのはいいですけど、いや、本当は嫌ですけど、見たら見せてくださいね」
「それ、なずなちゃんが言いますか~?」
確かにさっきまでひまわりちゃんのお尻を追いかけいた私が言うようなセリフではないかもしれない。
だがしかし、私は見られたらやり返す、そんな人間だ。
プール内で撮影はできないのだから、心のシャッターを切るしかない。
「じ~」
「きゃ~、なずなちゃんがいやらしい目で私のことを見てます~」
「ふっふっふ」
そう簡単には負けなくなった今の私の精神力ならば、しばらくの間水着姿を至近距離で拝み続けることだって可能になった。
それもこれもすべてはひまわりちゃんたちと裸のお付き合いをするためさ。
今日、それが叶う時が来たということだ。
やはり一番はお家のお風呂だけど、こういう場所だって悪くはない。
まずはここで一つ目のミッションを達成し、次へと繋げてみせよう。
ああ、だんだん楽しみが緊張に変わってきた……。
「う、うぼっ」
「なずなちゃん!? またですか~」
しばらく精神を落ち着けるために私はパラソルの下で休んでいた。
どうもひまわりちゃんとのお風呂を想像するとおかしくなってしまう。
まいったものだ。
柑奈ちゃんだと大分マシになってきたんだけどなぁ。
そんな休憩中の私の前を、とんでもないものが通過していった。
なんとそれは、ひまわりちゃんたちと同じ歳くらいに見える金髪碧眼美少女。
あれ?
私、いつの間にか眠って夢を見てるの?
そう思ってしまうくらい、その子はキラキラと光輝いて見える。
私が思わず立ちあがると、金髪少女は驚いたように私の方を見上げた。
「あ、ごめんね驚かせて」
「いえ、大丈夫ですよ」
「あまりにもあなたが光り輝いて見えたから、つい」
「光り輝く? 私が? お姉さん、面白いこと言いますね」
「あはは……、それより日本語上手だね」
「私は日本語しかしゃべれませんよ」
「あ、そうなんだ」
こっちで生まれた子なのかな。
この辺に住んでる子なのかもしれないね。
だとしたら今後も会える可能性が高い。
ここはもう仲良くなっておくしかないね!
「お嬢さん、私と一緒に泳いでくれませんか」
「え、なんでですか……」
金髪少女は、本気で意味が分からないといった感じで若干引いていた。
まあ、そうだよね。
これが普通の反応だよね。
だがしかし、こんなことであきらめる私ではない。
「あなたと仲良くなりたいから」
「え、なんでですか……」
「私はね、ちっちゃくてかわいい女の子が大好きなんだ」
「なんて正直な変態さん!? そんなこと言われたら絶対についていきませんよ」
「そこを何とか! 今度家に遊びに来てくれたら、おいしいお菓子を食べさせてあげるから!」
「ますます怪しくなってる!」
ぐぬぬ……、なかなかうまく誘うことができない。
おかしいなぁ……、今まではこんな感じでも簡単についてきてくれる子ばっかりだったのに。
どこかでハードモードに切り替えてしまったのか?
私はイージーモードで無双するのが好きなのに!
人生なんてイージーモードが最高ですよ!
そんな感じで私が苦戦していると、そこに紅葉さんとひまわりちゃんがふらっと現れた。
「あれ、どうしたんですかなずなちゃん? おやおや~? そのかわいい金髪ちゃんはどなたですか?」
「あ、紅葉さん。いや、かわいい子だったもので、ぜひ一緒に泳ぎたいと声をかけてたんです」
「なるほど~! さすがなずなちゃん、見境ないですね!」
「いや~、それほどでも~」
私は褒められて照れていると、金髪少女から「なぜ照れる!?」とツッコミが入った。
そして金髪少女は助けを求めるような視線をひまわりちゃんへむける。
その視線に気付いたひまわりちゃんは、なぜか親指を立てて頷いた。
よくわからないが、何か通じたのだろうか。
しかし、金髪少女はぽかんとした表情をしていたので何も通じていないのだろう。
するとひまわりちゃんは突然私の前にやってきて、金髪少女の方を見ながら言った。
「大丈夫だよ! ほら見てこのおっぱいを! ここにはやさしさが詰まってるの、だからこのお姉さんはやさしいよ!」
「え、ちょっと意味わからない……」
「大体アニメとかで、ほわほわのやさしいお姉さんはおっぱい大きいでしょ? だからそういうことだよ」
「確かに! なるほど~、ここにはやさしさが詰まってたのか~」
そう言ってなぜか感動したように私の胸を勝手に触りだした金髪少女。
ちょっと止めていただきたい。
だが、ここまでしたからには一緒に泳いで頂かないと。
「お嬢さん、もう一度聞くね。私と一緒に泳いでくれませんか?」
「わかりました、いいですよ~」
「やった~!」
ひまわりちゃんのおかげでなんとか交渉成立だ。
あとは仲良くなって、一緒にお風呂イベントまで進めるぞ~!
お~!
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