第105話 女子高生でよかった

 お昼ご飯を食べ終えた私は、お散歩しようと公園の外に出てみた。

 海岸沿いには整備された道があり、ここを自転車で駆け抜けたら気持ちよさそうだ。


 いつか私も小学生の恋人と一緒に走ってみたいと思う。

 海を見ながら走り続けるなんて最高だろうなぁ。

 そのためには早く恋人を作らないとね。


 なんて思いながらいつもより少しゆっくり歩いてお散歩をする。

 そして砂浜の方に出てみると来た時よりも人が増えていて、泳ぎはしないものの軽い水遊びのようなことをしている人たちもいた。


 中にははしゃぎすぎてちょっと服が透けていらっしゃるお姉さんもいて、私の心はとても踊っている。

 同じように服が透けている小学生はいないだろうかと、私は目を血走らせて探しだす。


 残念ながら見つかりはしなかったけど、小学生自体は何人かいるのを確認できた。

 その中から、グループではなく一人で来ているっぽい子に狙いを定め、ゆっくりと近づく。


 揺れるポニーテールに引き寄せられるように、私は少女のそばまで移動する。

 ここまで来ると顔もはっきりと見えて、とてもかわいい子だと判明した。


 まことに残念ながら、その子の服装は長袖長ズボンというガードの硬いもので、ラッキーショットは見込めそうにない。

 それなら純粋にかわいらしい姿を写真におさめるのも悪くはないだろう。


 ということで私はいつものようにその少女にむかってスマホを構える。

 そして写真を撮った瞬間に少女と目が合った。


「……」

「……」


 しまった~!!

 真正面から写真を撮るとか、これじゃまるで変態じゃないか。


 くそ~、ちゃんと隠し撮りしないとダメだよ私。

 私は恐る恐る少女の様子をうかがう。


「変態さんだ」

「ぎゃ~!!」


 少女は私を指さしながらそう言った。

 これはまずい、なんとか誤魔化さないといけない。


「まあお姉さんだし大丈夫か」

「え」


 これは……。

 セーフ!

 ああ、女子高生でよかった。


 やっぱり女の子同士だとある程度許されるよね!

 ね!


「ねえ、お姉さんはなんで私の写真を撮ったの?」

「え? それはね、あなたがかわいいからだよ」


「私が? そうかな~」

「そうだよ。数多くの小学生を撮影してきた私が言うんだから間違いないよ」


「いつもこんなことしてるの?」

「うん、そうだよ」


「なんで?」

「それはもちろん、私は女子小学生が大好きだからだよ」


「……やっぱり変態さん?」

「そ、そんなことないから」


 いや、まあ、話を聞かれたら変態だと思われてもおかしくはないけど。

 違うんだよ、これはねアートなんだよ。


 かわいい女子小学生はね、みんな国宝なんだよ。

 今この瞬間にしか残せないものなんだよ。

 だから写真を撮るのは当然のことなんだ。


「私の写真、撮りたいの?」

「うん、もっとたくさん撮りたい。できれば脱いでほしい」

「ええ!? お姉さん、やっぱり変態だ!」


 自分でもびっくりだよ。

 これが旅のテンションってやつか。

 今の私は無敵かもしれない。


「そうだな~、お姉さんが先に脱いでくれたら私も脱いであげる」

「ありがとう、じゃああっちの黒い車まで来てくれる?」


「即答!? いや、あの、今のは冗談! 冗談だから!」

「冗談の冗談は本気ということで。さあさあどうぞ」


「きゃ~!」


 私が少女を連れ去ろうとしていると、後ろからぱしっと頭をはたかれる。


「何しようとしてるの、この犯罪者」

「あ、彩香ちゃんだ~」


 暴走し始めていた私を止めに来てくれたのは、頼りになる我らが委員長彩香ちゃんだった。

 助かった、もう少しでお縄につくところだったかもしれない。


「本当にもう、目を離したらすぐこれなんだから」

「えへへ~、ごめんね彩香お姉ちゃん」

「誰がお姉ちゃんだ」


 今度はおでこにチョップされた。

 こういうやり取りも楽しいものだ。


「ごめんね、このお姉ちゃん、ちょっと変な子だから」


 彩香ちゃんは私が見つけた少女にやさしく話しかける。

 さすが私と同じく小学生の妹がいる身。

 こどもの相手は慣れているご様子。


「……」

「あら、どうかしたの? もしかしてこのお姉ちゃんに何かされた?」


「素敵……」

「え?」


「お姉ちゃん、素敵~」

「ひゃあ」


 さきほどの女子小学生が彩香ちゃんに抱きつく。

 な、なんだと~!?


「彩香ちゃんの変態! 私の見つけたエンジェルちゃんを横取りするなんて!」

「誰が変態よ! 横取りなんてしてないから」


 くぅ~、まさかこんな日がやってこようとは。

 まあ好みは人それぞれ。


 彩香ちゃんはかわいいし、しっかりしたお姉ちゃんだから、そういうのが好きな子も当然いるよね。

 私だって彩香ちゃんのことは大好きだし。


 それにしたってこんな展開はなしだよ~!


「彩香ちゃん、早くその子を車まで連れて行って! 私の代わりに写真を撮ってきて!」

「そんなことできるか~!」


 彩香ちゃんは抱きついてくる少女を引き離そうとしているけどなかなかできない。

 おやおや?

 これは本気で嫌がってないな?


「お姉さま、私は別に撮られてもいいですよ?」

「くはっ、かわいいじゃないの」


「もちろんお姉さまの裸写真も撮らせてもらいますけど」

「誰がそんなもの撮らせるか!」


「あ、別に下着でも半裸でも構いませんよ?」

「そういう問題じゃないわ!」


 なんだこの女子小学生、なかなか素質があるんじゃないかな。

 ぜひとも将来は私たちの高校へ入学して、私たちの幼女同好会を未来へ受け継いでいって欲しい。


「白河さん! なんでうんうん頷いているの! ちょっと助けてよ」

「同好会の未来も安泰だ」

「何の話をしているの!?」

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