第69話 休日の朝、お茶をこぼしてスカートを脱ぐ
休日の朝のこと。
私はタブレットでマンガを読みながら、手探りで机に置いてあるお茶を取ろうとしていた。
そんなことをしていると、当たり前のことながらコップに手をぶつけてお茶がひっくり返ってしまう。
「ぎゃっ」
お茶はもろに私の下半身にぶちまけられ、履いていたスカートがべちょべちょになってしまった。
いくらマンガに熱中していたとはいえなんとマヌケなことか。
「うう~」
とりあえずスカートを脱ぎ、濡れてないところを使って床にこぼれたお茶を拭く。
大和撫子にあるまじき行為ではないだろうか。
しかもそんな程度で拭ききれるはずもない。
諦めてちゃんとタオルを使うことにしよう。
とはいえ私の部屋には自分用のバスタオルしかない。
しょうがない、お母さんにタオル貰ってこよう。
私は部屋を出て階段を降り、リビングへとむかう。
ドアを開くと、中にはソファでくつろぐ柑奈ちゃんがいた。
「あ、柑奈ちゃんおはよ~! 今日もかわいいね~」
「おはよう姉さん……、ふぁっ!?」
「うん?」
あいさつと同時にこっちを振りむいた柑奈ちゃんが突然変な声をあげた。
いったいどうしたというのか。
「ね、姉さん、何その格好……。誘ってるの?」
「え? ああ、そういえばスカート脱いでたんだった」
「スカート脱いで何してたの!? い、いけないことじゃないよね!?」
「いけないことって何……? ただお茶をこぼしちゃっただけだよ。ちょっとタオルを取りに来ただけだから」
「そ、そっか。でもちゃんと着替えはしてこなきゃダメだよ! お客さんが来ててこんなことされたらどうするの!?」
そう言って柑奈ちゃんは床に仰向けで寝転がって、さらに足をばねのように使って私の足元まで滑り込んでくる。
いや、そんな変な行動するお客さんなんていないでしょ。
というかそんな変なことするのは最近の柑奈ちゃんくらいだと思うよ。
「ちぇっ、パンツはちゃんと履いてたか……」
「うん? なにか言った柑奈ちゃん」
「ううん、何でもないよ」
まあ聞こえてたんだけどね。
柑奈ちゃん、私がノーパンだと期待して滑り込んできたのかな?
服がだぼだぼだからパンツが見えなかったか。
なんか最近変な子になってきたよねこの子。
今度私も柑奈ちゃんにむかって同じことやってみようかな。
柑奈ちゃんが私のことを求めてくれるのは嬉しいけど、私はやっぱり見られるよりも見たいよね!
愛されるよりも愛したい今日この頃。
「それより柑奈ちゃん、お母さんはいる?」
「庭にいるよ」
「そっか」
柑奈ちゃんは未だに床から起き上がることなく私を見上げていた。
「お母さ~ん」
私が庭の方に顔を出してお母さんを呼ぶ。
洗濯物を干していたお母さんは私の声に反応して振り返る。
「どうしたのなずなちゃ……、ふぁっ!?」
私の姿を見たお母さんは、柑奈ちゃんと同じような声をあげた。
やっぱり親子だなぁ、反応がそっくり。
「もうなずなちゃん、いくら休みの日でもそんな格好はダメよ、いつもはちゃんとしてるじゃない」
お母さんは慌てた様子で部屋の中に戻ってきて、私を後ろへ下がらせる。
別に庭なんだから誰にも見られないと思うけど。
まあ大和撫子を目指す身としては確かによくはなかったか。
「こんな格好、イケナイ、イケナイわ!」
お母さんはぴらっと私の服をめくりあげる。
……何してるんだこの人。
「あら、下着履いてたのね」
「履いてないと思ったの?」
「え、いやそんなはずないじゃない……」
なぜ目を逸らす。
というか履いてなかったら丸見えだったんですけど。
直接攻撃すぎてびっくりだ。
「まあ私としてはもう少し長い服と、もっとフリフリの下着だったら鼻血ものだったわ」
「両方持ってるから、その格好の時じゃなくてよかったよ。それよりタオル借りていい? お茶こぼしちゃって」
「ああ、そういうことだったの」
「どういうことだと思ったの」
「何でもないわよ、気にしないで。タオルはこれを使って」
「……? 下着?」
「あ、ごめんなさい、これは柑奈ちゃんのおパンツね」
「ありがたくもらっておくとして、タオルちょ~だい」
私は自然な流れで柑奈ちゃんのおパンツを服のポケットにいれようとすると、後ろから鮮やかに回収されてしまった。
「ダメだから!」
「ちぇ~」
まあ、別に冗談だったからいいんだけど。
妹の嫌がることはしない、それがお姉ちゃんなのです!
「なずなちゃん、私のでよかったら代わりにどう?」
「いやいやいや、それをもらってどうしろと」
「柑奈ちゃんのは欲しくて、私のはいらないっていうのね。悲しいわ……」
「悲しまれても困るんだけど……」
なんて言いつつ、ちょっと心揺れている私は人としてどうなのだろうか。
私の中のロリコン・シスコン魂よ、もうちょっと頑張れ!
「ねえふたりとも、いつまでもバカなこと言ってないで朝ごはんにしようよ。今日は一緒に出掛けるんでしょ?」
「あ、そうだった」
今日は久しぶりに家族3人でお出かけするんだった。
「お母さん、タオルタオル」
「はいはい。……ちょっとこっちに来て」
「……?」
私はお母さんに手招きされて庭に出る。
こんな格好だからとリビングに押し返されていたはずなんだけどなぁ。
お母さんは私にだけ聞こえるように顔を寄せて小さな声で話し始める。
……近いな、バニラアイスみたいな甘い香りがするぞ。
「なずなちゃん、柑奈ちゃんの下着が欲しいならこっそり回収してあげましょうか?」
って何の話だ!?
「お母さん、それは魅力的な話だけど人としてダメだよ。やっぱり本人の許可を得てもらい受けないと」
「自分の下着を許可して譲る子なんているのかしら」
「……確かに」
それで渡してくれる子がいたら、ちょっとまずい子な気がするね。
というかお母さん、そんな発想よく出てきたね?
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