元服

 闇夜を照らす一晩の大役を果たした灯台のランプは今は消え。

 代わりに冬でありながら熱量ある太陽が丘を照らす。


 彼女が、駆けてくる。


「ボクト!」

「ミコちゃん・・・」

「ボクト!心配したよ!」

「ごめん」

「ボクトくん」

「はい。大鯛だいたいさま」

「お母さんには会えましたか?」

「いいえ」

「そうですか」

「ボクト、お母さんは?」


 ボクは彼女に母の死は告げなかった。


「もう、いいんだ」

「でも・・・」

「もういいんだ、キミがいるから」


 そうさ。

 多分、僕と彼女は結婚する。

 でも、それは夫と妻という関係じゃない。


 彼女は僕の相棒バディ

 僕は彼女の相棒バディ


 ほんとうの僕と彼女との間柄は、世を遍く照らし尽くす太陽と月としての役割。


 僕は、わかった。僕のほんとうの心の底の意思が。


 どうしたって止めることのできない渇望が。


 そう。

 世を遍く照らし尽くす。


 時として日の光をもって。

 時として月の光をもって。


 誰一人漆黒の闇で泣くことのないように。

 それを、彼女と一緒に、一生かけて、自分の務めとして果たし尽くす。


 さあ。


 ふたりで行こう。


 出発!

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