神様に一番近いものの語り

神楽坂美姫のケース

 あたしが人を好きになれないそのことに気がついた保育園に通っていたときだ。みんな泣いて「お母さんと離れたくない」それを全力で叫んでいた。私にはその子たちの考えがまったく理解できない。時間には迎えに来るし、その後「存分に甘えればいい」。残念なことに甘えられる親はいなかったが。

 私のいるこの2LDKは大凡子供に優しくない世界だ。いつも冷めているごはん。父親は、競馬新聞なんて読んでるくせに、テーブルを挟んで団らんしたのは遠い記憶だ。ていうのかあった記憶がなかった。

 母親は離婚したくてうずうずしている。父親は競馬、競輪、パチンコなどなど。


 そんな環境で育った私が普通じゃないんだ。親に責任転嫁するつもりはない。


 しかし事件は起きてしまった。カタギではない男たち。いきなりわたしの髪を掴み上げた。

「お前はあのクズに売られたんだよ。精一杯体で稼いでくれ、な」

 堪忍袋というのがたしかにあったことに驚いた。だってぶちっと切れた音がしたから。

 直ぐ側にあった包丁で、わたしの髪を触っていた男の指を切り落とした。

一瞬の静寂

「なにしてくてんじゃ!?」

「警察呼ぶよ。どっちが悪者になるか、考えなくてもわかるよね?」

 薄い笑顔が出てきた。

 場はシンっと静まった。睨みあること5分くらい。その間指がなく なった人は車で帰っていた。

「指、落としたのはうちの不手際や。でもあんたには才能がある。

人を絶望させる才能が、な。これがない半端者は一生だめや。

強がることはできても行動に移せない。後ろ盾がないとだめな半端者。

でも、お嬢さんは違った。父親、母親が殺されそうだろうとあの場で全員殺そうとしたやろ」

 そのままヤクザの人には会えないかった。

 この事件をきっかけに離婚調停が始まった。金の話は短いやり取りで終わったそうだ。

 そこから始まったのは親権争い。とても醜い争いだった。

 事件の内容からわたしがヤクザに目をつけられたのはわかっている。 そんな子供を誰が引き取るのか。半月以上かかった話の結果


 わたしは国営の自動保育施設に入れられた。


 中学生になる前の日。シスターから名前をもらった。神楽坂美姫。それがわたしの新しい名前だ。

 自室の姿見で制服を試着してみる。膝丈のスカートとセーラー服。とてもかわいいが、果たしてわたしにも好きな人が現れるのだろうか……。


そして入学式、はまったく興味がなかったので自主休講。本を読んでいれば時間なんて気にならない。どうせ見た目で、ホイホイ集まった男をバッサリ断る作業が残っているんだから、ちょっと休憩。


 次の日に登校してみると、まぁ噂が流れてた。同じ小学校の人も入学してるし、仕方ないのか。


 そこからがすごいよ。話しかけてくる。シカトする。また別の男が話しかけてくる。もちろんシカト。

 いやー女の子からのやっかみの視線と態度。すきで声かけられてるわけじゃないのになー。

 わたしに潜む陰は、根本的に人を信用できない、だから好きになれない、だからキョリおく。

 それがわからないから、脳みそにエロいことしか入っていない連中が、いいよってくる。


 そこで思いついた。全員と関係を持てばいいんだ!

 それを聞いた友達は「あんたが1番頭がおかしい」って言ってた。別にすきじゃない人ともセックスできるし。あーでも初めてだけはなぁ。

 そこでまたまた思いついた。クラスに1人にはいる目立たない童貞。

 そいつで処女卒業して輝かしい未来を手に入れる。


中学校卒業式

 ぶっちゃけ何人と寝たんだろ。100人は超えているはず。中だしは許してない。それだけは。本当に好きな人ができたときのために。100超えなんて絶対好かれないけどね。


高校には入学しなかった。

 先生は特待生でも入れる場所がなんちゃら言ってたけど、そんなことより、家に帰ることができなくなったのが痛い。親は売り払って、わたしは完全に捨てられた。


 それから。お金を払わないで泊めてくれる男の家をわたし歩いた。


これは考えちゃいけないことだ


わたしって産まれた必要あったのかなぁ?


空は雨が降っていた

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