第13話消えた魔女
学院祭当日になった。
清掃員の仕事を淡々とこなす日々を過ごした。
唯一変化があった事はレイが姿を現さなくなった事ぐらいだが、彼女は強いから心配はしていない。
俺は今セレーナと学院祭デートをしている。治ったことをセツナに伝えたがそれでも当日は護衛をして欲しいとの事で現在一緒だ。つまり合法デートだ。
「うむ、素晴らしきかな学院祭」
「急にどうしたのですか?」
隣で購入した串焼きを咀嚼するセレーナがこちらを見た。
「こんな美人なセレーナとデート出来る俺は幸せだって言ったんだ」
「は、はぁそうですか」
反応が悪い。やはり世の中、顔なのだろうか?
「よく分かりませんが試合があるので行きましょう」
そう言ったセレーナに手を引かれ試合会場に向かった。
***
怨嗟の森・セツナ邸
私は自室に居た。右手にカドゥケウスを握り、とある人物を戦闘体勢で待っている。
目の前の空間が歪み紫髪のドレスの女性が現れた。
「貴方がシア。初めまして。やっぱり精霊神じゃない。精霊はそんな自由に動けない」
彼女が言う。
「会えて嬉しいわ。それが貴方の素なのね」
「答えて。貴方は何者?」
「さぁ?『原初の賢者』様でもわからない事ってあるみたいね」
「……どこまで知っているの?」
「そうね、貴方が精霊と融合している半精霊で永い時を生きたって事ぐらいね」
「そう、それが全て。それより貴方こそ自分の正体を明かして」
「その前に一つだけ。世界って寿命が尽きると消滅するのよ。そしてその世界に生きる者全ての魂も完全に消滅する。ご存知かしら?」
「意味がわからない!それがどうした!答えろ!お前は何者だ!アルカの害になるなら私はお前を討つ!」
私はカドゥケウスを彼女に向ける。
彼女はため息をつき、私を見つめた。
「それは無理ね」
━━ゴボッ
突如私は黒い沼に引きずり込まれた。
「何をしたァァァァ!」
魔法が発動しない。
黒い沼が腕の形に変わり私を拘束し、ゆっくりと身体が沈む。
そして彼女がゆっくりと近づいてきた。
「私の魔法よ。魔法は発動しない。だから貴方は無抵抗のまま沈むわ」
「うァァァァァァァァ!」
私は何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も試したが無駄だった。
ああ……私は死ぬんだ
「私の正体の話だったわね。難しいわ。天使、悪魔だったりしたから名前も複数あるわね。だから今はシアよ」
彼女の話はもう耳に入ってこなかった
こんなことなら━━彼に想いを伝えておけばよかった
涙が溢れてくる
あの時、滅びた村で保護した少年に『原初の賢者』と呼ばれた私が恋をするなんてあの頃の私は思ってもみなかった。
出来ることならずっとそばに居たかった……。
「……ごめん……ね……愛してる……アルカ」
━━ドプンッ
その言葉を最後にセツナ黒い沼に消えた
この日『殲滅の魔女』セツナはこの世界から消えた。
「彼を頼むわよ。セツナ……」
シアは身を翻し部屋を後にした。
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