眼差し

カネコ

第1話眼差し

駅のホームのベンチで一人電車が来るのを待っていた。ふと見上げると、高校の頃、バスケ部を途中で辞めた後輩がいた。名前は、八木とか言ったけ。彼が先に南浦和行きの電車に乗った。そして、僕を正面側にして座席に座る。僕は、ベンチで、大宮行きの電車が来るのを待つ。僕は、視線を彼に送る。僕は、視線を外すまいと彼を強く睨み付ける。何故そうしたかは自分でもよくわからない。彼も、僕にまるでライオンに狙われた動物の母親のような強い眼差しでこちらを睨み返す。そんな時間が10秒くらいあったろうか。ようやく電車は通過し、彼の姿は消えていった。


-------10年前-------

僕は当時、高校1年生。入学してすぐ、僕は部活動の選択に悩んでいた。中学生の頃、僕は、野球部に所属していたが度重なる東京への遠征や、監督が決める非効率な練習に嫌気が差し、もう高校では野球はやらないと心に誓った筈だった。そして、中学校では、ピッチャーをしていたこともあり、肩をいかそうとハンドボール部に入部するが、入部して3ヵ月で辞めてしまう。3ヵ月後、僕が向かった先は野球部だった。しかし、野球部は、埼玉を制覇し甲子園に幾度も出場するような名門で、3ヵ月後に入部する者なんて異例中の異例だった。そのことは、学年中を少しざわつかせたと僕は、今でも思っている。しかし、ここからもっと''凄い''ことに野球部を3日で辞めてしまったのだ。これには、野球部の連中が卒業するまで、「お前は、野球部の歴史を作ってくれたよ。練習きつくて、辞めた人は、沢山いたが3日はどうやら最高新記録みたいだぞ。」僕は、そんな、称号が卒業までついてまわり、野球部の連中にからかわれ続けると思うと吐き気がした。でも、冷静に考えてみると3日で辞めたのは我ながら''凄い''ことをやってしまった気もする。

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