11 ……地球最後の日には、私は、先輩と一緒にいたいです。

 ……地球最後の日には、私は、先輩と一緒にいたいです。


 ……先輩。卒業しないでください。

 そう言って、小夜は泣いた。(絶対に泣かないって決めてたのに泣いてしまった。……すごく悔しい)

 私の地球最後の日の告白は、もしかしたら、最低の告白かもしれない。(泣いちゃったから)

 そんなことをぎゅっと両手を膝の上で握りしめながら、思っていた。小夜の読んでいた恋愛小説である『明け方の夜は君色に染まる』の小説は今、机の上に置いてあった。(避難させていた)……ちょうど、綾川先輩が読んでいた木星の表紙の宇宙の雑誌の隣に、その恋愛小説の本はあった。


「今から一年前。去年、稲田先輩が卒業した日に、僕は今の三笠さんみたいに、先輩に告白したんだ。ずっと先輩のことが好きでした。僕とお付き合いをしてくださいってね」

 にっこりと笑って、綾川先輩はそういった。

「え?」

 その言葉を聞いて、小夜は本当に驚いた。(思わず、自分の告白の気持ちが一瞬、宇宙に飛んで行ってしまったくらいだ)

 綾川先輩が稲田先輩のことを好きだっていうことは、ずっと二人と一緒にいた小夜には……、もちろん、わかってはいたのだけど、去年の今日と同じ日に、稲田先輩の卒業式の日に、綾川先輩が稲田先輩に(今の私と同じように)恋の告白をしていた、なんてこと、(当たり前だけど)小夜は全然知らなかった。

「まあ、ふられちゃったんだけどね」

 ふふっと笑って、綾川先輩は言った。

「ふられちゃったんですか?」

「うん。稲田先輩には、ほかに好きな人がいるんだって。その人は年上の人らしいよ。稲田先輩の幼馴染の年上の男性らしい。稲田先輩はその人のことを追いかけて、小学校、僕たちの通っている星見中学校に通って、それから、今の県内最高の進学高の公立高校を受験して、当たり前のように受かって、そしてその憧れの先輩と一緒に、今、稲田先輩は薔薇色の高校生活を送っているってわけ。たぶん、大学も同じ大学に行くんじゃないかな? 東京の大学。この国で一番偏差値の高い学校だね」窓の外の真っ赤な夕焼けの風景を見て、綾川先輩は言う。

 その綾川先輩の話を聞いて、すごく稲田先輩らしい話だな、と小夜は思った。

 稲田穂村先輩とは、そういう人なのだ。(努力の人。行動力のある人。諦めない人。それから、自分勝手の行動で、周りの人にちょっとだけ迷惑をかける人だった)

 小夜もずっとそんな稲田穂村先輩に憧れていたから、綾川先輩がなぜ、自分が振られたはずの、稲田先輩の話をそんなに笑顔で話すことができるのか、そのことが小夜には、よく理解できた。

(私も今、きっと鏡を見たら、笑っていると思う。あ、そうだ。忘れていた。稲田先輩は、こんな風に、周りの人を自然と笑顔にできる才能のある人でもあった)

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