10 星を捕まえる
星を捕まえる
……やっと捕まえた。やっと、……あなたに手が届いた。
「……先輩。やっぱり卒業しないでください」小夜は言った。
いつの間にか、小夜は泣いていた。
思い出すと、やっぱり悲しくなった。
……やっぱり私は、この部活が大好きなんだ。
この(綾川先輩に一目惚れしたという、よこしまな理由で入部した)天文部が大好きで、もう卒業してしまった稲村先輩のことが大好きで、(稲村先輩は、まるで本当のお姉ちゃんみたいだった)……そして、今日。この私たちの星見中学校から卒業してしまう、……綾川波先輩のことが、やっぱり私は大好きなんだ。
小夜は顔をあげて綾川先輩のことを見つめる。
綾川先輩はじっと、泣いている小夜の顔を見つめている。いつものように、宇宙に興味を惹かれたりはしていない。(先輩は私の近くにいてくれる。宇宙に行かずに、地球にちゃんと止まっていてくれた)
「先輩」
小夜は言う。
「なに? 三笠さん」綾川先輩は言う。
「私は、綾川先輩。先輩のことが好きです。……本当に、大好きです」
かろうじて、涙をこぼしながらも、声は震えていたけど、にっこりと笑って小夜は言った。(笑えたのは、きっと練習したおかげだと思った)
「ずっと前から、ずっと、ずっと前から、先輩のことが好きでした」
黙って小夜の告白を聞いている綾川先輩に小夜は言う。
「先輩」
「うん」
「私の、今の精一杯の、地球最後の日の告白の、返事を聞かせてください」小夜は言う。
小夜は真剣な顔をしている。
その顔をじっと、綾川波は見つめている。(こんなに真剣な綾川先輩の顔を小夜は今日、……初めて、見た)
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