6 時計の音
時計の音
本当に時間が止まればいいのにな……。
小夜の言葉を聞いて、綾川先輩はきょとんとした顔をした。
「今日が地球最後の日だったら? なにをするか?」
「はい。先輩はなにをして過ごしますか?」
「うーん。そうだな……」
綾川先輩は宇宙が大好きな人間だった。(小夜とは違い、本当に宇宙や星を愛している人だった)
だから、こういう話は先輩はなんだかんだ言っても大好きなのだ。(実際に去年まで、もう卒業してしまった稲田先輩とよくそんな話をしていた)
小夜はじっと、強い目をして綾川先輩のことを見ながら、先輩の答えを待った。
その間、二人だけしかいない天文部の部室の中は、しんと、まるで時間が止まったように静まり返っていた。(実際にはかちかちと時計の針の進む音は聞こえていたけど……)
「やっぱり、なにもしない。かな?」先輩は言う。
「なにもしないんですか?」小夜は言う。
「うん。なにもしない。別にいつも通りに普通に過ごすよ」にっこりと笑って先輩は言う。
「『地球最後の日』なのにですか?」
「うん。いや、『地球最後の日』、だからこそ、かな?」綾川先輩はそう言って、にっこりと嬉しそうな顔をして笑った。
きっと、いい答えが返せた、と思っているのだろう。実際にその先輩の言葉を聞いて、なんだかすごく綾川先輩らしい答えだな、と小夜は心の中で思い、そんな答えを言うことのできる綾川先輩のことを微笑ましく思った。(そして、もっと綾川先輩のことが好きになった)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます