十分(大嘘)で異世界救うアルバイト

奈津

第1話

俺はこの前まで自宅警備員ニートだったのだが働く必要ができたので、


とある求人情報を元に面接に来たのだが、


「私はアルミナ《詐術師》。貴殿には世界を救ってほしいのです。」


初手から意味不明な発言が飛び出していた。話を聞くと、


制限時間は相手世界で10分、現実世界で10時間

開始位置はボス戦直前

・仲間はなし

・死亡してもこの世界線に戻るだけ

・成功報酬は一千万円という破格の仕事だった。


俺はすぐ受けることにした。


承諾するといきなり異世界に飛ばされた。

アルミナいわく、「行けばわかる」と。


視界には、俺がニート時代プレイしていた、一人称RPGという変わったゲームの画面が見えていた。


データは自分のセーブデータを抜き取ったような

いつもの装備であった。


ちなみに自分の職業はプログラマーだ。

ユーザー数1億を誇るゲームで自分しかいないのである。

実際には、存在するが、アクティブユーザーが一人で、

新規選択ができなくなったからである。


難易度は変態級で、

戦闘が始まったら画面に次々と出てくる間違ったコードを

直しつつ敵の技を避けるという、

もはやどう回避すればいいのかすらわからないものである。


とやかく言いつつも、ボスを発見した。残り9分。


ドラゴンのボスは、安定の広範囲ブレスをかましてきた。


俺は、エディターを開き、高速で修正をかけていった。


やつのブレスにはバグが含まれており、

一度食らうとどっかでバグが起こる、大変厄介なものであった。


俺はキーボード片手に避け続け、一つのファイルが完成した。


これを送信すると技を発動する。


しかし、この技はすべてのファイルを直さないと意味のないという鬼畜仕様であり、まじで同業者はいなかった。


20のファイルのうち15のファイルが難なく終わり、残り4分。


ボスの動きが変化し、高速なレーザーが飛んでくるようになった。


俺はキーボードを抱えつつ避け、スキがあればコードを直していたがなかなかきつい。


俺は最終手段として、手持ちにあった、エナジードリンクを5本飲んだ。


エナジードリンクは、俊敏が1つに付き3倍になるスグレモノで、


俺は難なく、レーザーを避けつつコードを修正していった。


そして残り時間1分。最後のファイルとなった。


ボスは、最後に大技と言わんばかりの必中スペルをかまして妨害するが、即座にバグを直し、送信した。


そして、ボスはうめき声とともに散っていった。







俺はブラックなIT企業に務めるプログラマーだ。


いつの日かこんな求人に出会えることを妄想し、今日を生きている。

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十分(大嘘)で異世界救うアルバイト 奈津 @ufo0403

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