第22話自称聖者のクズくてニューゲーム


あらすじ


とあるファミリーレストランで楽しく食事をする五人の男女、そのうちの一人、神峯 隆二(かみみね りゅうじ)は成績優秀、美少年、ハーレム、人脈……全てを持って生まれた男である。

彼らのテーブルに注文されたメロンソーダを運んできた男こそ、この物語の主人公である。

メロンソーダをテーブルに置いた瞬間、彼らは勇者として異世界に召喚されてしまう。

しかし、召喚がうまくいかず死んでしまった5人と巻き込まれ死にした1人は、神の計らいにより、転生する。


完璧主人公の神峰隆二による俺TUEEEEでハレームな物語を一人のイレギュラーがダークファンタジーに塗り替えていくことになる……。

色んな部位のポロりがあるよ!(グロ注意)


◇◆1








「なぁ!隆二、後で二次会行こうぜ!


「駄目っ!私とりゅうくんは後でデートするの!」


「相変わらずモテモテだな…」


「ちょっと!?里奈ぁ!デートってどう言うことよ!」


とあるファミリーレストランで楽しく晩餐を開いているのは、私服姿の5人。

一人はやたら元気のいいヤンチャな男、一人は隆二と呼ばれる男にベタつく女、

一人は神経質ぽい細メガネのイケメン、

一人はこれまた気の強そうなお嬢様、

そして一人はその渦の中心の美少年。

その名を神峯隆二という。

成績優秀で人脈も広く、その甘いマスクにこの世の女性はメロメロになるだろう……一言で言えば完璧人間である。

ただし、純粋すぎる彼に対し友人達はしばしば不安を覚えるのであった。


「デートしたいの?じゃあみんなでデートして帰りに二次会しよう!」



「「「「はぁ〜…」」」」



訂正しよう……完璧人間である彼は、俗に言う残念イケメンなのだ。

女心など知らず、

”二次会行きたい人とデート行きたい人がいる”→じゃあ、みんなで行けばいいんだ!

全く残念である。


「りゅうくん!私と二人でデートはだめなの!?」


「いやでも、二次会行きたいって言ってたし…」



数時間前から二人の男と二人の女に挟まれて楽しそうにイチャつく隆二を、ファミレスの従業員が忌々しそうに睨むつけていた。


"いつまでいやがるんだ死ねリア充が"

と悪態をつきながら注文を受けたメロンソーダ3つとストロー5本を運んでいた。


「失礼します。こちらがメロンソーダになります」


男はなぜ5本も必要なのかという疑問を持ちつつメロンソーダをテーブルに置いていく。

先ほどからイチャつく彼らにイラついていた彼は手に持ったストローを目玉にぶっ刺したい衝動に駆られるが必死に押し殺し、笑顔で話しかける。


「わぁー、りゅうくん一緒に飲んでいい?」

「わ、わたしも!」

「まぁ、いいよ」


これから起ころうとする究極のリア充の行為に身を震わせていた。

ファミレスの従業員の頭の中がリア充どもに対する悪意で満たされたとき、それは起こった。


地面にいきなり幾何学模様と謎の文字が書かれた光の紋章……いや、魔法陣が現れ6人を包み込んだ。

この光景にファミレス中が混乱に陥り、ちょうど魔法陣内にいた6人も逃げ出そうとする。

しかし、空間が固定されたかのように体が動かず声がだせず、必死の抵抗も虚しく光に飲まれた。




徐々に光が収まり、眼を開けると6人が椅子に座らされていた。

辺り一面草原にどこまでも青い空、不自然に浮かぶ学校椅子に座らされていた。

まるで一昔前のWi○dowsのスタート画面のような草原だ。

そして、この空間に来ても体を動かせずや声もだせず、ただただ静穏に包まれていた。

そのせいか緊張に包まれた空気感になっていたが一人邪(よこしま)なことを考えている奴もいた。


"これって異世界召喚ってやつか?だとしたら俺は巻き込まれた主人公だな。巻き込まれた主人公って最強だしな"


先ほどから登場していた従業員の男、加藤志乃はこの日、ファミレスを経営する親戚から頼まれたて渋々、仕事を受けた助っ人従業員である。

本業はゲーム実況者で主にVRMMOで対人戦を主とするプレイスタイルをしている。

”ゲーム実況者ってつまり遊んでるだけだろ?暇だろ?”

と親戚に挑発され、手伝ってしまった志乃である。

さて、ファンタジックな出来事に巻き込まれ混乱しているのか、自らを主人公やら巻き込まれた最強とかほざいているが暖かい目で見てやって欲しい。


『さて、混乱しているところ悪いのだが、聞いてくれないかな』


とここで空間をこじ開けるように景色が歪み中から薄く発光する杖を持った女性が現れた。


『声が出せなくて不満だろうがすまないね。私は五月蝿いのがきらいなのだよ』


志乃曰く、リア充組は女神のような女性に釘付けであったが、肝心の志乃は虚ろな目で女性を見ながら”ああ言う杖って課金装備だよな”とどうでもいいことを思っていた。


『おっほん…。私は君たちで言う異世界で女神をやっているルーフェルという。さて、説明を始めていいだろうか』



そんな志乃のアホな思想を感じてか一度咳払いした自称女神はジロリと志乃を睨みつけてから次へと説明を始めた。


『君達は数秒前、我々神々が管理する異世界カールバスから召喚された。

しかし、其方……つまり地球の管理者により妨害され君達は時空の狭間に閉ざされてしまった』


『本来ならば永遠に彷徨うことになるところをこの私が見かねて助けてあげたのです』


『おお、かわいそうに…そう思った私は地球(むこう)の管理者と相談し転生させることになったのです』



とても演技くさい話し方にお前はNPCかとツッコミを入れた志乃を無視し自称女神(痛)は話を続けた。






『君達10代…あー、一人20後半もいるが、あまりにも若くして死んで可哀想だと嘆く地球の管理者が、融通を利かせてくれたのです!』




は?お前が閉じ込めといて可哀想と嘆くって頭逝かれてんだろ…クタバレクソと地球の管理者に呪言を吐きつつ、前座はいいからさっさと結論を言えよと常に上から目線の志乃。




『ただ我々も暇じゃないのでな、一人一人希望を聞いてられないのだ。わかるな?

今流行りのキャラクターメイキングで自由に選んで貰おうと思うのだよ』


キャラクターメイキングで転移とか転生とかが流行っていることは、おっさんはゲームはやるが漫画もラノベも読まなかったため知らなかった。





ーーパンっ!



女神は杖を掲げ……ようとして首を傾げたあと杖を投げ捨て手を叩いた。

すると、目の前に半透明の画面が現れ、VRMMOでキャラクターメイキングをするときのような表示が出現した。

不思議な画面を出現させた女神に対しこの場にいた全員が”杖使わねえのかよ”とツッコミを入れたのは余談である。



『これから君たちがいくのは剣と魔法の世界だ。君たちの世界のゲームというものを少しばかり流用して作らせてもらったのだがな。…流用と言っても少しだけ参考にしただけだがな。

まぁいい、つまりはファンタジーな世界だから間違えておかしなスキルを選択しないようにということだ』



よくあるやつね。本当に適当だな…世界を作るときにゲームを流用とかしていいのかよ。

著作権問題になるぞ?


『制限時間は20分だ。時間になったら自動で転生する。選ばなかったらランダムになるし、今後に関わるのだから慎重に選べよ。”始め!”






……といったら声も出せるし体も動かせる。最後に質問…一人一つまで答えてやる』






やめろって、それ。

さっきからうざいから。

◇◆2




優しく美しい女神様は、死に損ないの人間どもに慈悲を与え、神に意見を言うチャンスを与えたのでした。


はいウザい!死ね。( ̄▽ ̄)/

===


『一つだけ質問に答えてやる

なんでもいいぞ?』



一つだけとかケチだな。

器ちっさ…だから胸も……(可哀想に)




『愛川里奈、答えよ』


ファミレスでやたらベタいていた女の子が指名された。

それにしてもウザい名前だな。



「え、あ、はい。

えーと、じゃあ、項目にハーフとあるのですが、あー、吸血鬼とスライムとかエルフとドラゴンとかのハーフって可能なんですか?」


何、その組み合わせ…

あり得ないだろ…



『ふむ、不可能ではないな…ただ、組み合わせによってかなりいいもの、悪いものもあれば、失敗すれば悍ましい臓物の塊に転生する可能性もあるといっておこう』


「ハーフ怖っ!あ、すみません」



『次だ。時間がないので先生どんどん当てていくぞ』


このネタはわからなかったのか10代組はポカンとしていたが、俺は少しツボった。



『奏波健太(かななみけんた)、質問しろ』



指名されたのは、神経質そうなメガネをかけたイケメン野郎である。

神経質そうな顔をしているわけではなく、神経質そうな奴がかけてそうな縁の細い白いメガネをかけていたためだ。

生徒会長タイプの人間だろう……と分析する(分析者 加藤氏 執筆者 加藤氏)



少し考えるようにして顎に手をあて、メガネをくいっとしたあと神経質クソメガネは口を開いた。


「では、僕らに何か使命はあるのでしょうか?」


『いい質問だ。

特にない。いや……ないとも言うしあるとも言う。それは選んだ種族にもよる話なのでな』


なんか含みのあるいいかただな





まだまだ質問は続いていく。



イチャつく女の子の片割れ斎藤莉亜が質問した。


A地球に帰れないのか


Q転生したって言ってんだろ、このハゲ



次に質問をしたのは元気いっぱいガキ大将の碁宇田 隆義(ごうだ たかよし)


Aはい、はい!はい!ステータス振り分けで筋力極振りとか出来ねえーの?

(※志乃にはこう聞こえている)


Q貴様の脳は既に筋力極振りなようだな。ゲームじゃないのだから無理に決まっとるわ!アホめ、脳筋が

(※志乃にはこう聞こえている)




次にリア充神峰が手を上げた。


A女神様、質問があります。

僕らに祝福(チート)は頂けるのでしょうか?


Qああ、それに関しては、その画面に表示されているキャラクターメイキングポイント《CP》が人によって違う。

普段からいい行いをすれば多いし、人から恨まれる行いをすれば低い。それだけだ。ちなみに神峯隆二、お前は一番ポイントが多い。一番低い奴に比べて12000Pも違うぞ



cpって安直だな。





「あ、だから16800pもあるんだ!」



"は?1万…6千だと……俺、4800pしかねぇんだけど!チートイケメンコロスシネ"











『最後は貴様だ。加藤志乃聞くが良い』


ふふふ、待っていたぞ!

聞く質問は一つしかないな!



どいつもこいつも下らない質問ばっかしやがって!


なんでも


って言われたらアレしかないだろ!











「女神様ー、何カップ?」




「「「「「は?」」」」

『え??』




同時に俺以外の頭上にクエッションマークが浮かんだ。

女神に至ってはポカーンと口を開けてまるでエサを待っている鯉のようである。


ポケットに入っていたチロレチョコを投げ入れてやると……あ、食べた。





『口の利き方がムカつくが特別に答えやる。

私は傲慢でな女神だからな器が小さいんだ。

だからこの通り胸も小さい』




「ありがとうございます。ぺったん女神様!」


『ふはははは、我を讃えよ!』


「ぺったん!ぺったん!ぺったっ……ぶふう!?」



女神の声真似をして一人芝居をしていたところ回復した女神にビンタをされ吹き飛ばされた。


「ふ…図星か」



『ななななな!?ち、違いますぅ!私だってBはありますよ!』


涙目になって弁明する女神

これが素か。


「誰もAとか言ってないから。ないと言ってんだよ」


『そんなこと、ないですぅ!!!』


残念女神かよ。











「大丈夫?」


『おっほん、さて、質問はこれで最後だから、これから始めて貰おうと思う。ただし他人の画面は見れないので注意しろよ。

キャラクターメイキングが完了次第大部屋に転送される。そこでスキルの試しうちが可能だ。それまでは椅子から動けないのでしっかりやれ。



始めぇ!』


【19:59】









◆◇3


side 神峰


ひたすら下に落下しながら幾何学模様や謎の文字が散らばる空間が続いていく。

赤、黄、青といった色で作られた魔法陣が無限に散らばり続ける宇宙を抜け、何重にも重なりあいは馴れ合う並列世界の海を抜け、ミラーハウスのように何処までも同じ世界が続く多重次元を超え深く深く落ちて行く。永遠にもひと時にも感じるその時間はついに終わりを告げた。


いきなり叩きつけられたような感覚を覚え、目を思いっきり開けるとそこには巨大な女性と男性と何人かの人がいた。

何か話しているようだったが水の中にいるような感覚で、聞き取れずただただふわふわとしている間に自然に瞼が下がり寝てしまった。




それから、しばらくして再び目を覚ますと、やはり隣には巨大な女性と男性がいた。

こんな巨人に近づかれたら本当なら逃げたくなるはずだが、不思議とならない。

巨大な女性は薄緑色の髪に青い眼をしており、まるで聖母のような美しさ、そして巨大な男性は煌めく金髪にこれまた神々しい白色の眼をしている。


それを遠巻きに見守る何人かの人間。ただ、転生の副作用なのかうまくピントが合わない。

声も出せない。あーとかうーとかは言えていると思う。ただ声が聞こえないだからわからないものはわからない。


ん?転生……そうか、そうか!

巨人ではなく転生した俺が赤ん坊だからなのか!

特に意識をしたわけではなかったが、口から自然に笑い声を発しており、巨人の男性が微笑ましげにこちらをみていた。

子供だからかな?感情がもろにでるようだ。


既に何度か寝起きを繰り返しているが如何やら転生は成功したようだ。

女神に見送られたあと、おかしな空間を落ちていった時は如何なるかとヒヤヒヤしたが、なんとかなったようだ。

やはり、女神ってか神のシステムで作った転生体というべきか、普通の子供に比べて覚醒率が高いな。

本来なら赤ん坊にこんなに難しいことを考えることはできないはずだから、やはり現地の人間と違うのだろうな…


ただ許せないのは、なぜ赤ん坊から一からやり直さないといけないのだということだ。

ほぼ生まれたばかりなのに覚醒しているせいで、漏らすわ、言葉が通じないわ、無意識に喚き散らすわ、いいとし (精神的に) にもなって女性から乳を吸うわ、全くこの痴プレイをなんとかして欲しいぜ。


「うぁぁぁぁぁぁ!やぁぁぁぁああ」

(オラァ!早よミルク寄越せやぁぁ)









なんだかんだ赤ん坊という生に悟りを開き過ごすことしばらく、もう今日で1年が過ぎた。

一年も時間を無駄にしたとか、転生したならなんか出来るだろうとか思ったかもしれないが無理、赤ん坊の体では出来ない。身体を動かそうとすると全身に筋肉痛を負ってるような痛みが走る。

よくあるラノベの主人公みたいに赤ん坊が歩けたりするわけねぇだろうがアホか?


まぁ、運動が嫌いって訳もあってほとんど動かず寝てばっかいたせいか、ハイハイと横にゴロゴロ転がることしか出来なかった。

だからと言ってなんだということもない。

え?移動出来るなら本を読めって?


する訳ないだろ、俺が…。


俺は勉強が大大、大っ嫌いなんたよ。

例え魔法が使えようと、言葉を話せるようになろうと本は読まん。自主的には絶対やるつもりはないな。

そもそも天才コースは望んでないのだよ。


俺が生まれた家はなんかすげー広い。もしかしなくとも金持ちだ。

廊下にまで出たのは一回だけだが、ふかふかの絨毯に窓から覗く何処までも続く庭園、重厚な木の扉に、さらには美しい天井画、おそらく神話をモチーフにしたもの。

屋敷自体が日本のように燃えやすい木ではなく頑丈な石で出来ているところを見ると世界観は中世から近代にかけての西洋だろう。

以前テレビで西洋建築の特集を見たことあるが、庶民の家は同じ石でも、汚くて大きさもまばらなただの石に木の屋根を乗せたような物だったが、重要文化財に指定されるような屋敷…いや宮殿かな。は、大きな石の柱に大理石の床というような感じだった。まさにこの家がそうだ。


そこに住める俺は、豪商か、貴族かの子供になるだろう。


前世というか転生する前は、足繁く美術館や博物館に通っていたくらいだったので、この屋敷の凄さがわかる。

そして二人の巨人つまり赤ん坊目線での両親と思われる男女は服装もさることながら身につけているアクセサリーも一線を画すような美しさを持っている。


ここで俺が思ったことは一つ、


(うっわ、めんどくせえのキタァー!)


金持ちとか権力者って大概争い事に巻き込まれるし跡を継がないといけないし、礼儀正しくしないといけないし、勉強しないといけないし、人脈作らないといけないし、冒険に行っちゃいけないし……うわぁぁぁぁ!いやダァ!






おほん…落ち着きました。

あの後、感情のストッパーが外れたみたいで泣き散らしたあと母 (仮)にあやして貰いました…


両親はそれほどでもないが、普段世話をしてくれるメイドさんらしき人が一歳にもなって言葉をまるっきし理解していないことに危機感を感じているようで、起きている時はやたらと絵本を読んでくれる。

勉強嫌いな俺でも絵本の時間は好きで、流石、金持ちというべきか、魔法が込められた本で、すげー面白い。

本当にファンタジーなんだなって思ったけど、魔法が込められている絵本は分かりやすく言うとホログラムみたいな感じだ。


聞いている言語も本に書いある文字も全く理解出来ないがホログラムによって俺のように教養のない子供でも楽しめるように工夫されている。

一番のお気に入りは、闇の陣営に堕ちた魔法使いが次々と悪徳貴族を締め上げる物語で、最初はこんなの子供に聞かせる内容かよ。とか思ったが、虜になっていた。



絶対に自分から勉強はしないと誓っていた俺だがその固い誓いは半年で裏切ることになる。

赤ん坊に転生してから早一年半、どうしょもなく暇なのだ。

鏡もなければ窓もない、無駄に広い部屋に一人きり、ベッドや本、それから魔法的なエネルギーを感じるランプ、そこに偶に世話役のメイドさんが来るだけ、暇だ…。


よし、文字がわかる程度には、勉強しよう


半年前の自分から”裏切り者めぇ!”と聞こえた気がしたが幻聴だ。

いつも寝ているベッドの隣に置いてある子供でも手が届くように作られた本棚から適当に本を取り出し読んでみる。

なになに?初心者魔法使いのための基礎、へぇ。



読んでみる。



読んで…みてるよ。



読んで……ぐーーzzZ








はっ!ヤバ…寝てた。

高校生のとき、英語の教科書読んでた時もこんな感じだったな。


あい きゃーん すぴーく いんぐりっしゅ。

あい すぴーく じゃあぱにーず。



言ってて恥ずかしくなるな。

文字はとりあえず保留で徐々に覚えて行こう。

何をやるかって?ずばり、スキルを鍛えるのだ。


魔法系は文字が読めないから後回しだが、キャラクターデータを引き継ぎして一人葬りさった後、まるっきし身体を動かしていない。

これでは腕が鈍ってしまうと言う訳で少し早い気がするがスキルの練習することにした。


クソ雑魚な斥候が最初から持ってるスキルである影魔法だが、最初は影にものを収納できる便利機能くらいでしかないが俺のようにレベル100越えをすると、壁や天井に張り付いたり、影と影を移動したり、影をまとわせて身体強化をしたりと色々できるようになる。


今回は身体強化もどきを使って無理矢理立ってみることにした。

そのまま壁まで歩いて壁に張り付いて見たがなんの問題もなかった。


そして壁から飛び降りた俺は右手を広げ床に叩きつけーー口寄せの術!……とはならないが、スキル《地形把握》を使用した。

スキル《地形把握》は、斥候の隠しクエストで発見できるもので大変重宝している。


皆にもわかりやすく説明すると、よくあるMMO系のゲームとかで右上に表示されているマップを頭の中に出せるスキルなのだ。

床に叩きつけた俺の右手から波状に魔力が広がり徐々にマップを完成させつつあった。


ん?地下に見ちゃいけなさそうなヤバそうな部屋を見つけてしまったが黙っておこう。


マップで確認したところ、メイドさんがこちらに向かってきていたのでスキル練習は終了し、ベッドにいつも通り潜り混んだ俺は回復魔法で癒し寝たフリをした。



そういえば、死体どうなったんだろ…。

腐ってそうだし、入れときたくないから夜廊下に出て窓から捨てておくか。








◇◆



屋敷の者が寝静まった後、廊下を歩く者がいた。


こんな夜中に明かりもない中、コソコソと行動する奴はなにか疚しいことがある者がだろう。

重厚な木の扉を少し開けてするっと廊下に出た陰はまるで明かりのある場所を進むかのように早々と歩きだし、窓に手をかけた。

その陰から生える影がもぞもぞと生き物のように動き出すと、窓からなにか巨大な生臭い物を落とした。

3階から落とされたそれは地面に叩きつけられることにより、ぐしゃぐしゃに潰れてドス黒い赤い花を咲かせた。


その花から臭うあまりの悪臭に吐き気を催した陰はその場をそそくさと逃げたし、ベッドに潜り何事もなかったように眠りについた。






後日、密かにアンデット化していた彼が浄化されたのだった。


◇◆4






あれから何度か季節が周り俺は5歳になった。


よくラノベでは3歳でステータス鑑定や、幼少部の学校に通ったりするがそう言うものはなかった。

替わりといったら変だが、かなり勉強をした。

自分でしたのはスキルの応用くらいだが、父の雇った家庭教師やお世話をしてくれるメイドさんに色々と知識を詰め込まれた。

5歳になるにもかかわらず忙しい父や母は、俺を放ったらかしにして仕事に没頭していたらしい。

そこで何故「パパとママはいないの?」と子供らしく使用人に聞いてみると衝撃の事実が判明した。

今まで貴族か大商人の息子だと思っていた俺だが、その実情は魔法ギルドの総師一家というもっと大物だった。

魔法ギルドとは、冒険者ギルドに次ぐ巨体グローバル組織で、種族、国家、言語の垣根を越え世界中に存在する魔法使いが所属する組織なのだ。

この屋敷は魔法ギルド総本部兼アルテイル家 (ウチ)住居になっていて、その面積は半端じゃない。

アルテイル家は6代前の大賢者 ユリス=アルテイルが数多くの魔法を発明し又、魔法使いを保護する組織を作った時から始まった。

代々アルテイル家の者が総師を務めており下部組織として魔法学園系、魔術ギルド、魔法研究所、魔法陣管理局などが存在する。

ちなみにこの魔法ギルド総本部があるユリス魔法国は魔法ギルドの為に作られた場所で、立場的には中立で首都以外の街と畑が存在しない。


そして俺の兄である、クルスはかなりステータスに恵まれているらしくほぼ跡継ぎになることが確定している。


そして今日が運命の日、もし今日のステータス鑑定で兄よりすごいのが出れば跡継ぎ候補に入れるかもしれないらしい。

正直言って嫌です。

まぁ、はっきり言って跡継ぎにはなれないと思うがな。

まず俺はキャラクター引き継ぎのおかげで職業が斥候になっている。

それにおそらく年齢的な問題でレベルとスキルレベルが封印されていると思う。

まぁ、練習していたスキルはある程度伸びていると思うが。

そしてトドメに斥候は一般的な攻撃魔法は使えないことだ。



今日はステータス鑑定の日なので久しぶりに部屋から出て一階にある鑑定施設まで向かった。

道案内をしてくれるのは執事のジルハートといつもお世話をしてくれるメイドのナーシャ。


鑑定施設があると言う水の間に来るとそこには両親と兄が待っていた。


「よう!レイルゥ、別に緊張することはないんだぜ?どうせオレ様が跡継ぎなんだからなぁ」


うわー、大人げねぇ。


5歳の弟に9歳の兄が、そんなこというとは、父さんなんか言ってやって下さいよ!


「レイル、別に気にすることはないぞ。

跡継ぎになれなくとも他に道はあるのだからな……ってイテェ!?」


ねぇ、なんでそうやって傷口に塩を塗るようなことをいうのかね……終いには母にゲンコツ喰らってるじゃないですか。いい大人が…。


「ははは、兄上には敵いませんよ。流石ステータスに恵まれていますね」


おまえはステータスに恵まれているだけで自分では何も出来ないアホのゴミクズチート野郎だと罵ってやった。

しかし、アホの兄は当たり前だみたいに返事を返してきた。アホだ…。









「そろそろ、鑑定を始めさせていただきます。」


そうはなし始めたのは、ステータス鑑定歴45年のベテランさんだ。

彼はイケメンなんだと思うが、うちの家系が美男美女なので特別かっこいいとは思えない。


「ではレイル様、こちらにお立ち下さい」


と一息入れてから


「我が大いなる神々よ。真なる示しこの者に授け給え!《ステータス付与》」


ん?ステータスって普通に見れなかったのは付与して貰わないといけなかったのか。

うわ…恥ずかしい。

何度も言い方変えてステータスって叫んでたわ。


「お疲れ様でした。これからはステータスと呟くだけで表示できるようになります。」



お疲れ様って俺ぜんぜん疲れてないよ。

魔力使ってる貴方の他が疲れてるでしょうに。



「さあ、レイルよ。やってみなさい」


「わかりました。父上……《ステータス》」


_______________

名前 レイル=アルテイル

Lv 1 (462)

職業 斥候

ユニークスキル

《☆魔眼/観察》《☆気配断絶》《地形把握Lv 3》

魔法スキル

《影魔法Lv 6》《回復魔法Lv 8》

スキル

《収納Lv 1》《追跡Lv 1》《教養Lv 3》




加護 ーー

祝福 女神の祝福

称号 見習い治療師

_______________



「「おお!?「ん?「え?」」」」


「魔眼だぁー。わーい」


一応、無知なフリをしておくかな


「……では職業はいいとしましてスキルと祝福、称号について鑑定されてもらいます。」


_________

《☆魔眼/観察》

斥候の持つ鷹の目(遠距離眼)と蛇の目(暗視眼)が合わさった魔眼


《☆気配断絶》

気配を完全に消すことが出来る。主に斥候、暗殺者が持つスキル


《地形把握Lv 3》

???

【本人のみ観覧可能】斥候の秘術であり、魔力を波のように飛ばすことでソナーのように地形を把握出来る

>マップ

>気配感知

>魔力感知


《影魔法Lv 6》

影を操る。闇魔法の派生

斥候のみ取得可能魔法


《回復魔法Lv 8》

状態異常、呪い、怪我を治す。


《収納Lv 1》

非生物、非液体のみ収納可能。

広さ3×3m


《追跡Lv 1》

マーキングした対象を追跡可能


《教養Lv 3》

勉強頑張りましたね。

>思考加速1.3倍

_________

女神の祝福

???

【本人のみ観覧可能】引き継ぎをした不自然なステータスを封印する。

又、一部のスキル、称号を隠蔽する。

_________

見習い治療師

回復魔法称号1200回以上で獲得可能

>回復威力1.1倍

_________



レベルの(462)は隠蔽されてるみたいだな。それとレベル、スキル共に封印されているみたいだ。


「どうですか?父上、母上」


「ああ、暗殺者みたいなステータスだな」


「レイル…残念ながら魔法使いは向いていませんね。」


「はっはっはっは!ホラァ見たか。この無能め!」


魔法使いとかもう古いんだよ。

これからの時代は魔法も物理攻撃も使える万能型か、前世のゲーム内での俺のように斥候、ヒーラ、アサシン、魔法使いを一人で出来るようなのがいいんだよ。

だいたい、魔法も武器もと欲張ると器用貧乏で弱くなるとか言ってたやつらは皆雑魚だった。

自分より200くらいレベルが上の魔法使いでも倒せるくらいに雑魚かった。

無能はどっちだろうなぁ?




「別に魔法使いになるつもりありませんしちょうどいいです。魔法で戦うよりも回復魔法で沢山の人達を救いたいのです。」



「「……レイル。」」「坊っちゃま、私感動致しました」「ふん。」



え?こいつら純粋過ぎない??俺、回復魔法で金持ちから医療費ぼったくるつもりだよ。

ナーシャさん、感動されても困ります。


「負け惜しみを言うのもほどほどにしろよ!これこそが神に愛されし者との違いダァ!はぁぁぁぁぁ…ぁああ!《ステータス》オープン!」


おい、兄よ。ツッコミどころがありすぎる。はぁぁぁぁ!ってなんだよ、意味ワカンねぇよ。てかオープンいらねぇし。アホか!?



_______________

名前 クルス=アルテイル

Lv 17

職業 ウィザード

ユニークスキル

《☆全属性魔法適正》《☆魔法の才》《☆魔道書召喚》

魔法スキル

《全属性魔法Lv 3》《魔力増加Lv 7》《魔力回復Lv 12》《☆魔力視》

スキル

《教養Lv 2》《拷問Lv 4》《詐欺Lv 5》




加護 魔法神な加護

祝福 精霊王の祝福

称号 若き魔法使い 犯罪者予備軍 奴隷殺し

_______________



フワァァァァ!勉強嫌いの俺より教養低いじゃないすかw


勿体ねぇな、素晴らしいチートステータスが悪行のおかげで霞んで見えるぜ。

拷問と詐欺のスキルもやばいが犯罪者予備軍と奴隷殺しの称号があってよく跡継ぎに出来るな…。

次の代で魔法ギルド解体だな。こりぁ。


確かに神に愛されてるとしか思えないチートさだな。

あれか、俺が奏波君を殺害したのを怒って嫌がらせをして来たのか?


まぁそんなことはどうでもいいや。

兄よ、ありがとう。貴方のおかげでヤりたい放題出来そうです。

今の時点で俺の評判は使用人達から大変よく代わりに兄の評判は非常に悪い。

これを利用して、俺がやった責任をどんどん兄に背負って言って貰おうか。




気づいた時にはもう遅い。

せいぜい俺のために生き足掻いて貰うとするかな。









◇◆5


あの日からどんどん時間は進んでいった。

学校に行かなかった俺は、家でダラダラしながら特に悪さなどせず堕落した生活を送っていた。

そしてあんなに大人気なかった兄も年齢を重ねるごとにまともになり、今では優しいお兄さんだ。

俺はプレイヤーの為、病気や生活習慣病などは無関係である。


まだ不完全なステータスで余計なことをして死にたくなかった俺は、食って寝て、遊んで寝ていた。


勉強などいう無駄な事はせず、金にモノを言わせて集めたレシピを元に薬品を作るなどの趣味の事はしていた。



一般には知られていないが、ここ魔法ギルド本部兼総師宅の地下には巨大空間があり、死んだダンジョンを利用してとても非人道的な事が行われている。


人体改造や、薬品の効果を確かめる実験、拷問、素材の回収…etc


たまに、市街の人間や学校の生徒が行方不明になるのは、貴重な種族故の素材回収のためだ。

魔法ギルド直営の孤児院などもあるがそこは、育てきると奴隷か素材か種馬にしてしまう為、一部関係者から人間牧場とな名が付けられていた。


なんで俺がこんなことを知っているかといえば、ギルドの闇…つまり裏の総師になって欲しいとのことだ。

もう今年で15歳とのことで、裏の総師を任す前提として自分の部下を一から集めろと言われた。


本当に面倒くさいが、渋々集めに行くことにした。





●◆


せーのっ!


「うおぉ!人生初の外だぁ!まぶしぃぃ!」



はい、こんにちは

生まれてからずっと引きこもりだったレイルです!


今はボロっちいロープに真っ黒に汚れた杖を持って歩いています。


親が言うには、金も装備もなしで一から全部集めるのってロマンだろ?


って言われました…

はぁ〜面倒クセェ


アホみたいにデカイ魔法ギルドの土地を抜け門をくぐると顔を知っている門番さんに敬礼された。


ちなみに現時点での俺の装備を RPG的に表すとこんな感じ


○〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜○

レイル Lv 462

job 斥候

頭 汚れたフード付きロープ

上半身 汚れたフード付きロープ

下半身 見習い魔法使いのズボン

足 なし


武器 汚れた木の棒

所持金 0G

持ち物 ほつれたバック

○〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜○


レベルが全盛期に戻ったいがい何もない。

古き良き勇者だって薬草くらい貰えるじゃん!ましてや右手にある黒い杖は杖でさえない。


極め付けは裸足


おい!バカにしてんのか?


くそっ!クソが!ーーーそう悪態をついていると肩がぶつかった。


「ってぇ「貴様ぁぁぁぁ!何処見て歩いてんだコラァァァ!」


俺は思いっきり怒鳴りつけながら相手の胸ぐらを掴むとこちらに走ってくる馬車に向かって突き飛ばした。



ーーばしゅっ!



男はありとあらゆる関節があらぬ方向に曲がりながらはねられた。

馬車は何も気にすることなく……それも騎士と見られる男をひき逃げしていった。


「だ、大丈夫かぁ!お、おい」


俺は呼びかけるが意識がない。

どっどうしよう


あ!そうだ!心臓マッサージだ!


男に跨り思いっきり心臓に向けて押した。



ーーーめきょっ!


Lv462のステータスが彼にとどめをさした。

腕は地面まで通り抜け赤い華を咲かせてひとりの命が失われた。


俺は何事もなかったように立ち上がると、手に持った麻袋にそそくさとドロップ品を入れ、唖然とする野次馬どもを押しのけ街へ繰り出していった。



◇◆6





マヨネーズがあるらしい




そう下々の民が言っていたのを聞いた。

マヨネーズ、マヨネーズ、最高の調味料という噂だ。


マヨネーズ……人類を惑わす調味料。

一口食べて仕舞えばその魅力に取り憑かれ語尾にマヨとつけちゃうくらい中毒になる危険な物質。


薬だ。

マヨネーズはクスリ


とびっきり中毒性の高い合法ドラック、それがマヨネーズだ。



ちなみに俺はマヨネーズが、大、大、大っ嫌いだ!


前世では、マヨラーを火炙りにして処刑したいほど憎んでいた。




そのマヨネーズが売られているだと?


プチューシポォー


悍ましい音を立ててマヨネーズチューブを口にくわえている奴がちらほらいる。




道でマヨネーズらしきものを吸引していたデブを路地裏まで誘拐し尋問をすることにした。




「おい、そいつはどこで手に入れた?」


「ん、ん〜んん"」


「ん、じゃわかんねーんだよ!『火の玉』」


固定したファイヤボールで奴の顔面を少し焼いてやる



「〜〜ッッ!!ンンン"」


焼いて見たが答えない。何故だ?


と思ったら口を縄で塞いでいたんだった。


「うっかりしてたよー、ごめんねぇー?」



「あっ、あぁぁぁ…ぁ!ぁ」


「で、どこで手に入れたの?」


ニコリと笑いながら言うとようやく質問に答えてくれた。


「ひっ、金はやるから助けてくれ!」


「金はいらないんだよ。テメェが吸引していたやつはどこで手に入れたのか聞いてるんだよっ!」




「そ、それなら、町一番の商会"カナメ商会"で売っている!」



「そうか」


そういって奴の首を刎ねた。


なんで、話したのに…


と言いたげな顔をした頭はコロリと転がり、そのまま俺は立ち去った。


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