第19話 異世界召喚の美術商〜勇者の基礎スキル 【鑑定・演算・アイテムボックス】で美術商人始めました!
あらすじ
博物館や美術館巡りが趣味の主人公はバス停で並んでいたところで勇者召喚された。
そこは魔王なる存在と人類が争う世界で、まるでゲームのようなシステムが存在していた。
共に召喚された勇者達が強力な火力スキルを持つ中、主人公は勇者の基礎スキルしか持っていなかった。
足手まといになるのではないかと考えた主人公は勇者パーティーから除隊し王都の一角(と言っても路地裏)を借りて美術商を始める。
持前の観察眼と演算スキルで地球の名画や名品をコピーしまくる!
ギャラリー エルサックス Gallery Ersatz ここに開店!!
※当店は現世界に存在する美術品やそれを元に作られた異世界の品々を販売しております。
贋作、盗難品も取り扱っております。
当店では武器の持ち込みを禁止しております。
◇◆1
日差しが眩しい。
休日というのに仕事がある俺は憂鬱な気持ちになりながら家を出た。
今年は稀に見る異常気象とやらで50年に一度の猛暑だという。
もう10月だというのに暑いこと暑いこと。
秋はどこに行ったのか、昨日は冬のように寒かったが今日は真夏日。
50年に一度の異常気象と言うのは去年も聞いたけど。どう言うことなんでしょうか?と言ってやりたい、言っても何も変わらないが。
それにしでも暑い。徒歩5分のところにバス停はある。
遠いなぁ、東京に近いというのに徒歩五分もかかるとは。
最近運動不足で家でごろごろしていた俺には暑い中スーツを着て5分の距離を歩くことすらキツイ。
やっとこさ着いたというのにちょうどよくバスは来ないし爺婆がわんさか並んでいて先が長い。
バスを待ってる間に会社終わってくれないかななどと無駄なことを考えていると後ろから声をかけられた。
「よぉおーーす!元気にしてた?」
元気じゃないし、誰だよ。
あ、俺じゃないな。
目の前から来た美人が待ってたよ!とかいうからドキドキして立ち止まったら後ろからイケメンが小走りしてきて抱きついたのを見たことある。
きっとそういうやつだ。男のハートを粉砕する非道な演出……神の悪戯というべきか、悪魔の所業というべきか。
つまり反応したら負け、反応してしまうと『は?誰だよ。キモ…』と言う顔をされ周りからも白い目で見られるイベントだ。
早く元気な人答えてやれよと、思っていると背中をバシンと叩かれた。
バス…来てないよ?なんだよ、進みたくても進めないんだよ!!
「無視すんなよ!秀じ……く…ん?」
「………誰?」
無視するなと言われてしまったので声がわからなかったがもしかして知り合い?なんて思って振り向くとそこにはジャージを来た少女がいた。
青に側面に白いストライプ、あの花弁の紋章はこの近くの私立高校だな。
誰だろJKの知り合いなんかいないぞ?
JK……?とお知り合いになる機会はないな。
あるとしたら援助交際だか、そんなものはした覚えがない。
俺の嫁は2次元だから現実の女とか無理だし。残念だったな!はっはっはっ。
こんなところでおっさん狩りとはいい度胸だ。痴漢でも援助交際でも好きに脅すがいい、そのかわり俺の23人の嫁を見せるとこになるがな!
はっぁーはっはっはっ…!
はい、現実逃避終わり
「君は誰かな?君、高校生だよね?人のことをいきなり叩くなんてどんな教育を受けているのかな?黙ってないで何か言いなよ?まずは謝りなよ。
黙っていてもわからないよ?
もしかして急に都合よく失語症になったとか言わないよね?
ねぇ、なんで黙っているの?
聞いてるかな?
暴力を振るうなんて信じられないなぁ。
え?なんで俯いてるの?もしかして寝てる?聞こえてるの?
その前に、イヤホン外そうよ?ねぇ?
君、そんなこともわからないの?
悪いことしたらまず御免なさいだろ?
もしかして悪いとか判別つかない?
それに何手をポケットに突っ込んでるのさ?出そうよ。礼儀を知らないの?
先生とかにいわれだことないの?
だから謝るなりしなよ」
「………ご…なさ…い」
「ん?ぇえ?何?
聞こえないんだけど。
もう一回言って小さすぎて聞こえないなぁ?」
「ひっ…ぐ……ごべ…っんなざ…い」
「何泣いてんのさ。君が泣くところじゃないよね?あー痛いなー、骨折したかも。痛いなぁー。
何泣いてんの?痛いんですけど。
君が暴力振またんだよね?こっちは振るわれたんだよ?泣きたいのはこっちなんだけどなー。
うわっ……ばっちいなぁー。何、汚なっ。顔びっちゃびちゃじゃん。うわー、ないわー」
「泣いて…ない…てっ…ないし!」
「今度は逆ギレですかぁー。
わー怖い怖い。嫌だなー。これがキレる若者かぁ。怖いなー。
ちゃんと謝ることもできないなんて本当に高校生?
ふっ…まだ小学生の方がマシじゃないの?
てかさ、君基本が出来てない。
人と話す土俵にも立ててないよ?
人と話す時は目をみる。
そんなことも教わってないとは…全く親の顔を見て見たいなー」
「それぐらいにしろ!いい加減にしないと…!!」
「……ひっぐ…しゅ…しゅうじくん…」
いつのまにか、そいつはいた。
いきなり暴力を振るって来たサイコパス少女のをかばいながら出てきた此方も高校生の男は何やら怒鳴っている。
こう言うのはキレた方が負けなんだ。
「いい加減にしないとなんなんだい?殴るのかい?ほらやりなよ。
怖いねぇー。最近の若者は、いきなり殴る謝らない、複数人で殴る。
謝りたくないから泣く。
女だから許されるとか思ってるわけ?
無理無理無理…。
見苦しいし汚いからさっさとやめてほしいなー」
汚いのは本心だが別に謝ってほしいわけではない。
なんとなくムカついたからいじり倒してやろうと思っただけ。
可愛い子ほどいじめたくなるなんて言葉があるが、可愛くなくてもブスでもムカつくやつはいじめる。
いじめという言い方は悪いな。
やられたら相手の心が折れるまでやる。
倍返しではない、徹底抗戦だ!
「美玲!大丈夫か!」
「ミッちゃんどうした!!」
「達也、龍政!」
うーん、120点。
テンプレ過ぎない?
ゲームなら"取り巻きB、Cが現れた"
とか表示されそう。
そもそも名前を呼ぶなんてことある?
俺なんか友達と話す時なんて『おい』とか『ねえ』とか『あっ』、『やあ』なんて言って名前で呼ばないんだが。
そう言うものなのかな。
時代を感じるなぁ。
これが友情かー。暑いねぇ。
「許さない」
え?何を?
「こいつっ!」
えっえっ?何?
「………っ!!」
睨みつけられてもそんなに怖くないな。
なんか歯をくいしばってるし犬っぽい。
ワンって言って見てほしい。
「おっ、おっ、やるか?ん?」
だれか老人達でもいいから仲裁に入ってくれればいいのにだれもこない。
スマホ見過ぎだとか歩きスマホは危ないとか自転車で歩道走るなと注意してくる老人は多いのに、なんでこないんだろ。
これこそ危ないんだが。
やばいな、こう、囲まれるとつい喧嘩越しになってしまいそうだ。
そういえば、全然バス来ないな。
仕事に遅れちゃうよ。
今日のノルマがあるのに。
金運が上がる仏像5個、一個辺り150万円。ぶはっ(笑 ) たっけえなぁ
誰が買うんだよとか思って始めた販売員だったが以外に売れる売れる。
そこに並んでいるような老人に売りつけて一個辺り手取り5万、ノルマ達成でボーナス10万とか最高かよ。
はあ、最近営業成績優秀だったのに下らないことで遅れるなんてのは勘弁して欲しいな。あんまり突っかかってくると訴えるぞ!
あ、訴えるとこっちの方が訴えられそう。
詐欺みたいなものだし。
と心の中で無駄口を叩いていると周りが騒がしくなった。
ん?何?やっとバス来た?
うわっ、何これ、眩しいっ!!
くっ、なんだ、こんなふざけたことしたの誰だ!
突然、足元の地面が光り出し何かの模様を作り出した。
その模様の中にいる高校生たちも驚いて……ないな。
よくよく見てみると魔法陣のようだ。
ははーん、なるほど。
自分達を主人公だと思ってるパターンね。うーん、現実世界なんだしもうちょっと慌てようよ。
なんて考えながら俺も腕を組んで治まるのを待つ。
「長え、おっそ……今日のバス並みに遅い。それはいい過ぎか」
が次の瞬間視界は光に包まれて、俺たちはどこまでも光の中を落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます