第19話 手紙1(つむぎ→玲)

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Dear 玲くん


 突然ですが、お手紙です!

 手紙なんて書くのは、小学生の頃に流行った交換日記以来となるため、いざ筆を執ってみたもののなかなか言葉が出てきません。国語の先生らしく、時候の挨拶から始めようかと思いましたが、どうにも温かみに欠ける内容になってしまったため、思ったことをそのまま書くことにします。


 まずは改めてお礼を言わせてください。

 先週はありがとうございました。

 大変お世話になりました。

 面と向かって何度も伝えたかと思いますが、やはりあたしの中では返しきれない恩を感じていて、もう顔を見たらありがとうと言いたい気分です。終いには玲くんに鬱陶しいと言われてしまいましたが、それでもめげずに伝えたいほど、あたしは感謝しています。

 ただ、やはり真剣にありがとうと伝えるのは今更気恥ずかしいものもありますので、こうして手紙という方法を取らせていただきました。この手紙のありがとうは、口で言うありがとうの百倍の重みがあると心得て受け取ってください。


 ……いいですか?

 ちゃんと受け取りましたか?

 もう一度確認しますよ?

 ちゃんと受け取りましたか?


 はい。いい返事が聞けたところで、本題に移らせていただきます。

 感謝が本題じゃないのかって?

 そんなわけないじゃないですか。考えが甘いと言わざるを得ません。


 さて、今年も12月25日がやってきます。あたしが家に引きこもっている間に、もう一週間後となってしまいました。時の移ろいは儚いものですね。

 何の日かわかりますよね?

 そうです。クリスマスです!

 楽しみですね。ワクワクしますね。

 とはいえ、25日は水曜日。平日です。イブの24日も火曜日の平日です。

 あたしは期末テストの採点と成績表のチェックでてんてこ舞い真っ最中ですので、当然遊んでいる余裕はありません。社会人の悲しいさがです。

 けれど待てよと、あたしは思うのです。

 今週の土曜日、新しく結成された『土曜日なんでもする同盟』の活動内容が未定ではないのか、と。

 盟主である玲くんは、その活動内容を恥ずかしいくらい大きな声で宣言していました。にもかかわらず、まったく力を入れている素振りがありません。名前だけの組織なんて、むなしいだけだとは思いませんか?

 そこで、不肖ワタクシ、立石つむぎが提案します!


 玲くん。

 今週の土曜日、あたしと、イルミネーションを見に行きませんか?


 お返事待ってます。


               立石つむぎ


P.S.

 手紙でタメ語を書くのがとても気持ち悪かったので、敬語にしました。

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