第13話 幼馴染と美少女は、素直じゃないけど可愛いです!

 確かに僕は、氷雨と一緒に寝たり、お風呂に入ったりしたことがある。


 だがそれは、小学校低学年のころの話だ。


 流石に今はそんな事していない! したいけど。


「ふん! そのくらい、私だってしたことあるわ!」

「何年前の話かな?」


 氷雨の問いに、優衣が指を三本立てて答える。


「三年前!? ま、負けた…………」

「三年前じゃないわ! 三日前よ!」


「完敗だ…………」


 へなへなと座り込む氷雨。


「大丈夫! 僕は優衣よりも、君の方が好きだよ」と氷雨に言いたいが、僕にはそんな勇気何て無いし、後から優衣に殴られそうだから、言いたくても言えない。


「さあ! 身の程を思い知ったら、大人しく帰るのね!」

「うう…………」


 氷雨が目に涙を浮かべながら帰ろうとする。


「待って! 料理の途中で帰らないで!」

「でも…………」

「お願い!」

「玲。負け犬なんかに頭を下げる必要なんて、アメーバの涙ほどにもないわ」


 ん? アメーバって泣くのかな?


 後で調べよう。


「でも優衣、今氷雨に帰られたら、夜ご飯がルーが無くて火が全然通ってないカレーライスになっちゃうよ。それでもいいの?」

「むぅっ……………………それは不味そうね。氷雨――――だったかしら? 今日は家に居てもいいわよ」


「あの…………ここは僕の家なんですけど…………」


「でも、今日だけだからね!」


 僕の言葉は、完全に優衣に届いていない様だ。






 カレーライスが出来た。


「「「いただきます!」」」


 がカレーライスを口に運ぶ。


「おいしい! やっぱり氷雨は料理が上手だね!」

「!? え、あ、うん。ありがとう」


 ちょっとほっぺたを赤く染めて、はにかむ氷雨がかわいい。


「あれ? 優衣は食べないの?」


 何故か優衣は、つまらなさそうにカレーライスのルーをかき混ぜるばかりで、一向に食べようとしない。


「わ、私は……その…………そんな事よりも、玲! 私というフィアンセの前なのに、他の女の子を家に連れ込んだ挙句、その子を嬉しそうに眺めているなんて…………どういうつもりなの!? 婚約直後に浮気とか、ありえいわ!」


「私はそんなつもりじゃ…………」

「氷雨は黙ってて、私は玲と話しているのよ」

「僕も浮気をするつもりなんか…………」


 そこまで言って、僕は気付いた。


 浮気とは、特定のパートナーがいるのに、他の人を好きになる事じゃなかったっけ?


 僕にパートナーはいないから、誰を好きになってもいいはずだ!


「そもそも、僕と君は…………」

「ねえ、あんたは、私と氷雨、どっちが好きなの?」


「氷雨。」


 話を遮られた腹いせに、キッパリと即答してやった。

 それが、どんな意味を持つかも考えずに。


「「!?…………………………」」

 心底驚いたような表情で、僕異を見つめる美少女×2。


「とりあえず、カレーライス、食べよっか」

 僕の言葉に促されて、無言でカレーを食べ始める僕たち。


「「「…………………………」」」


 静寂という名の魔王が支配する、サイレント・メシ。(なんだそりゃ)


 ああ、空気が重くて食べにくい!


「――――っ!?」


 そんな空気を打ち破ったのは、優衣の声にならない悲鳴だった。

 彼女は大慌てでコップの水を口に流し込み、目に浮かぶ涙をぬぐった。


「カレー、辛かったの?」

「もしかして優衣、辛いの苦手?」

「そ、そそそんな事無いわよ!」


 ひぃひぃと肩で息をしながら、目に大粒の涙を浮かべる優衣の姿は、欠片ほどの説得力もない。


「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。温泉卵を作っておいたから」


 氷雨が台所から温泉卵を持ってきて、優衣のカレーにのせてあげた。


「これで、食べれるはずだよ」

「………………ありがと…………」


 恐る恐る、カレーライスを口に運ぶ優衣。

 小さく口を開け、まずは一口。


 どうやら、食べれる辛さだったらしく、嬉しそうにパクパクと食べ始める。


 優衣も、外見以外で可愛い部分があったんだな。






 調理は氷雨にやってもらったから、せめて後片付けくらいは自分でしようと思い、僕は食器を片付けた。


「で、今日は何のようなの?」


 僕は僕の部屋でマンガを読んでいた氷雨に話しかけた。


「…………単刀直入に言うよ」


 氷雨はマンガを閉じて、まじめな顔になった。


「私の家に来てほしいの」

「いつ行けばいいの?」

「そうじゃなくて…………ずっと、私の家にいて欲しいの」


 ずっと家に居いて欲しいって、ずっと一緒にいた言って事!?


 という事は、プロポーズ!?

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