第94話

「アナ…しっかりして…」


「ティナ…よく…聞いて、この傷ではもう助かりません。貴女がこの国を支えるのです」


「何を言っているの!?この国の女王はアナスタシア以外ありえない!!死なないでよ!!」


「がはっ…いいからよく聞きなさい!この国を腐らせている身近な者を始末しなさい。逆らうものがいるなら処刑しなさい!!貴女の邪魔をするものならクロードでも殺しなさい!!」


「い…や…私には…できないよ」



「いいえ…貴女にできなくとも…アナスタシアなら…できるでしょう?」




「それってどいう…」



それ以上はアナスタシアは返事をしなかった




「独りにしないって約束したじゃない!!」


ズキッ


頭を押さえつける感覚に思わずよろめく

「何これ…気持ち悪い」


後ろの方から誰かがいたような感覚に陥り振り向いた


「そこに誰かいるのですか!?」


その声に驚いたのか気配の正体はすぐさま立ち去った

これが私の鬼として目覚めた心鬼だった





「姫様ご無事ですか!?」


「クロード…アナが…」

雨に打たれているアナスタシアを抱きしめ私は泣きじゃくった

「…そのままではアナ様がかわいそうです。とりあえずオスカー邸へ運びましょう」




彼の指示のもと丁寧に彼女の遺体を運んだ



そして今までのことを報告すると


「それは…心鬼と言うものでしょう。ひどく心に傷を負った者が会得する術で…姫様のそれはもしかして”悪意”を持ったものに反応するのでは?」





「悪意?どうしてわかるのですか?」


「その心鬼は私には感じられないのでしょう?」


「えぇ。感じられないわ。さっきの感覚を持ったものはこの館にいません」


「ここは使用人しか出入りしておりません。主に悪意を向けるということは反逆を意味しています。王宮では様々なところの使用人が居ましたのでその悪意は感じられるかと思います」



「確かに…」


「そして、今回の事件は、アナスタシア様もしくはティナ様に向けられたものと推測できます」



「…私は一体どうすればいい?」


「その力をもってすれば悪意の見極めで犯人のあぶり出しが可能だと思います。」


「…わかった。アナスタシアの死についてはまだ発表しないで。私に考えがある」


「…かしこまりました」



そのときの私には妙に犯人を見つける自信があった


狙いがアナスタシアではない可能性があった

だからこそ私に矛先を向けた人物は私の兄弟たちしか思い浮かばなかった



「私の兄弟を連れてきて全員」



「くそっ!離せよ!!俺らが何したってんだ!」



「ねぇお兄様?あの城にヴァンパイアを放ったのは貴方達ですわよね」


「違う!俺じゃない!!」


「はぁ?お前何言ってんだ?」



一瞬で悪意が濁るお兄様3人と全く濁らない弟がいた

この判別ではどっちがどっちかわからないが

濁った方の心の声がなんとなく聞こえた気がした

嘘をつけば濁るのだとこの時確信した


「…まさか…お兄様だったとは…ガッカリです」






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