第92話
…ソマリってもしかして
「なぁアナ…。もしかしなくてもレオンってお前の事好きだったんじゃないのか?」
「…こうして外側から見ていると否定できませんね」
アナは握ったままの手をそのまま自分の顔に押し当てている
「お前が本当に鈍い奴で助かったよと今ではそう思うよ」
ティナとしてソマリの気持ちに気づいていたとしたら間違いなくこの婚約はなかっただろう
この時のティナにはそれに気づかないほどの鈍感さと、気づく暇もない後の事件によってソマリの気持ちを無碍にしてしまったという後悔が残ってしまう
「アナ?」
それの事件の日私はその日アナスタシアを探していた
クロードはお使いで外に出ているし、護衛もなんだか少ない気がする
「おかしいなぁ。アナ何処に行ったんだろう?」
あの日以降メイドたちは私の顔を見ると何も言わずに立ち去ってしまう
何か言えばアナからのお咎めがあるからだろう
「ここにいたのですねティナ」
「あ、アナっ!探しましたわ」
「ふふふっちょっと呼ばれていたのだけど寂しかったかしら」
「また人間の人たちですか?」
「えぇ、影の巫女の件についてお話してきましたわ」
「そういえば…私が認められたんですよね…アナも認められるんですか?」
「いえ、継承権は全て貴女に渡ってしまいました…それで少し面倒なことが…」
継承権を認めるのは一部の王族のみ。そして資格があっても認められないこともあるという
儀式を行われなければ10年以内に龍が目覚めるというアナの予言だった
「向こうの王は影の巫女を要求してきた。だがティナを渡すわけには…ゲホッゲホッ」
「アナっ!?大丈夫!?」
「平気だ。いつものことだ」
「もしかして…アナが具合悪いのって儀式が関係してるんじゃ」
「関係ない…」
「ねぇ、無理はダメだよ。私にできることなら何でもするから」
「その儀式で死ぬかもしれないのよ!?ただでさえティナは今まで辛い思いしてきたというのに」
「私は、アナがつらい思いをするのは嫌なの…。お願いだから私が貴女を守らせて…」
「婚約を持ち掛けられたの。影の巫女ティナ=テンペスタを光の巫女候補の二人のうちのどちらかの婚約者にすること…貴女に光の国との政略結婚なんてさせられないじゃない!」
「…でもっ!」
ガシャーンっと窓ガラスが割れる音がして思わず悲鳴が起きた
「な、何!?何の音!?」
アナスタシアが窓際から外の様子を見る
赤い目に血に飢えた鬼たちがこちらを見ていた
「ヴァンパイア!?何で…!?今は昼なんじゃ!?」
「…それよりも、早く逃げるわよ!」
アナスタシアは私の手を引いて上の階へ駆け上った
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