第58話

「死ぬってどういうことだよ!」


「本当ならこんなことは婚約式が終わってから話す予定でした。毒を盛られるまでは」


「毒ってまさかあの朝食に!?」



「えぇ、私は他人の悪意には敏感に反応しますが悪意で作られた物には気づけない」





「姫様がいくら努力しても心が宿っていないのに心鬼を使うのは無理です。私が気を付けていても気づかない場合もある」



「それで、龍の目覚めとアナが死ぬことは関係しているのか?」


「えぇ、元々生贄を出していたといっていたでしょう。あれを止めてから体に紋章が浮かび上がった」


「アナスタシアにも同じものがあったの、前に見たときは死ぬ前だったから気づかなかったけれど、彼女が死んでから私も同じものが浮かび上がったから間違いないと思うわ」



「どういうこと?」

「余命宣告とでもいうのでしょうかね」



「これまで降りかかっている私への災厄は紋章によるものと断定はできません。ただこれと同じ紋様をここの書物でも呪いの類だと確認できました。おそらく間違いなく後1年持つかどうかでしょうね」



「それはお前が特異体質だからなのか?」



「姫様が影の子孫であり、龍の目覚めを妨げる目障りな存在。…と思っているのでしょう」


「さて、私がここへ来る前に渡した剣はまだ持っていますね?」



「あ、あぁ。大事な物みたいだからな」


「ではそれは儀式のときに使いますので、なくさないでくださいね」



「これが儀式用の剣だったとはな。てっきり本当に殺されたいのかと」



「それを望むなら構いませんよ」


「冗談止めろよ」



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