別れと脱出

まるでツバメが空を滑空するように一直線に向かってくる良雲の姿があった。


「りょううんさん!」


少しだけ良雲の口元が微笑んだ。

鶴子は柔らかな羽に包まれるように良雲の腕の中へいた。


「お嬢、遠くまで来ましたね」優しい顔で叱られた。


「ご、ごめんなさい」


良雲は微笑んだように見えた。

「帰りますよ」

そして一瞬にして良雲は踵を返して跳躍しようとした。


「待って!」良雲の作務衣の襟にしがみついた。


鶴子は跳躍の体制に入る良雲の腕の中から亜美を見上げた。

最後に良雲の姿を認めた亜美は頬を赤らめ泣いていた。


「お嬢時間がない」


再び飛び立とうとする良雲


「だめーーーーっっ」叫ぶと同時に亜美を指さした。


鶴子を抱えたまま指さす方向をみて良雲は気づく。

「時間がない」とチラりと過ぎる・・・。

一度、跳躍を緩め止まった。

良雲は笑顔で亜美に手を振った。


「良雲さん、さようなら。ありがとう。鶴ちゃん元気でね」

亜美は涙を流しながら手を振り返し、急速に天へ昇り始めた。


鶴子にも満足そうに手をふる亜美の姿が見えた。

そして次に見た良雲の顔は戦士の顔になっていた。


「お嬢、時間がない。あの子が消えたら、ここも消える」


言うと同時に猛烈な跳躍姿勢から突進を始めた。

空を切り裂く様に疾風を起こし帰線をたどる。

鶴子の目にも、どんどん亜美と祖父の姿が小さくなると、空に穴が開いた。

「あっ」

良雲も一度振り返えり空の穴を認めた。

「ちぃぃ」舌打ちした。

「お嬢、幽界の扉が開いた。ちゃんと捉まってろよ」


開いた幽界の扉へ亜美が吸い込まれていく。

同時に亜美が作り出したが始まった。













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