小さな森の住人
出会い
鶴子は6階と5階の部屋を慎重に確認して回った。家具付の契約でマンションを購入した部屋には、既にお洒落な家具が置かれ窓にはカーテンが敷かれていた。
「お洒落~」
鶴子はため息をついて、この部屋で過ごす入居者に思いをはせた。大きなダイニングテーブルには椅子が6脚、カウンターには3脚のイスが設置されていた。
子供は3人かな、4人かな? 2世帯同居なら、子供は2人かな?
そんな事を考えながらジュータンの品番やカーテンの色なども確認して回る。
各階の部屋数は6個。家具が付いていない部屋の点検はスピーディに進んだ。カーテンの付いていな部屋に入ると外の景色が飛び込んで来る。
住宅街の遥か山の上に神社が見える。
この方角だと、何神社かな?
そんな事を考えながら作業を続けた。
森谷市八犬町の八犬駅から車で5分の位置にある、このマンションは市街地の中にある。ここ10年間で市街地再開発が進みつつあるが高い所から景色をみると、表通りに面した部分だけを新しいサイディングで覆っていて屋根は昔の瓦が乗ったままの建物や、通りに面していない建物では庭木の手入れがされておらず多分、人が住んでいないであろう家々が目に付いた。
全室を確認し1階のエントランスに戻ると渕上が待っていた。
「すみません。お待たせしました。」
「初めてにしては早かったよ。特に変わった物は見えませんでしたか?」
「えっと、、、はい。」
鶴子は入り口の槇の木を思い出した。
「多分。なにもなかったと思います。」
「じゃあ、見える方は?」
渕上は面白そうに聞いた。
「はい。507号室のカーテンが違っていました。ブラウンのカーテンがキャメルになっていました。品番が1番違いだったので、オーダーミスかと思います。」
「そう、507号室ね。戻ったらコーディネイターさんに知らせましょう」
「はい」
「さてと!2階のお部屋を見て行きましょうか」
鶴子の顔をチラリと見た後、ついでに鶴子の後ろをのぞき込む仕草をしたが鶴子は気づかなかった。
2階のフロアに到着した
エレベーターのドアが開くと薄暗い気がした。
天井のダウンライトを思わず確認したが、ちゃんと点灯している。
「201号室から確認しましょう」
渕上が歩き出すが、すぐに足を止めた。見るとスーツを着た女性が201号室のドアを見つめている。
「どこの業者さんですかね?」
「ツルちゃん、今度はどんな風に見えてるの?」
ここで質問が来るってことは・・・くぅー そうなの!?
鶴子は緊張した。
「スーツを着てます。お仕事中の女性です。」
どんだけ見たくないのよ・・・。
渕上は驚きと共に、呆れた。
「ツルちゃん、顔を見ないようにして首から下を見て下さい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます