第68回『夕』:夕鶴<タブレットマギウス>

「鶴だな」

 長い首が情けなさそうにこちらを向いて。

「何故」

 魔術罠を解いた途端に間に逃げ去った。


 *


 呼び鈴にうっかり開けて後悔した。

「家政夫にどうだい?」

 男は上腕二頭筋にものを言わせて侵入してきた。


 *


「仕事中は見ないように」

 オレと弟は家を出されて。

「まて!」

 すぐに戻る。

「みーたーなぁ?」

 男の手にはタブレット。電書魔術の淡い光が鶴の形を。


 *


「強度不足で感度高すぎ」

 男は言う。猪に足りず、非力なロボットが捕まった。鶴は趣味。

「そこで、害獣向け魔術講座のお誘いだ」

 正体を知られた鶴は、

「綺麗な革だろう? 魔術罠の成果だ」

 じゃ。上腕二頭筋を光らせて颯爽と去って行く。


 *


「夕鶴?」

「この革って」

 ビラと革が手元に残る。

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