第64回『書く』:冷蔵庫の手紙〈オリジナル〉
冷蔵庫の手紙はいつも『おはよう』の文字から始まる。
『おはよう。ご飯はお弁当を温めてね。行ってらっしゃい』
今日は文字が散らかっている。○は○になってない。『ね』なんてミミズがのたくっている。眠かったのかな。想像する。
『ママ、いつもお疲れ様。行ってきます』
手紙の下に追加して、コンビニ弁当をレンジに突っ込む。
今日の『おはよう』は○が大きい。乱暴だけど一文字一文字はっきり大きい。
『ママ、良いことあった? 行ってきます』
今日は綺麗で丁寧な字だ。
『お話があります』
テストの点が頭に浮かんだ。避けて捨てたニンジンが浮かんだ。僕は返事も書けずに登校する。
微笑んだママが思い浮かんだ。――怒りを突き抜けた氷の笑みの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます