悪党


砂漠を歩いていた

夜空に浮かぶ月が綺麗だった

それくらいかな

思ったことは

あとは何も無かった

運命の上で揺られていた

きっとこれから泣き喚くのだろう

まともに考えればわかる

どうしようもないことだと

胃袋を加工して作られた水筒から水を飲み干した

「ぐびぐび」

おれはこの水を奪った

人を殺して手に入れた

もちろんおれに殺された奴はそこで終わりだ

「なあ、水くれよ」

おれはたった今、殺してうつ伏せのそいつに話し掛けた

何も言わなかった

死体から水を奪うことは罪ではない

何故ならもうそいつは水を必要とはしないから

「ついでにその首飾りも貰っていいかな?」

またも了承

さっきまであんなに抵抗していたのに

今はその全てが嘘だったかのよう物分かりの良い奴へとなってしまっていた


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