花屋


花屋に

死体が置いてあり

その死体は

何故か笑っているようにも見え

でも

実際にはそうではないのかもしれなかった

「例えば………」

そのようにわたしは切り出す

仮定をする

「例えばあの死体は実際には何も感じてはおらず姿形だけが人間に酷似している精密な人形のようなものではないか?」

頭上の神様は今日もずっと黙っている

だからいてもいなくても一緒だ

花屋の死体は

わたしには笑っているように見えた

店員が間違えてそれに水を注いだ

「あ、間違えちゃった」

もう一回やり直しをしなくてはならない

だがまた死体の方へと水を注いでしまったようだ

(わたし何やってんだろ)

そのようなことを思いながら

今度こそやり直して花に水をやる

うまくいった

よしっ

わたしたちは生きるということの正解を選ばないと死ぬ


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