苺狩り


苺狩りに出掛けた少年少女が

まだ帰って来なかった

それぞれの母親たちは

それぞれの子達を心配した

「あの子、無事なのかしら………」

相手は苺だからと甘くみていた

子供達だけで行かせたのが間違いだったのだ

テレビを点けた

画面の中ではちょうど行方不明の少年少女についてのニュースが流れていた

「………今回の失踪事件、どう思われますか?」

問われた苺狩りの専門家はゆっくりと口を開いた

「最近の苺はまさに『苺狩り』という呼び名にふさわしい凶暴な側面を持ち合わせています」

確かに一理ある

母親はそう思った

スーパーに置かれている苺とは違って野生の苺なのだ

聞いた話しでは牙を持つものさえ見受けられるらしいのだ

以前はそんな苺を見かけることはなかった

………

あの古き良き時代は一体、何処へ行ってしまったのだろう?

深夜 息子はまだ帰って来ない

「ただいまー」

無能な旦那の帰宅

わたしは人生が大幅に傾くのを感じた


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