法定点検の必要性


田中がいた

………また田中か

いい加減うんざりしてきた

田中に投石して血だらけにしてやろうかと思った

だがやめた

何故ならこの田中はおれが初めて会う田中だったからだ

おれは田中に翼を与えることにした

「おらよ」

田中はそれには見向きもせず翼を地面に落下させた

田中は空を見上げこんなことを言い出した

「なんで雨は降るんだろう」

馬鹿かこいつは

おれは言った

「空がさ、泣いているんだよ、きっと」

どうせこいつは科学的な答えなど求めていやしないのだ

田中は即、質問してきた

「どうして泣いているの?」

んなのしらねーよ

「きっと悲しいことがあったんだろ、恋人が死んじゃったとか」

適当に言っておいた

田中が言った

「空にも恋人がいるんだね」

「ああいるんだな」

田中は涙を流し言った

「でも死んじゃったんだ」

「ああバイク事故でな」

田中は(おやっ?)という表情をした

「ちょっと待ってよ! 空の恋人がバイク事故って………一体どうやってバイクに乗ったの?」

上半身を乗り出し激しい抗議を示した

「そりゃあ両手でハンドルを握って乗ったんでしょ」

「なるほど」

田中は納得した

おれは思った

こいつの頭の中身を一度、点検してみたいと


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