第87話 高裁は無惨にも娘の思いを踏みにじった

 平成二十五年九月二十七日、高裁から抗告棄却の通知が届いた。最後に裁判官三名の名前が記してあるが、こんなものに何の意味もない。「この審判の結果によって子供の将来に何が起こっても、私たち一人一人には責任はありません」という但し書きでしかない。

 裁判所の理不尽さを伝えるには、次の一文で十分だと思う。

「現在三歳の未成年者は、抗告人及び相手方によるそれぞれの監護養育状況の優劣やそのいずれが自らの福祉に適うかなどを判断する能力に欠けるというべきである。」

 上記は、娘の思いを伝えたDVDに対する返事である。

「子供本人の思いなどどうでもいいよ。

 どっちに懐いているかなんて、判断材料にもならねぇよ。

 先輩裁判官が出した答えが正解なんだよ。

 わざわざ再調査なんてしねぇよ。

 面倒なんだよ! 手間かけさせんなよ。

 子の福祉なんてどうだっていいの。

 虐待が起きたら、そこで考えればいいんだし。

 そんな先のことは、知ったこっちゃねえよ!」

 そんな心の声さえ聞こえてきそうだ。

 気の弱い当方弁護士は、調査官が書いた調査報告書の嘘を指摘するのを恐れて、何も言わず仕舞いだったが、抗告で調査報告書に嘘があったことを申し立てたところで、意味はなかっただろう。

 裁判官や調査官が、裁判所で嘘をついても、問題になることはない。

 ここは、そういう世界だ。

 この人たちにとって、国民の家庭などどうなっても構わないだろう。若い調査官は、私に面と向かって「カウンセリングなんて効果ないですよ」と言い放ち、他人の家庭の努力を嘲った。常識も倫理も道徳も欠如したのだろう。

 この人たちに、正義や誠意や真実を求めても、無駄だ。

一生懸命がんばって司法試験を通っただけで、社会経験もなく、常識もない。

 我が身の地位が大事で、粛々と判例に従うだけで、精神科医でもなく、臨床心理学や発達心理学の専門家でもない。子供の健全な発達のために必要なことも分かるはずがない。元妻の精神的な異常ささえ見抜く能力がないのだから。

 こういう人間が、家庭の問題に首を突っ込み、公権力をもって親子を引き裂き、執行官に命じて泣き叫ぶ子を強奪していく。そもそも、片方の親に懐いている子供を引き離して強制的に奪取していくという強制執行の発想そのものが子の福祉に反している。

 裁判所の監護者の決定が真に正しいなら、子供は喜んで自ら親を選ぶだろう。裁判所の決定に対して、子供本人の意思が背いているから強制執行というのは、もはや発想が、現代に息づく奴隷制度だ。

 この恐怖の世界こそ、日本の司法、家庭裁判所の実態だ。

 子供にとって大事なのは、判断する能力ではなく、思いを伝えている言葉そのものだろう!

「おかあさんのところは行かない! おとうさんとずっと一緒にいるの!」

 この子の心の中で、親の優劣を確かに判断したからこそ、そう言葉で伝えたんじゃないか!

 子の福祉を真剣に考えるなら、実際に調査することもなく娘の思いを踏みにじった裁判官たちこそ、「子の福祉に適うかなどを判断する能力に欠けるというべきである。」

 この国の司法に期待してはダメだ。公務員として、杓子定規に通り一遍の仕事をしているだけでしかない。

 このままでは、この国の子供たちの将来に、絶望しかない。

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