第72話 強制執行という名の合法的未成年者略取

 嘘の申立書を丸飲みし、母親の育児の実態や精神状態を一切無視して、家庭裁判所が子を母親に渡せと決めたあと、こちらが審判結果を不服として徹底抗戦すると、待っているのは強制執行です。

 その場にいなければ、執行不能で一旦終了ですが、依頼があれば何度でも行われます。ご注意ください。

 コヤブ弁護士が出した報告書で知ったのですが、自宅にいなくて一度目失敗。実家に子供を連れて帰っているのは分かっていたはずですが、それでも一旦は住所地を訪れてから、改めて実家への強制執行という段取りになるようです。


 ここで問題になるのが、当時、日本がハーグ条約批准のための準備をしていたこと。「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」です。

 郷に入っては郷に従わなきゃいけないのに、どこの国でも、その国の法律を無視して、自分勝手に「実家に帰らせていただきます」(実際は、宣言も相談もありません)という日本ルールを勝手に適用して、子を連れて(非合法的に幼児を奪取して)、日本へ連れ帰っていたのでしょうが、この条約に批准することで、そんな我がまま勝手な子の連れ去り、国際ルールを無視した子の奪取が認められなくなりました。二〇一四年四月一日のことです。

 この国の司法が用意した姑息な手段として、海外への連れ戻し対策で、強制執行の強制力を弱め、ご都合主義なルール変更によって、ハーフの同胞に対する海外への連れ戻しを難しくしたのですが、当然、同一基準で、国内の執行力も弱めざるを得なかったのです。

 当然ですよね。日本の司法としては、「海外への同胞の子を連れ戻しは認めません! でも、国内では幼児を動産として合法的に権力をもって強制的に奪取します!」という理屈は、国際法上、到底認められるものではありません。

 先進国で唯一の離婚後単独親権という無理を通している国なので、こういう矛盾が起きてきます。島国根性丸出しの偏狭な司法にとって、痛し痒しですね。


 このハーグ条約の準備期間によって、当面のあいだ、娘は守られることになりました。それ以前は、子供が泣き叫ぼうが、所構わず無理やり連れ去ったようです。

 恐い国ですよね。

 誰も知らないだけで、幼児に対する強権的奪取という恐ろしい行為を平然と行っていたのです。しかも、育児の実態も幼児本人の意思も一切無視した家事審判に基づく強制執行って、国家による未成年者略取でしかないと思いますが、皆さんはどう思われますか。

 子供本人の意思は一切考慮されません。「お父さん、助けてー!」と泣き叫ぼうが、無理やり連れ去るのです。

 現状、子がどちらの親に世話され、どちらに懐いているかを適切に判断する能力を裁判官や調査官が持っているなら、今、現在、十分に信頼と愛着を築いている子と親を引き裂いて、子供本人の意思を徹底的に無視して、司法が無理やり奪取していくことがどれほど問題で、どれほど子の将来に対してトラウマを残すものであることは容易に推察できるものであるはずだろうに。


 このハーグ条約によって、日本が準備期間にあった当時、最高裁が強制執行のルールを決めました。


一.自宅で行う

 保育所や幼稚園、路上などでは行わない。もちろん、実家も自宅ではありません。逆に、これまではこれが通常だったのです。恐くないですか。家庭裁判所が送り込む執行官が、路上で泣き叫ぶ幼児を連れ去っていく姿を想像してみてください。ほぼ、誘拐です。公的な誘拐が、育児の実態を無視して、子の意思を踏みにじって行われるのです。


二.債務者がいる前で行う

 引き渡せと言われた親がいないと、執行不能です。

 私がいないあいだに連れ去られたらどうしようと心の底から心配しましたが、そういった事態は起こらないので、少し安心です。

 ですが、ちょっと想像してみてください。

「おとうさん、だいだいだいすき」と言っている娘が、家庭裁判所が送り込んだ執行官によって、父親の目の前から無理やりに連れ去られる姿を。

「おとうさん、たすけてー!」と泣き叫びながら、引き離されていくのです。


三.本人が泣き叫んだり、抵抗したら執行停止

 もちろんハーグ条約により連れ戻しの強制力を低下させるものですが、これ以前にネット検索したら、泣き叫びながら連れ去られていく様子が語られていました。

「人間を物だと思っているんですか!」と執行官を怒りつけたら、「そんなことはありません」とあわてて否定していましたが、裁判官の判断からは「子は母親の腹から出てきたから、母親の所有物」という、幼児をただの物、動産として扱う短絡的な認識がうかがえます。そう思っているなら、正直にそう言えばいいのに。大問題ですが、下手な嘘をつくよりマシです。

 引き渡せと判断するのも裁判官、父親に抱きついて泣き叫ぶ子を無理やり引き剥がすのも裁判官だったら、育児の実態や子の意思を一切無視した判断ができるのだろうか。そんなことが平然とできるなら、人としての感情を失い、人間性が壊れてしまっているとしか思えない。


 以上が、娘と私が実地で体験した強制執行のルールです。この基準に守られて、二回目の強制執行も不能に終わりました。

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